モルキオ病(読み)もるきおびょう(その他表記)Morquio Disease

家庭医学館 「モルキオ病」の解説

もるきおびょう【モルキオ病 Morquio Disease】

[どんな病気か]
 モルキオ病は、遺伝性の病気の1つです。
 人の体内には、グリコサミノグリカンムコ多糖類(たとうるい))という物質があって、さまざまな組織に存在しています。
 この物質は、体内での生産と分解のバランスがとれていれば問題はありません。
 しかし、モルキオ病の場合では、グリコサミノグリカンを分解する酵素こうそ)(ガラクトサミン6硫酸(りゅうさん)スルファターゼと呼ばれる酵素)が生まれつき欠けています。
 そのため、骨格内臓に、異常にグリコサミノグリカンが蓄積されて、いろいろな障害がおこってくるのです。
[症状]
 関節がゆるく、環軸椎亜脱臼(かんじくついあだっきゅう)などの頸椎(けいつい)の病変がおこるため、脊髄せきずい)の神経が圧迫されて神経症状が出たり、股関節(こかんせつ)の障害がおこったりします。
 知能障害はなく、また、生命にも別条はありません。
 しかし、いわゆる低身長症(ていしんちょうしょう)の症状が著しく、体型はくびと胴(どう)が短くなり、X脚(エックスきゃく)(「X脚」)となります。
 骨格の異常としては、背中が曲がったり、鳩胸(はとむね)(「鳩胸」)や扁平足(へんぺいそく)(「扁平足」)がおこりやすくなります。
 その他の異常としては、目の角膜(かくまく)が濁って視力が低下したり、心臓が大きくなったりすることがあります。
[検査診断]
 尿中のグリコサミノグリカンの成分を調べることで、だいたいの予想はつきますが、正確な診断をするには、酵素の活性を調べる検査が必要です。
[治療]
 この病気の根本的な治療法はありません。
 骨格の変形を予防したり、矯正(きょうせい)するために装具を使用したりします。

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改訂新版 世界大百科事典 「モルキオ病」の意味・わかりやすい解説

モルキオ病 (モルキオびょう)
Morquio disease

モルキオ症候群ともいう。ウルグアイ,モンテビデオの医師モルキオLouis Morquio(1867-1935)らによって報告された病気。ムコ多糖類の代謝異常によって,全身の骨の発育異常を生ずる疾患の一つ。遺伝性の病気で,症状が現れてくるのは3~4歳ころからである。脊柱の後彎,X脚,扁平足,鳩胸,関節の異常可動性などが現れ,体幹が四肢より相対的に短い低身長者になるのが特徴である。X線検査でも,脊柱の椎体の扁平化,股関節の臼蓋の形成不全や外反股,骨端部の変形など,特有な像がみられる。下肢の変形に対しては,手術的治療が行われ,近年は骨髄移植が試みられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モルキオ病」の意味・わかりやすい解説

モルキオ病
モルキオびょう
Morquio's disease

骨端部の関節軟骨形成過程の先天性障害に基づく疾患。四肢の長管骨,短管骨の骨端部,手根骨,足根骨,脊椎に特徴的な変化が,生後1~3歳頃から現れる。身長の発育は遅延し,躯幹に比して四肢は細長く,頸部は著しく短く,胸部は釣鐘状で,胸腰椎後彎,下部腰椎前彎増強,X脚,扁平足などがある。知能障害はない。常染色体性劣性遺伝形式を示し,ムコ多糖代謝異常症ということが判明しており,尿中にケラト硫酸の異常排泄がある。 L.モルキオ (1867~1935) はウルグアイの小児科医。

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