ブハングbhangともいう。野生のタイマ(大麻)の雌株の葉と花を乾燥させ粉末状にしたもの。一般にタバコに混ぜて吸われる。タイマを吸うことは古くから行われていたが,マリファナが一種の酩酊(めいてい)を伴う薬物として社会問題となりつつも,若者層にその吸煙が広まっていったのは1960年代後半のアメリカにおいてである。それ以前のアメリカにおいても,マリファナは治療用として19世紀から使用されていた。それが,吸煙の対象となってきたのは1920年代ころからで,メキシコ系移民労働者,都市の黒人,そしてボヘミアンの間に徐々に広まってきたことによる。30年代に入り,マリファナの使用・販売に対する罰則は強化されたが,使用人口はほぼこれらのグループにとどまっていた。しかし,60年代に入り,まず大学生の間に急激に広がったのをきっかけに,ハイ・スクール,さらには中産階級へと普及していった。このマリファナ流行は孤立的現象としてではなく,LSD,コカイン,メスカリン,アンフェタミンなどの薬物流行の一つとして,さらには対抗文化の構成要素の一つとして理解される。つまり,絶えまない競争,業績第一主義,物質至上主義を中心とする支配的なライフスタイルの拒否のあらわれとしてとらえられる。ヒッピーやコミューン運動のメンバーの間では,ある種の儀式的性格を有しながら,マリファナの回し吸いが行われた。マリファナのもたらす幻覚症状によって生ずるインナー・トリップinnertripを集団で行うためにである。それは集団へのアイデンティティをつくり出すためのものでもあった。したがって,強固な保守派の反対論も,マリファナ有害説というよりは道徳論を根底においていた。つまり,ヒッピーのような人間が使用するから禁止すべきなのであった。また当時の社会的背景としては〈汚いベトナム戦争〉に対する青年の反発も指摘できる。当初,〈もう一つのライフスタイル〉を象徴し,内面のフロンティア開拓の入口と目されたマリファナも,大衆化,風俗化するにつれ,単なる嗜好品に変質していった。日本でも1960年代からアメリカのビートニックの影響を受けた一部の若者たちに使用されたが,アメリカのように爆発的な流行はみていない。しかし,風俗化の過程は同じである。なお,法律的にはアメリカでは各州法でその吸煙を認めている州もある。日本では大麻取締法により禁じられている。
→タイマ →ハシーシュ
執筆者:今 防人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
Cannabis属植物大麻草は,雌雄異株の一年生草本で,古くから繊維用として,温帯北部から熱帯まで,非常に広い地域にわたって栽培されている.昔から快楽用としてその乾燥葉(マリファナ)を喫煙した歴史があるが,その樹脂をハシシュと称して回教徒が各地に伝えてから,中毒による犯罪が社会問題となり,現在では麻薬に指定されている.テトラヒドロカンナビノール(THC),カンナビノール,カンナビジオールなどを含有するが,それぞれの成分の量は産地によっても,また個体によっても異なっている.麻酔作用,カタレプシー,鎮静,催眠,興奮作用などの薬理作用があるが,その有効成分はTHCである.植物中にはテトラヒドロカンナビノール酸(THCA)として存在し,乾燥,喫煙などの熱によって脱炭酸されてTHCとなる.[別用語参照]カンナビノイド
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…【堀田 満】
[大麻中毒]
大麻依存症のこと。成熟したタイマの雌株の花序と上部の葉から分泌されるこはく色の樹脂を粉にしたものをハシーシュhashishと呼ぶが,栽培したタイマの花序から採ったものをガンジャganja,野生のものの花序や葉から採ったものをマリファナmarihuana(ブハングbhang)といい,後者ほど精神作用が弱い。一般にはこれらを大麻と総称する(1961年のWHOの大麻に関する用語統一による)。…
…精神展開体験とは,自己内界に注意が向かい,思考力や感覚が高まったと感じ,自他の境が不明になり,人類ないし宇宙への合体感を意味する。精神展開薬は化学的に,(1)β‐フェネチルアミン(メスカリン,アンフェタミンなど),(2)インドール系物質(ジメチルトリプタミン(DMT),サイロシビン,ハルミンなど),(3)副交感神経薬(アトロピン,フェンサイクリジンなど),(4)リゼルギン酸誘導体(LSD‐25など),(5)その他(笑気,ナツメグ,マリファナ,バナナの皮など)に分類されるが,作用の強弱によってマイナー・サイケデリクスとメジャー・サイケデリクス(メスカリン,LSD,サイロシビン,DMT,STP,JB‐329など)とに二大別されることもある。
[幻覚薬の研究史]
中央アメリカでは古くからペヨーテなどの幻覚を起こす植物が知られていて宗教や儀式に使われてきた。…
…また色彩感覚,音感等が異常に鋭敏となる。インドタイマの使用は日本では法的に禁止されているが,アメリカではマリファナと呼ばれ,また分泌樹脂の乾燥物はハシーシュと称してタバコなどに混じて吸入される。通常マリファナタバコなどの1回量として吸入されるテトラヒドロカンナビノールの含量は2.5~5mgといわれ,この量で気分が高揚し,多幸感,解放感を生ずる。…
…【堀田 満】
[大麻中毒]
大麻依存症のこと。成熟したタイマの雌株の花序と上部の葉から分泌されるこはく色の樹脂を粉にしたものをハシーシュhashishと呼ぶが,栽培したタイマの花序から採ったものをガンジャganja,野生のものの花序や葉から採ったものをマリファナmarihuana(ブハングbhang)といい,後者ほど精神作用が弱い。一般にはこれらを大麻と総称する(1961年のWHOの大麻に関する用語統一による)。…
…麻薬特例法は,薬物犯罪から得た不正な利益(不法収益等)に関するマネー・ローンダリング行為(隠匿・仮装行為)の処罰規定,不法収益等の没収規定,没収・追徴対象財産の保全手続,外国の没収裁判の執行共助手続,コントロールド・デリバリー(薬物の不正取引が発見された場合に,直ちに検挙することなく取締当局の監視の下に薬物の運搬を許容し,追跡して,不正取引に関与する黒幕まで一網打尽にしようとする捜査手法)の許容規定,金融機関にマネー・ローンダリングの疑いのある取引の報告義務を課す規定など,従来の日本の法制度になかった新しい制度を設けている。 このように薬物犯罪に対して各国で厳しい刑事法的規制が行われているが,薬物の自己使用,特に,マリファナ等の有害性の比較的少ない薬物の自己使用については,刑罰よりも治療を含めた行政措置で対処すべきである,とする非犯罪化の議論も一部では主張されている。【佐伯 仁志】。…
※「マリファナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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