翻訳|laterite
熱帯地方に広く分布する酸化鉄,アルミナ,カオリナイトに富む赤黄色の硬化した風化殻の名称。紅土(こうど)ともいう。硬化の程度により,手で容易にこわれる程度のカラパスcarapaceとつるはしでやっと砕ける程度のキュイラスcuirasseとに区別されている。インド南部で古代から建築材料に用いられてきたので,煉瓦を意味するラテン語のlaterにちなんでブカナンF.Buchananが最初に命名(1807)した。その後,多くの研究者により次のような異なった意味で用いられるようになり,混乱が生じた。(1)熱帯や亜熱帯に発達するケイ酸が少なく,鉄やアルミニウムの含水酸化物に富む残積成赤色土壌(ラテライト性土壌)。(2)カオリナイト,酸化鉄,アルミナに富む熱帯の風化生成物で,日光に当たって乾燥すると,不可逆的に硬化する物質(ブカナンのラテライト)。(3)熱帯に分布する硬化した含鉄質風化殻すなわち硬盤層で,主としてボーキサイトや含水酸化鉄からなる物質。
このような概念の混乱を避けるため,今日ではブカナンが最初に〈ラテライト〉とよんだ物質はプリンサイトplinthite(煉瓦を意味するギリシア語のplinthosに由来)として再定義され,ラテライトという用語は硬化したプリンサイトに限定して用いられるようになってきている。このようなラテライトの概念の変遷と関連して,ラテライト化作用やラテライト性土壌の意味内容も変化している。
基礎的土壌生成作用の一つで,最初はハラソビッチH.Harasovizにより,アリット化作用とよばれた(1930)。湿潤熱帯気候下では生物の活発な活動により有機物が急速に分解され,ケイ酸塩鉱物は激しく風化を受けて塩基を急速に放出する。そのため土壌内を浸透する水の中には有機酸が乏しく,弱酸性ないし弱アルカリ性が保たれる。その結果,塩基やケイ酸が強度に溶脱され,鉄やアルミニウムの含水酸化物が残留して相対的に富化する作用に対して,ラテライト化作用という用語が用いられた。しかしラテライトの形成過程,すなわちプリンサイトが硬化してラテライトとなる過程との混同を避けるため,最近では土壌生成作用を示す用語としてはあまり用いられず,その代りに鉄アルミナ富化作用と呼ばれるようになってきている。
湿潤熱帯に広く分布する土層の厚い赤色味の強い土壌。風化と鉄アルミナ富化作用を強く受けやすい風化性鉱物はほとんどなく,粘土はカオリン質で酸化鉄,アルミナの相対的富化が特徴的である。粘土は酸化鉄,アルミナで被覆されているため粘土の移動,集積はみられない。風化殻としてのラテライトと区別するために,ケロッグC.E.Kelloggはラトソルlatosolと呼ぶことを提案(1949)した。アメリカ合衆国の新分類によるオキシソルOxisols,FAO/UNESCO分類のフェラルソルFerralsolsなどにほぼ相当する。
執筆者:永塚 鎮男
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サバナ地域で、地表付近にれんがのように固まった鉄・アルミナの集積物。紅土ともいう。熱帯地方の高温多雨気候のもとで風化が十分に行われると、土壌の母材中の主要な成分であったケイ酸塩類が分解されてケイ酸が分離流下し、鉄・アルミニウムの酸化沈積物がほとんど土壌の全層を占めるようになる。サバナでは雨期に激しい加水分解によってカリウムやカルシウムの塩基類が完全に溶脱したあと、乾期に土壌水分の急激な上昇がおこり、地表付近に鉄やアルミニウムの三二酸化物が集積する。これが固い盤層を形成しクラスト(殻)となって、ラテライトとよばれる物質となる。鉄酸化物がヘマタイト(赤鉄鉱)であれば赤みの強いれんが状の塊で紅土ともよばれるのにふさわしいが、アルミニウムの含量が多いものは灰褐色を呈している。
ラテライトは土層内に生じた土壌物質の一つであるが、植物養分を欠き、耕作を不可能にする固い膠着(こうちゃく)物で、開発の障害となるが、その固さを利用して建築材料に用いたのがインドなどでの習慣であった。アルミニウムに富む場合はボーキサイトとよばれる鉱床となり、インド、東南アジア、アメリカなどのアルミニウム資源の産地を形成している。
[浅海重夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…なお西南日本の暖温帯地域に広く分布している赤色土は,過去の地質時代(更新世)の亜熱帯的気候条件下で生成した赤色土が残存した古土壌である。 年間を通じて高温・多湿な熱帯雨林気候帯ないし熱帯モンスーン気候帯に広く分布している成帯性土壌型はラテライト性赤色土である。この土壌はラトソル,フェラルソル,鉄アルミナ質土壌などともいわれ,アメリカの土壌分類体系ではオキシソル目に包含されている。…
※「ラテライト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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