メーヨー(読み)めーよー(英語表記)George Elton Mayo

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メーヨー」の意味・わかりやすい解説

メーヨー(George Elton Mayo)
めーよー
George Elton Mayo
(1880―1949)

オーストラリア生まれの臨床心理学者・産業社会学者。1922年アメリカに渡り、1926年ハーバード大学に招かれ、1929年から1947年まで同大学教授。ホーソン実験のなかで指導的役割を果たし、人間関係論の立場から産業社会学の確立に貢献した。

 彼がレスリスバーガーFritz Jules Roethlisberger(1898―1974)たちとともにウェスタン・エレクトリック社(現、アルカテル・ルーセント)ホーソン工場で長年月をかけて実施した調査研究から明らかにしたことは、生産能率は物理的作業環境や生理的諸条件よりもむしろ従業員の態度や感情によって影響され、そして後者は職場の人間関係によって規定されているという点であった。彼らはこの認識から出発して、企業や工場を研究する際、それを能率の論理に基づくフォーマルな組織としてではなく、感情の論理に基づくインフォーマルな人間関係からとらえるべきだという方針を提起して、経営学のなかに新機軸を打ち立てるとともに、組織、小集団、リーダーシップモチベーションなどに関する社会学や社会心理学の発展を促した。彼はまた、産業の発展がもたらした社会的混乱とアノミー状態の克服を、政治的統制よりもむしろ人々の自発的協働とそれを保障する社会規範の発達に求め、職場共同体を志向する経営イデオロギーを打ち出した。『産業文明における人間問題』(1933)などの著書がある。

[石川晃弘]

『村本栄一訳『産業文明における人間問題』(1951/新訳版・1967・日本能率協会)』『エルトン・メイヨー著、藤田敬三・名和統一訳『アメリカ文明と労働』(1951・大阪商科大学経済研究会)』


メーヨー(John Mayow)
めーよー
John Mayow
(1641―1679)

イギリスの化学者、生理学者。コーンウォールの生まれ。オックスフォード大学に学び、1670年法学の学位を得たが、ロンドンバースで医業を開き、かたわら硝石の性質空気の組成、燃焼と呼吸などについて独自の実験を行った。1674年の論文「硝石と硝空気精について」において、空気には硝石の一成分をなす硝空気精spiritus nitro-aëreusが含まれていること、これが燃焼や呼吸によって消費されること、そして動脈血がこれを多量に含むことなどを明らかにした。彼は酸素の主要な役割を正しくとらえたわけだが、酸素そのものが発見されるのは、フロギストン説の時代を挟んでさらに100年後のことであった。

[内田正夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「メーヨー」の意味・わかりやすい解説

メーヨー
George Elton Mayo
生没年:1880-1949

産業社会学者。オーストラリアのアデレードに生まれる。アデレード大学で医学,心理学を専攻,1911年にクイーンズランド大学の論理学倫理学,心理学の講師となり,19年には新設の哲学講座の教授になった。22年にアメリカに渡り,ペンシルベニア大学の研究員を経て,26年にハーバード大学ビジネス・スクールに招かれ,29年から47年まで教授として,調査研究と後進の指導に大きな貢献をした。最初は産業心理学や産業生理学の立場から産業における人間個人の諸問題を研究していたが,ホーソーン実験Hawthorne experimentsを契機に産業における人間関係の分析に研究を発展させた。この実験は,シカゴのウェスタン・エレクトリック社のホーソーン工場で1927年から32年に行われた。産業心理学の手法を使い,作業の物理的環境や生理的諸条件が生産能率に与える影響を究明することが当初の目的であった。しかし従来の定説をくつがえすような結果があらわれ,その意味でこの実験は失敗であった。そこでメーヨーはじめハーバード大学のレスリスバーガーFritz Jules Roethlisberger(1898-1974)たちの指導により,ひきつづき5年以上の実験の結果,生産能率に従業員の態度や感情が大きな影響を与えることがあることと,それが企業内の人間関係と密接に関連しているという〈社会心理的要因〉の重要性を実証した。この一見あたりまえのことを科学的に立証し,これによって企業内の従業員の行動や態度を理解する〈人間関係論〉という新しい立場を開拓し,その重要性を認識させたところにこの実験の画期的な意義がある。さらに,産業における社会心理学的側面を科学的に探究する産業社会学を成立せしめ,これは実務の人事・労務管理面では人間関係管理に発展していった。また,経営学の分野だけでも集団関係論,人事管理論,組織論,リーダーシップ論,労使関係論,マーケティングのモティベーション論(動機づけ)などの研究に多大の影響を与えている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メーヨー」の意味・わかりやすい解説

メーヨー
Mayo, (George) Elton

[生]1880.12.26. アデレード
[没]1949.9.7. サリー
オーストラリアに生れ,おもにアメリカで活躍した産業心理学者。大学では医学,心理学,論理学,哲学などを学び,1923年アメリカに渡り,29~47年ハーバード大学ビジネス・スクールの教授として調査研究に活躍した。イギリスで他界。初めは労働生理学的観点から,作業が人間諸個人に及ぼす影響をおもに研究していたが,ホーソン実験で指導的役割を果し,これを契機に,産業における人間関係論という新しい産業社会学の分野を開拓した。主著『産業文明における人間問題』 The Human Problems of an Industrial Civilization (1933) ,『アメリカ文明と労働』 The Social Problems of an Industrial Civilization (45) ,"The Political Problems of an Industrial Civilization" (47) 。

メーヨー
Mayow, John

[生]1640.5.24. ブレー
[没]1679.10.10. ロンドン
イギリスの化学者,生理学者。オックスフォード大学で法律,医学を修める。地方都市バスで医者を開業するかたわら,ロンドンで R.フックらの学者グループと親交を結ぶ。フックの推薦でロイヤル・ソサエティ会員となる (1677) 。巧みな実験により,空気中の特定成分 (メーヨーはそれを硝石空気と呼んだ) が燃焼,呼吸に不可欠なことを唱え,酸化理論の提唱者,A.ラボアジエの先駆者とさえみなされた。また肺の機能を明らかにしたほか,筋肉収縮の機構,肋骨の構造の研究にもすぐれた業績を残した。主著に,窒素化合物の組成と性質,呼吸,発酵,筋肉運動などに関する5つの論考を収めた『五つの論文』 Tractatus quinque (74) がある。

メーヨー
Mayo, Henry Thomas

[生]1856.12.8. バーモント,バーリントン
[没]1937.2.23. ニューハンプシャー,ポーツマス
アメリカの海軍軍人。 1876年海軍兵学校卒業。 1913年海軍少将。 14年4月メキシコのタンピコへ上陸したアメリカ水兵が逮捕されたことから起ったタンピコ事件に際して,独断でメキシコへ謝罪を強硬に主張,T.W.ウィルソン大統領もこれを支持した。 15年海軍中将。第1次世界大戦中の 16年からは大西洋艦隊司令長官。

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百科事典マイペディア 「メーヨー」の意味・わかりやすい解説

メーヨー

オーストラリア生れの産業社会学者。アデレード大学に学び,渡米し1929年ハーバード大学教授。レスリスバーガーらと行ったホーソーン実験を通じヒューマン・リレーションズ論を提唱,経営学に新分野を開拓。主著《産業文明の社会問題》。
→関連項目産業社会学

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367日誕生日大事典 「メーヨー」の解説

メーヨー

生年月日:1880年12月26日
オーストラリア生まれ,アメリカの産業心理学者
1949年没

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世界大百科事典(旧版)内のメーヨーの言及

【科学的管理法】より

…主としてヨーロッパの労働生理学者から寄せられた批判は,テーラー・システムを一面で評価しつつも,課業の設定における疲労度の定量化の必要性を説くもので,その後の労働科学の発達の一原因となった。第3の批判は,労働者を性別・年齢を問わず機械的に定量化・標準化し,情意ある人間として把握していないとするもので,ハーバード大学のG.E.メーヨー,F.J.レスリスバーガーらのウェスタン・エレクトリック社ホーソーン工場での実験(ホーソーン実験,1927‐39)を契機として,労働者の参加と動機づけ(モティベーション)が強調されるようになり,人間関係論(ヒューマン・リレーション),行動科学へと発展することとなった。第4の点についても,業務拡大(ジョブ・エンリッチメント)や,多能工化,さらには分業流れ工程の否定など,のちに多くの試行が行われて現在に至っている。…

【経営・経営管理】より


〔〈人間関係論〉登場以降の管理論〕

【〈人間関係論〉と人間関係的管理】
 アメリカでは,科学的管理以来の伝統的な管理の考え方が基本的には維持されつつも,労働力の担い手である人間主体そのものに注目する動きが1930年代以降強まっていった。その口火を切ったのはG.E.メーヨーをリーダーとする人間関係論,そしてその実践版ともいえる人間関係的管理である。
[メーヨーの〈人間関係論〉]
 ウェスタン・エレクトリック社のホーソーン工場でメーヨー・グループがホーソーン実験(1927‐32)を通して発見した新たな事実と,それに基づいて彼らが一般化した主張の骨子は次のようなものである。…

※「メーヨー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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