日本大百科全書(ニッポニカ) 「メスバウアー」の意味・わかりやすい解説
メスバウアー
めすばうあー
Rudolf Ludwig Mössbauer
(1929―2011)
ドイツの物理学者。ミュンヘン生まれ。ミュンヘン工科大学で学位を取得。マックス・プランク研究所に勤務し、1958年メスバウアー効果を発見、この業績によって1961年ノーベル物理学賞を受ける。同年カリフォルニア工科大学の教授に招かれてアメリカに渡り、1964年に帰国し、ミュンヘン工科大学教授となる。1997年以降同大学名誉教授。原子核からγ(ガンマ)線が放射されると、その反跳のためドップラー効果がおこり、γ線の波長がわずかに延び、同種の原子核でも吸収できない。結晶格子中に原子核が強く束縛されているときに、γ線による反跳は無視できるほど小さくなり、原子核の共鳴吸収の観測が可能になる。これを無反跳共鳴吸収効果という。メスバウアーがこのことをイリジウム191の原子核について初めて検証することに成功したので、メスバウアー効果とよんでいる。アインシュタインの一般相対性理論の実験的検証にも用いられ成功した。
[武澤 隆]
『大野和郎著「Mössbauer効果」(『日本物理学会誌』15所収・1960)』▽『近角聰信編『磁性物理の進歩』(1964・アグネ)』