ミセル(英語表記)micelle

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

分子間力による多数の分子の集合体を一般にミセルと呼んでいる。 (1) 界面活性剤溶液がある濃度以上になったときにできる界面活性剤の分子またはイオンの集合体。ミセルができはじめる限界の濃度を臨界ミセル濃度 (cmc) という。界面活性剤の水溶液では,活性剤 (分子またはイオン) が集ってミセルをつくり,この大きさがコロイド粒子の大きさに相当する。このようなコロイドミセルコロイドという。 (2) クリスタリットのこと。高分子物質を構成する微結晶,または繊維組織の基本構成単位。ミセルが集ってミセルストランド,ミクロフィブリルフィブリルと進み,ついに1本の繊維を構成する。セルロースのミセルは 500× 50Å程度の大きさであるとされている。ミセルは高分子物質の特性を説明するのに利用される。

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世界大百科事典 第2版の解説

分子内に親水性部分と親油性(疎水性)部分とをあわせもつ物質を両親媒性物質と呼び,界面活性剤はその典型的なものである。このような物質を水に溶かすと,ある濃度以上で,親水基を外に親油基を内に向けて,数十から百数十分子が集まって,図に示すような会合体をつくる。このような会合体をミセルと呼ぶ。数十nmの直径をもち,会合コロイド一種である。ミセルの存在は,1913年マクベーンJames William McBain(1882‐1953)により提唱された。

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大辞林 第三版の解説

界面活性剤などの分子またはイオンが数十個から数百個集まってつくるコロイド粒子。例えば水中の石鹼分子は、親水性のカルボキシル基を外側に、親油性のアルキル基を内側にして配列し、球状のミセルをつくる。会合コロイド。
繊維などの高分子物質中で、分子が集合配列して結晶状になっている部分。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

二通りの意味に用いられるので、以下それぞれについて記す。(1)多数の分子が分子間力で会合して生成した親液コロイド粒子のこと。1912年にアメリカのマックベインJames William McBain(1882―1953)が提唱した用語である。せっけんやアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)などの長鎖の電解質の溶液では、ある一定の濃度(臨界ミセル濃度、CMC)以上になるとミセルの形成がおこる。このようなミセルの生じているせっけん水溶液などには、水に溶けにくいはずの有機溶媒を加えても溶解してしまう。これを可溶化という。これは、加えた溶媒がミセルの構成分子の末端(親油基)の間にとらえられるためで、このために当然ながらミセルのサイズは変化する。しかし有極性の液体の添加では、親油基は影響を受けないのでミセルサイズの変化はおこらない。(2)高分子物質を構成する微結晶をミセルとよぶ。ときには混用を避けるためにクリスタライトcrystalliteとよぶこともある。セルロースや絹、羊毛などの繊維組織の基本単位であり、このミセルの集合配列したものをミクロフィブリル、さらに高次に集まったものが繊維(ファイバー)となる。ミセルの大きさは、X線小角散乱法や広角X線法によるか、あるいは電子顕微鏡により直接ミセルを観察すれば求められる。絹などの繊維では溶解法がとられることもある。
 もともとミセルということばは、1858年にスイスの植物学者ネーゲリが、デンプンやセルロースのゲルが光学的に異方性を示すことから、ゲル中に微細な結晶質粒子の存在を予想し、これに対して与えたものである。今日でのミセルのモデルは、総状ミセルといわれているものが一般的に認められているものである。鎖状高分子が平行に集まって束をつくり、これがミセル(クリスタライト)をなす。分子の末端部は総状となって他のミセルの端と結合し、無定形部分を形成しているというモデルである。[山崎 昶]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (micell)
① 石鹸などの界面活性剤が水溶液などと集合して作ったコロイド。界面活性剤分子は、親水性の基を外側に、疎水性の基を内側にして配列し、球形のミセルを作る。
② 高分子化合物を構成する微細な結晶。絹や羊毛などの構造を作る基本単位となるもの。〔化学繊維(1951)〕

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化学辞典 第2版の解説

】ある濃度以上で界面活性剤分子が集まってつくる親液コロイド(セッケン溶液など)集合体をミセルという.ミセルの形や性質にはいろいろあるが,界面活性剤水溶液中にはある濃度以上では分子またはイオンの集合体としてのミセルが存在し,この濃度を臨界ミセル濃度という.ミセルを形成しているセッケン水溶液に無極性有機液体を加えると,ミセルの大きさは変わるが,有極性有機液体では変化はない.無極性液体はミセルの末端基間に入り,有極性液体は分子間に入ると考えられるためである.乳化重合においては,乳化剤がミセルを形成し,そのなかで単量体(モノマー)が可溶化されて重合する.ミセルの効果をうまく利用した例といえる.【】高分子物質を構成する微結晶粒子をいい,クリスタラリットともいう.ミセルはセルロースや絹,羊毛などの繊維組織の結晶の基本単位で,これが集合,配列してミクロフィブリル,さらには繊維を形成する.セルロースにおいて,ミセルが相互にファンデルワールス力により結合して構造をつくる房状ミセルモデル([別用語参照]房状ミセル構造)も生まれてきた.ほかの多くの結晶性高分子に対してもこのモデルが適用されたが,現在はほとんどの高分子が折りたたみ結晶を形成することが明らかになっている([別用語参照]折りたたみ構造).ミセルの大きさは,結晶干渉点の広がりの解析による広角X線法や,一次X線入射点付近の散乱X線強度から求める小角散乱法,あるいは電子顕微鏡による方法などで決定される.セルロース,絹では加水分解法なども用いられる.

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世界大百科事典内のミセルの言及

【吸収】より

…脂肪の吸収は,糖,タンパク質加水分解産物の場合とはちがった機序で行われる。脂肪の消化の結果生じたモノグリセリド,脂肪酸は,胆汁酸とともにミセルとよばれる微細粒子を形成する。ミセルは,疎水性の部分を内包し親水性の極性部分を外側にした構造をしており,水溶液中で安定である。…

【コロイド】より

…粒子コロイドが安定に存在する要因は粒子表面の電荷である。 セッケンの溶液がコロイドの一種であることはかなり以前から知られていたが,アメリカのマクベインJ.W.McBain(1913)はこれがセッケン分子の会合によると考え,その会合体をミセルと呼んだ。界面活性剤分子が水溶液中でコロイド次元の会合体を形成することは,その後多くの研究により明らかにされ,これらは会合コロイドと呼ばれる。…

【リン脂質(燐脂質)】より

…水を少量含んだ有機溶媒にはよく溶け,細胞や組織からはよくクロロホルム‐メチルアルコール混合液を用いて抽出される。水に溶かすと大半はミセルを形成する。 グリセロール誘導体ではないもう一つのリン脂質はスフィンゴミエリンsphingomyelinである。…

※「ミセル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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