ヤルカンド(読み)やるかんど(その他表記)Yarkand

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤルカンド」の意味・わかりやすい解説

ヤルカンド
やるかんど / 葉爾羌
Yarkand

中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区南西にある一大オアシス、およびその中心となる県をさす。県はカシュガル地区に属し、人口80万4200(2013)。行政上では莎車(さしゃ)県という漢音表記の古名が、1884年新疆省成立以来使われているが、住民の大多数はイスラム教徒のトルコ系ウイグルであり、従来どおりヤルカンドの名でよばれている。

 この地はカラコルム山脈の融雪河川ヤルカンド河が、タリム盆地タクラマカン(タクリマカン)砂漠に注ぐ地点にあり、すでに漢代には人口約1万6000の莎車国が存在し、古くからシルクロードの重要なオアシスとして繁栄し続けてきた。それはアフガニスタンインド方面へ向かうシルク・ロードの最大の難所パミール・ヒマラヤ越えの拠点として東西通商路上の要衝となり、周辺オアシス、遊牧地帯からの農産物、畜産物の集散地として発達してきたためである。この経済上の利点を背景に、カシュガルとともにタリム盆地のオアシス地帯における政治的中心地を形成してきた。現在でも、南新疆における小麦トウモロコシワタなどの重要な産地となっている。紡績、建築材料、食品加工などの工場や水力発電所もある。

真田 安・編集部 2018年1月19日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ヤルカンド」の意味・わかりやすい解説

ヤルカンド (葉爾羌
)
Yarkand

中国,新疆ウイグル自治区南部のオアシスおよびその中心都市名。南方カラコルム山脈から流れ下るヤルカンド川のタリム盆地への出口,タクラマカン砂漠の南西端に位置する。前2世紀には既にオアシスが成立しており,中国史料では莎車(さしや)と記している。以来,東西交易路の一拠点であり,また中央アジアとインドを結ぶ道の起点として繁栄した。古代の住民はアーリヤ系仏教徒であったが,9世紀から11世紀の間にトルコ系イスラム教徒に替わり,ヤルカンドの名もこの頃現れる。16世紀にチャガタイ・ハーン国の末裔が建てたいわゆるカシュガル・ハーン国の首都となってから,タリム盆地南西部の政治的中心として急速に発展した。18世紀後半に清朝の支配下に入っても,その地位は変わらなかったが,19世紀末に中央アジアの国際化の傾向のなかで,外交,政治の諸機関が西隣のカシュガルへ移ると地域の中心としての地位の低下がみられた。しかし依然,経済的には重要な大オアシスである。現在は綿,織物などの生産が盛んで,行政上は喀什区属下の莎車,沢普の2県に分かれ,中心となる莎車県の人口は54万(1995)である。
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百科事典マイペディア 「ヤルカンド」の意味・わかりやすい解説

ヤルカンド

中国,新疆ウイグル自治区南西部,旧シルクロード南道の町。漢字では葉爾羌。旧名莎車(さしゃ)。唐僧玄奘がインドからの帰路ここを通過している。現在はカシュガル(喀什)地区莎車県。灌漑(かんがい)が発達し,小麦,トウモロコシ,綿花の重要な産地となっている。莎車県の人口は79万人(2014)。
→関連項目タリム盆地

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ヤルカンド」の解説

ヤルカンド
Yārkand[チャガタイ],Yärkan[現代ウイグル]

中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区の一都市。漢代には莎車(さしゃ)国として知られた。16世紀にカシュガル・ハン国の首都となり,その後の清朝時代を通じて,東トルキスタンの主要な都市の一つとして発展した。ウイグル人を主要な住民とする。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ヤルカンド」の解説

ヤルカンド
Yarkand

中国,新疆 (しんきよう) (シンチヤン) ウイグル自治区南西部にある都市
西域地方の天山南道にあるオアシス都市。漢代には莎車といわれた。パミール越えの一要衝で,仏教も盛んであった。13世紀チャガタイ−ハン国の成立後は,その一中心地として重要な拠点となった。

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世界大百科事典(旧版)内のヤルカンドの言及

【莎車】より

…《魏書》には渠沙国として見える。新疆ウイグル自治区のヤルカンド(葉爾羌)にあたる。現在の人口は約4万5000。…

※「ヤルカンド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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