日本大百科全書(ニッポニカ) 「モルゲンシュテルン」の意味・わかりやすい解説
モルゲンシュテルン(Oskar Morgenstern)
もるげんしゅてるん
Oskar Morgenstern
(1902―1977)
ドイツのシレジア生まれの経済学者で、フォン・ノイマンとともに『ゲームの理論と経済行動』(1944)の共著者として知られている。1925年にウィーン大学で博士号を取得。アメリカに留学し、29年に帰国、ウィーン大学の私講師となり、35年同大学教授となる。一方、31年から38年までオーストリア景気研究所所長や『国民経済雑誌』の編集者を兼ねた。38年ナチスがオーストリアを合邦すると、アメリカに亡命し、プリンストン大学教授となり、70年までその職にあった。オーストリア時代に『経済予測』(1928)、『経済政策の限界』(1934)を著し、経済行動のゲーム的側面に着目していたが、プリンストン高等研究所で、すでに独立に「ゲームの理論」の着想をはぐくんでいた大数学者ノイマンとの出会いは、彼らの独創的な共同の偉業として結実した。
[佐藤隆三]
『銀林浩他監訳『ゲームの理論と経済行動』全五冊(1972~73・東京図書)』
モルゲンシュテルン(Christian Morgenstern)
もるげんしゅてるん
Christian Morgenstern
(1871―1914)
ドイツの詩人。画家の子としてミュンヘンに生まれる。1894年ころから物書きを本職とし、寄席(よせ)の台本なども書いたが、結核のためしばしば療養所に入らなければならなかった。1910年以降は南チロールに住む。イギリスのナンセンス詩に近く、グロテスクだが残忍ではない詩、神も精神も失い唯物論化した世界を感情的に霊化し、楽しませようとする詩集『絞首台の歌』(1905)によって有名になる。その言語の扱いは、後代の詩に影響を与えた。ニーチェ、仏教、友人の哲学者R・シュタイナーの人智(じんち)学にも触れ、深く内省的魂の歌『われら一つの道を見出せり』(1914)に達した。イプセンら北欧文学の作品の翻訳もある。
[横田ちゑ]