日本大百科全書(ニッポニカ)「マツカレハ」の解説
マツカレハ
まつかれは / 松枯葉蛾
[学] Dendrolimus spectabilis
昆虫綱鱗翅(りんし)目カレハガ科に属するガ。はねの開張40~80ミリメートル。一般に雌は大形であるが、雄は50~60ミリメートルの個体が多い。触角は雌雄とも櫛歯(くしば)状であるが、雌の枝は短い。前翅の色彩は変異に富むが、雄では、鋸歯(きょし)状の白色外横線の外側が帯状に赤褐色のことが多く、雌では白色の横線のほかは薄黒いことが多い。日本全土のほか、隣接大陸にも分布する。成虫は夏に羽化し、よく灯火に飛来する。卵からかえった幼虫はマツケムシともよばれ、マツやカラマツの針葉を食べ、若齢で樹幹の割れ目などに潜んで越冬し、翌春ふたたび小枝に上って葉を食べ、初夏に繭をつくって蛹化(ようか)する。秋に樹幹に筵(むしろ)のバンドをしておくと、幼虫が越冬のためにその中に入るので、早春にこれを焼却することによって幼虫を効果的に駆除できる。幼虫の毒刺毛が皮膚に刺さると炎症をおこすが、この刺毛は繭にも付着しているので注意が必要である。温暖地の伊豆諸島、対馬(つしま)および奄美(あまみ)大島から沖縄本島にかけ、成虫が年2回発生する。この地域の成虫は小形で、前翅の斑紋(はんもん)が弱く別種のようにみえるが、本質的には本土のものと変わらない。
[井上 寛]