ムシガレイ(読み)むしがれい(その他表記)shotted halibut

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムシガレイ」の意味・わかりやすい解説

ムシガレイ
むしがれい / 虫鰈
shotted halibut
[学] Eopsetta grigorjewi

硬骨魚綱カレイカレイ科に属する海水魚日本海と北海道中部以南の日本各地、台湾東シナ海黄海渤海(ぼっかい)に分布する。暖海性のカレイで、対馬(つしま)周辺海域に多い。体は長楕円(ちょうだえん)形で、口はやや大きい。有眼側の体側は茶褐色で、目より大きい黒褐色の輪状紋と白色の小円斑(はん)が散在する。これらの斑紋は虫食い状にみえるので、ムシガレイ(虫鰈)の名前がある。

 全長18センチメートルぐらいで成熟し始め、対馬周辺海域では1、2月、日本海北部では4、5月に水深100メートル以浅で産卵する。卵は分離浮性卵で、その径は1ミリメートル前後。孵化(ふか)した仔魚(しぎょ)は全長およそ3ミリメートル。未成魚は水深30~80メートルの砂泥底にすむが、成魚になると70~160メートルの深みに移動する。エビ類、イカ類、小魚などを食べる。1年で体長8センチメートル、3年で15~18センチメートル、5年で20~25センチメートル、8年で32センチメートルぐらいに成長する。体長40センチメートル余りになる。高齢群では雄の死亡率は雌より高い。底引網刺網(さしあみ)などで漁獲される。煮つけ干物刺身などにすると美味。肉に水分が多いためにミズガレイともよばれる。

[尼岡邦夫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ムシガレイ」の意味・わかりやすい解説

ムシガレイ (虫鰈)
shotted halibut
Eopsetta grigorjewi

カレイ目カレイ科の海産魚。1属1種。日本各地の沿岸,黄海,東シナ海に分布する。体の右側が有眼側で淡褐色をなし,大小の淡褐色の輪紋斑が散在し,とくに側線をはさんで3個ずつ対をなす斑紋は大きくて明りょうである。産卵期は1~3月で,主産卵群は4年魚以上で構成される。1腹の卵数は100万粒を超えるものもある。卵は直径約0.85~1.3mmの分離浮性卵で,水温14℃において約3日で孵化(ふか)する。孵化後,約13mmになると変態する。全長10cmに達するまではおもに小型のプランクトン,10cm以上ではエビ,カニ,イカ類,さらに15cm以上になると魚類をも捕食する。1年で全長17cm,4年で22.5cmになり,60cmに達するものもある。ムシガレイと呼ぶのは関東付近のみで,山陰では体の模様からモンガレイ,他の日本各地では,肉質が少し水っぽいところからミズガレイと呼ばれる。塩乾品にして少し水分を抜くと美味で高価である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムシガレイ」の意味・わかりやすい解説

ムシガレイ
Eopsetta grigorjewi

カレイ目カレイ科の海水魚。体長 40cm内外。体は卵円形で,有眼側 (体の右側) は櫛鱗,無眼側は円鱗でおおわれる。側線は胸鰭の基部の上方でゆるく半円形に曲る。有眼側は淡褐色で,大小さまざまな黒褐色あるいは乳白色の斑紋があり,特に大きい斑紋が側線をはさんで対立するようにある。水深 200m以浅の砂泥底,泥底にすむ。日本各地に広く分布する。食用。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ムシガレイ」の意味・わかりやすい解説

ムシガレイ

カレイ科の魚。地方名ミズガレイ,モンガレイなど。全長60cmに達する。眼は体の右側。日本〜台湾に分布し,水深100〜150mの砂泥にすむ。冬〜春,底引網で大量に漁獲され,おもに関西で賞味される。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android