ラフィアヤシ(読み)らふぃあやし(その他表記)raphia palm

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラフィアヤシ」の意味・わかりやすい解説

ラフィアヤシ
らふぃあやし
raphia palm
[学] Raphia

ヤシ科(APG分類:ヤシ科)トウ亜科ラフィアヤシ属の総称。ラフィアはギリシア語のraphisに由来し、針の意味で、葉脈葉柄に毛刺または剛刺があることによる。熱帯アフリカ、マダガスカル島マスカリーン諸島に38種、熱帯アメリカに1種分布する。幹は直立し高さ2~10メートル、径1メートル。幹肌に狭い環紋(葉痕(ようこん))が残る。葉は濃緑色の羽状葉で斜め上に伸張し、15~18メートル、葉並びは乱れている。幹は比較的低いのに対し、葉冠は巨大である。葉柄は赤褐色で長さ4メートル、径2.5センチメートル。円い軸をなし、葉鞘(ようしょう)にかけて上面が深い溝になり、幹を包囲している。小葉は200対くらいあり、表面は濃緑色裏面灰白色で長さ0.6~1.5メートル、幅3~4センチメートルで先端は細くとがる。葉脈、葉縁などに毛状の刺針があり、小葉基部および葉鞘部に剛毛がある。

 肉穂花序は円柱状の雌雄同株(単性花または両性花が雑居する)で、葉鞘中から生じ、長さ2~4メートル。花柄はコップ状の包葉が連鎖状につき、花は包葉の腋(えき)につき、光沢のある褐色。ヤシの単性花としては他属とは逆に、雌花群が花序の枝先に近くつき、雄花のほうが基部に近くつく。雄花は長さ8ミリメートル、径5ミリメートルで、鐘状の萼(がく)内につき、花弁は先がとがったへら形で雄しべは6~9本、太い花糸に矢じり状の長い葯(やく)がある。雌花は長さ8ミリメートル、径5ミリメートル、先のとがった瓶形で全周が鱗片(りんぺん)で覆われ、柱頭円錐(えんすい)形で3裂する。果実卵形または楕円(だえん)形で、光沢の強い褐色の革質鱗片に覆われ、頂部にくちばし状の突起がある。果房は無数の果実をつけ、100~150キログラムに及ぶ。株は結実、完熟後枯死する1代1回結実種である。種子は光沢のある暗黄色で全面にしわがあり、胚乳(はいにゅう)はタンパク質の錯道質で硬く、胚は横にある。

 小葉の上面の表皮をはぎ、接木(つぎき)などの園芸用に古くから用いられ、葉鞘の硬質繊維をブラシなどに利用する。胚乳は角質なので工芸用になる。花序を切った切り口から得る樹脂で酒をつくる種類もある。植物園以外の庭園樹には不向きで、鉢植えには適さない。湿地でよく育ち、栽培温度は最低7℃。

 よく知られるのは次の2種である。ウラジロラフィアR. farinifera (Gaertn.) Hyl.(R. ruffia Mart.)はマダガスカル島原産。果実は卵形で長さ3~5センチメートル、径2.5~4センチメートル。葉柄の繊維、葉で紐(ひも)をつくる。サケラフィアbamboo palm, wine palm/R. vinifera Beauv.はナイジェリア原産。花柄の樹液から酒をつくり、胚乳を工芸品に用いる。葉は紐に、葉柄は竿(さお)材にする。

[佐竹利彦 2019年5月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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