改訂新版 世界大百科事典 「マーシャル諸島共和国」の意味・わかりやすい解説
マーシャル諸島共和国 (マーシャルしょとうきょうわこく)
Republic of the Marshall Islands
基本情報
正式名称=マーシャル諸島共和国Republic of the Marshall Islands
面積=181km2
人口(2010)=5万人
首都=マジュロMajuro島(日本との時差=+3時間)
主要言語=マーシャル語,英語
通貨=米ドルUS Dollar
中部太平洋,ミクロネシア東部に位置するマーシャル諸島が1986年に独立したもの。34の環礁,サンゴ礁島からなる。互いに約150kmを隔てて南北にのびる二つの島列に分かれ,東側をラタック諸島Ratak Islands(〈日の出〉の意),西側をラリック諸島Ralik Islands(〈日没〉の意)と呼ぶ。
1529年スペインの探検家サーベドラÁlvaro Saavedraによって諸島の一部が〈発見〉された。1788年イギリスのマーシャルJohn Marshallが訪れ,彼の名が諸島名となった。19世紀初めにはロシアの探検家が訪れ,諸島の全貌をほぼ明らかにした。1886年スペインによる領有が認められたが,スペインが米西戦争で破れたことにより,99年ドイツに売却された。第1次大戦後は日本の委任統治領となり,ヤルート島に支庁が置かれた。土地が狭いため経済的にはあまり利用価値がなかったが,軍事拠点としては重要で,第2次大戦では激戦地となった。戦後アメリカの国連信託統治領となり,1946年からアメリカはビキニ島,エニウェトク環礁で原水爆の実験を行い,島民を強制移住させた。79年5月自治政府を樹立し,日本人の血が混じるアマタ・カブアが初代大統領に選出された。86年10月21日,アメリカとの自由連合協定Compact of Free Association(防衛・安全保障についてのみアメリカが全権をもつが,同時にアメリカは経済援助を行うという協定)が発効し,独立した。首都はマジュロ島に置かれており,一院制の国会がある。91年に国連に加盟した。
経済は,15年間の自由連合協定期間中にアメリカから支払われる援助金と,クワジャリン環礁にある米軍のレーダー基地やミサイル実験場の使用料,米軍基地で働く国民の賃金に支えられている。日用品,食料品はアメリカ,オーストラリアから輸入し,自立は難しい。このため,カブア大統領は,先進国の原子力発電所から出る放射性物質,産業廃棄物の貯蔵場を領内の小島に誘致しようとしたが,国際的な反発を招いて成功しなかった。96年にビキニ島の放射能汚染は解消したとして,スキューバ・ダイバーに島を開放,観光地化を図っている。96年末にカブア大統領が死去し,97年1月,国会でいとこのイマタ・カブア議員が後任に選ばれた。新大統領はクワジャリン出身で,基地使用料の交渉役だった。日本政府は97年,マジュロに大使館を開設,経済協力を強化している。
執筆者:石森 秀三+青木 公
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報