共同通信ニュース用語解説 「マツタケ」の解説
マツタケ
秋の高級食材として、炊き込みご飯や土瓶蒸しなどで使われる。マツタケは8月下旬から11月ごろまで採れ、9~10月が最盛期。主に針葉樹のアカマツの木の根元に生える。人工栽培の研究が進められているが技術的に難しく確立されていない。マツタケの輸入先は中国がほとんどだが、米国やカナダ、韓国、トルコなどからも輸入されている。
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秋の高級食材として、炊き込みご飯や土瓶蒸しなどで使われる。マツタケは8月下旬から11月ごろまで採れ、9~10月が最盛期。主に針葉樹のアカマツの木の根元に生える。人工栽培の研究が進められているが技術的に難しく確立されていない。マツタケの輸入先は中国がほとんどだが、米国やカナダ、韓国、トルコなどからも輸入されている。
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担子菌類、マツタケ目キシメジ科の食用キノコ。主としてアカマツ林に輪状または列状に並んで生える。傘は径10~20センチメートル、ときに30センチメートルにも達する。表面は淡灰褐色で繊維状の鱗片(りんぺん)で覆われるが、しだいに茶褐色に近づく。傘が開く前は、傘の縁と茎の上部との間は綿毛状の膜で連なる。ひだは白く、茎に湾生する。茎は太く長く、肉は充実し、縦に裂ける。つばは初め明瞭(めいりょう)だが、しだいにしおれて縮み、はっきりしなくなる。胞子は6~7マイクロメートル×4.5~6.5マイクロメートルの広楕円(こうだえん)形。全体に日本人に好まれる独特の芳香がある。マツタケは、アカマツのほか、コメツガ、アカエゾマツ、クロマツ、ハイマツの林にも生える。マツタケの菌糸は、これらの木の細根にまとい付いて、外生菌根をつくって生活する。マツタケは地温が19℃になるとキノコ形成の準備を始め、2週間ほどたつと地表に頭を出す。発生はほとんど秋であるが、梅雨期にも発生することがある(ツユマツタケとかサマツなどとよばれる)。マツタケは、従来は北海道から九州にまで分布する日本特産種と考えられていたが、現在では朝鮮半島、中国(東北部、山東省、雲南省など)、台湾にも分布することがわかっている。
[今関六也]
日本におけるマツタケの生産は、長野県、広島県、岡山県、岩手県、京都府などで多く、ついで兵庫県、岐阜県、山口県などとなる。そのほかの県にも発生するが量は少ない。本州以南では主としてアカマツ林にマツタケは生えるが、アカマツそのものは、本州以南ではきわめて普通である。それにもかかわらず、マツタケの産地がこのように偏るのは、マツタケと共生するマツ類の体質によっている。こうしたマツ類の体質を決めるのは、次のような条件である。その第一は土質の違い、すなわち土壌の母体である母岩の違いである。マツタケは一般に、花崗(かこう)岩、石英斑(はん)岩、角(かく)岩、砂岩、珪(けい)岩を母岩とする山には発生し、安山岩、頁(けつ)岩、丹土(たんど)(赤い土)、関東ロームなどでは発生しない。第二は地上部の状態、すなわちマツの樹冠の茂り方、低木や地表草本の種類や密度、落葉堆積(たいせき)量の多少などである。したがって、土質条件はマツタケの発生に適していても、マツ林の手入れいかんによっては不適ともなりうるわけである。
マツタケは菌根菌であるから、宿主に頼らねばならないが、宿主となる木はマツタケが存在しなくても生育することはできる。それにもかかわらず、その木がマツタケと菌根をつくって共生するのは、宿主側が主として栄養生活(土壌条件)の面で、マツタケの協力を必要とするためである。したがって、こうした条件を窮めずに、ただアカマツとマツタケ菌糸を接触させただけでは菌根は形成されない。マツタケ栽培が不可能とされてきたのはこのためである。しかし、最近では、これらに対する研究が進み、マツタケ菌の保菌苗をつくることに成功し、これを山林に植えてわずかではあるがマツタケの発生をみている。マツタケの人工増殖に一つの布石を敷いたともいえるが、まだ完成までの道は遠いといえる。
日本のマツタケ生産量は年度によって変動はあるが(2007年の国内生産量は不作により51トン)、第二次世界大戦前に比べると激減している。逆に輸入量は激増しており(2007年の輸入量1554トン)、そのほとんどは中国および朝鮮半島産のものである。また、次に述べるヨーロッパ産やアメリカ産の近縁種も輸入の傾向をみせている。日本のマツタケ生産が激減した最大の原因は、薪炭から石油・ガスへの燃料改革、堆肥・下肥などの有機質肥料から化学肥料への農業における肥料革命によって、マツタケ山の手入れが十分に行われないことにある。もし戦前と同じような手入れを行えば、マツタケの増産は可能といえる。
[今関六也]
マツタケにもっとも近縁な種に、ヨーロッパ産のオウシュウマツタケT. caligatum (Viv.) Rickenがある。ヨーロッパの学者には、この種をマツタケと同種とする人があるほどで、形も香りもよく似ている。また、アメリカ、カナダのポンデローサマツやダグラスファー林に生えるアメリカマツタケT. ponderosum (Rk.) Sing.は色は白っぽいが、形、香りともマツタケに似るので、在米の日本人は好んで食べる。マツタケに似た日本産のキノコでは、広葉樹林に生えるバカマツタケT. bakamatsutake Hongoがある。形は小柄であるが、香りはマツタケと同様である。このほか、アカマツ林に生えるマツタケモドキT. robustum (Fr.) Ricken、シイ・コナラ林に生え、西日本に多いニセマツタケT. fulvocastaneum Hongoもマツタケに似るが、いずれも香りがない。
[今関六也]
マツタケの旬(しゅん)は秋10月。地上に現れる直前あるいは直後の、まだ傘の開いていないものが、香りも味も最高とされ、傘が開いたものほど品質が劣り、値段も安くなる。また採取後日がたったものはつやや張りが失われ、香味も落ちる。とくに腐りかけたものは食べると中毒することもある。『菜譜(さいふ)』(1704)には「新を食すべし。日を経たるは毒あり」と記されている。形は軸が太くて、よく締まって固く、傘は軸よりやや大きく膨らんだ程度を最上とする。「匂(にお)い松茸(まつたけ)、味しめじ」といわれるように、香りが身上なので、あまり手をかけずに料理する。山で取りたてをまるごと、落葉で蒸し焼きにしたものが最高の味とされる。新鮮なものをまず石突(いしづ)きを切り捨て、和紙に包み、水に浸して軽く絞り、厚手の蓋(ふた)付き鍋(なべ)で蒸し焼きにする。焼けたらすぐ軸のほうから細く裂き、ゆずしょうゆなどをつけて食べる。料理法は、吸い物、土瓶(どびん)蒸し、茶碗(ちゃわん)蒸し、揚げ物、鍋物、和(あ)え物、まつたけ飯、焙烙(ほうらく)焼きなど、さまざまな日本料理のほか、西洋料理にも使われる。貯蔵法には、水煮や味付けの缶詰・瓶詰、昆布(こんぶ)などとの佃煮(つくだに)、乾燥まつたけなど。乾燥品は水にもどして料理に使う。最近は真空乾燥もあり、茶漬けのふりかけなどにも用いられている。栄養価は、水分88%、タンパク質2%、糖質7.3%、ビタミンはB1、B2、ナイアシン、Cなどが含まれるが、とくに栄養的に優れる点はない。マツタケの香りは主としてマツタケオールで、人造香料もつくりだされている。
[星川清親]
『小川真著『マツタケの生物学』(1978・築地書館)』▽『マツタケ研究懇話会編『マツタケ山のつくり方』(1983・創文社)』
担子菌類キシメジ科のキノコ。特有の香りと歯切れのよさは日本料理にふさわしく,食用キノコの王者で,菌根菌の代表種。日本,朝鮮,沿海州,サハリン,千島列島に分布する。傘は径8~10cm,まれに30cmにも達することがある。初めは球形,後にまんじゅう形から平らに開く。表面は淡黄褐色~濃褐色の繊維状鱗片におおわれ,古くなると黒褐色となる。しばしば放射状にさけて白い内部の肉質を現す。幼時には縁が内側に巻き,茎の上部の綿毛状の被膜でつながっている。肉は厚く白色で緻密(ちみつ),特有の香りをもつ。ひだは白色で密生し,茎に湾生する。茎は長さ10~20cm,径1.5~3cmで,上下同大,中実。つばより上は白色粉状,下は傘と同色の繊維状鱗片におおわれる。胞子は広楕円形で,大きさ6.5~7.5μm×4.5~6.5μm。
秋,ときには梅雨のころ,主としてアカマツ林内の地上に群生し,しばしば菌輪をつくる。ツガ,コメツガ,アカエゾマツ,ハイマツの森林にも発生することが知られている。マツタケの菌糸は,これらの樹種の生きた木の細根にまといついて,外生菌根を形成して生活している。すなわち,マツタケ菌は樹木から菌根を通じてショ糖やブドウ糖などの炭水化物をもらい,かわって窒素,リン,カリその他の無機物や水を根に送りこむ。このような菌根関係は,樹木と菌と土壌の3者がほどよく調和したときにのみ成立する。一般に母岩が花コウ岩,角岩,砂岩からなっている尾根筋のアカマツ若齢林(30年以下)で,排水がよく,いくぶん乾きぎみの,ツツジ類が多い。すがすがしい環境をもった林が,マツタケの発生に適しているといわれている。最近はマツタケの増産を促すために,アカマツの除伐・間伐,広葉樹や地床植物の整理および落葉腐植層の除去など,発生環境を整備する作業を行うことが推奨されている。また新しくマツタケ山を造成する目的で,胞子の散布,菌糸の移植,マツタケ菌感染苗木の移植などが試みられたが,まだ大量に子実体を生産するには至っていない。
近縁種に,マツタケと形態的によく似ているが,シイ・コナラ林に発生し,マツタケ特有の香りをもたないニセマツタケ,カシ・ナラ林に発生し香りをもつバカマツタケ,アカマツ・ツガ林に発生し香りをもたないマツタケモドキがある。外国ではヨーロッパに産するオウシュウマツタケ,アメリカ東部および西海岸地方で採れるアメリカマツタケがあるが,いずれも特有の香りをもたない。
執筆者:古川 久彦
マツタケは《和名抄》には記載がなく,それから半世紀ほど後にできた《拾遺和歌集》や《新猿楽記》あたりから名を見るようになる。しかし,日本人がより古くから食べていたことは確かで,《万葉集》巻十の〈高松のこの峯も狭(せ)に笠立てて盈(み)ち盛りたる秋の香のよさ〉の歌は,マツタケを詠んだものにほかならない。産地としては古くから京都周辺が知られ,江戸初期にはとくに洛西(らくせい)竜安寺山のものがよいとされていた。マツタケの季節になると,京都では高倉通錦下ル,大坂では天満(てんま)に松茸市が立った。後者は,北方の能勢山地や丹波などからの入荷が多く,かなりの距離を運んでくるため,市は夜に開かれていた。井原西鶴の作品によると,出盛りには1斤2分ほどの値になるものが,初物は22倍余の4匁5分もしたといい,江戸時代でも高価なものであった。
マツタケはずんぐりと太く,あまり傘の開いておらず,柄をおさえてみて弾力のあるものがよい。傘の開いてしまったものは柄がやせて固くなるが,マツタケ飯やつくだ煮にはよい。焼きマツタケは網にのせて焼くか,ぬらした和紙で包んで熱灰に埋めて蒸焼きにし,指で裂いてポンスしょうゆで食べる。土瓶蒸しは白身の魚,鶏肉,ぎんなん,ミツバなどととり合わせて専用の土瓶に入れ,調味しただしを満たし,ふたをしたまま直接火にかける。沸騰したところで火からおろし,スダチかダイダイの汁をしぼり込んで食べる。ほうろく焼きは,ほうろくに塩を敷いてオーブンで焼き固め,好みの材料とマツタケを置き,松葉を散らしてオーブンで焼き,ポンスしょうゆで食べる。
執筆者:鈴木 晋一
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…キノコといわれる生物は菌類の中で大型な子実体をつくる菌をさし,学問的用語というより,通俗的な言葉である。しかしキノコの大部分は担子菌類に所属し,マツタケ,シイタケなどのハラタケ目とサルノコシカケの仲間によって代表される。これらのキノコは森林で生活し,落葉や木材を分解する主役となり,森林生態系における物質循環にあって掛替えのない役割をはたす。…
※「マツタケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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