改訂新版 世界大百科事典 「メクラネズミ」の意味・わかりやすい解説
メクラネズミ (盲鼠)
blind molerat
姿,習性ともモグラ(食虫目)によく似るが,齧歯(げつし)目ネズミ科メクラネズミ属Spalaxの哺乳類の総称。ヨーロッパ南東部からギリシア,ボルガ川まで,カスピ海北の平原およびバルカン半島,小アジアからエジプト,リビア北部までに5種が分布している。体長15~30cm,尾はなく,体重130~370g。体はずんぐりと丸く,四肢は短く,かぎづめが発達する。眼は皮下に埋まり,耳介は痕跡的で,上あごの門歯は大きく露出する。体色は変異に富み,暗灰色か黄灰色で,黄色または金色の光沢がある。吻(ふん)から口部へ白帯がある。
地中でトンネル生活をし,内部には巣室,食物貯蔵室,便所がある。主として大きな門歯で穴を掘りながら地中を行動し,さまざまな植物の根,球根,地下茎などを食べ,ときに夜間に地表へ出て草や種子,昆虫なども食べる。地表には15~20個の土塚をつくるが,そのうちの一つは直径1m,高さ25cm以上あり,内部に休息用の部屋がある。地中海地方のものは繁殖期にはさらに大きな塚(直径2.5m,高さ1mに達する)をつくる。冬が交尾期で,妊娠期間約1ヵ月で,1産1~5子を生む。寿命は約4年半。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報