日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゆか」の意味・わかりやすい解説
ゆか(体操競技)
ゆか
floor exercise
体操競技における男女器械種目の一つ(ゆか運動)。また、その器械名。弾性をもった12メートル四方(12メートル×12メートル)のゆか(運動)面で演技を行う。演技時間は、男子は70秒以内、女子は90秒以内となっており、これを超過すると減点となる(タイム減点)。ゆかの弾性はゴム式とスプリング式があり、国際競技会や国内全国大会などではおもにスプリング式が採用されているが、スプリング式を使用しなければならないという競技規則はない。12メートル四方の境界線は、約5センチメートルのラインで囲まれており、外側が境界線となるよう設定されている。この境界線を踏み越した場合は減点となる(ライン減点)。なお男子は、演技中にかならず一度は四隅に到達しなければならない。12メートルの境界線より外側は、なだらかな斜面で傾斜している。このスプリング式ゆかの開発によって、男女ゆか運動のタンブリング系高難度技(宙返りなど)が大きく発展したと言っても過言ではない。
1962年(昭和37)までは「徒手」あるいは「徒手体操」とよばれていた。ゆか面上で、前方、後方、側方のアクロバット的跳躍技(アクロバット系技)を中心に構成され、さらに男女特有のルール上の要求がある。ゆかフロア面の開発により弾性が顕著になり、単独のアクロバット的跳躍技が急速に発展した。また、跳躍技の組合せが盛んに取り入れられていることも近代的なゆか運動の特徴でもある。
女子ゆか運動では音楽伴奏が特徴的で、かつてはピアノの生演奏による伴奏が規則上求められ、ピアノ伴奏者の能力も演技に少なからず影響していた。現在では、あらかじめCD(コンパクトディスク)等のデジタル化された媒体を利用して音楽を流すようになっている。伴奏音楽は演技構成と融合し、個々の技や動きに合致した個性的なものでなければならない。男子は1932年の第10回オリンピック・ロサンゼルス大会から、女子は1952年の第15回ヘルシンキ大会よりオリンピック種目(種目別)となった。
[三輪康廣・後藤洋一 2020年2月17日]