ランチェスターの法則(読み)ランチェスターノホウソク

デジタル大辞泉 「ランチェスターの法則」の意味・読み・例文・類語

ランチェスター‐の‐ほうそく〔‐ハフソク〕【ランチェスターの法則】

戦闘による兵士の損耗率を、敵味方の兵数と武器の性能から計算した法則英国の自動車・航空技術者フレデリック=ランチェスター第一次大戦の記録から導き出した。刀剣などによる戦いでは攻撃力(敵を損耗させる能力)は兵数に比例するが、銃器や航空機などによる戦いでは攻撃力は兵数の2乗に比例するとした。→ランチェスター戦略
[補説]5人対2人の戦いを想定する。刀剣などによる白兵戦では、2人の軍が狭隘きょうあい地などで1対1の戦闘に持ち込めた場合、2人全滅(損耗率100%)と引き替えに敵兵2人の殺害(損耗率40%)を期待でき、攻撃力は兵数に比例する。一方、銃器などによる遠隔戦では、5人の軍の各兵士は「味方のうち5分の1の確率で狙われる」攻撃を敵2人から受けるため損耗率は40%(5分の2)だが、2人の軍は「2分の1の確率で狙われる」攻撃を敵5人から受けるため同250%(2分の5)となる。これは、2人の隊が全滅(損耗率100%)するまでに敵を16%しか損耗させられないことを意味し、攻撃力は兵数の2乗に比例している。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ランチェスターの法則」の意味・わかりやすい解説

ランチェスターの法則
ランチェスターのほうそく
law of Lanchester

イギリスの航空工学エンジニアである F.W.ランチェスターが発見した戦闘力と勝敗に関する法則で,次の2つの法則から成る。第1法則は,一騎打ちの法則と呼ばれ,空中戦騎馬戦のように1対1の戦闘の場合,損害双方の兵力数と武器の性能に依存すること,第2の法則は,集中効果の法則と呼ばれ,地上総力戦や確率兵器戦のような場合,損害は双方の兵力数の2乗比で大きくなることである。マーケティングでは,これらの法則をゲームの理論に応用したランチェスター戦略が展開されており,市場参入やテリトリー戦略,セールスマン戦略など,多くの分野に適用されている。

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流通用語辞典 「ランチェスターの法則」の解説

ランチェスターの法則

英国の航空工学者ランチェスターが第一次世界大戦の空中戦の資料基礎に、飛行機の数と損害の量との関係を計量的に研究して、確立した法則。戦闘の勝敗を決する法則として、一騎打ちの法則と集中効果の法則という2つの基本ルールで理論化されている。第二次世界大戦中、戦略として、また作戦研究として展開され、その後、企業が販売戦略として応用している。特に、資本力など物量的に大企業と大きな格差のある中小企業が、新製品開発や販売ネットワークづくりの戦略として参考にしている面も多い。

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マーケティング用語集 「ランチェスターの法則」の解説

ランチェスターの法則

第一次大戦から導き出された戦争理論のこと。2つの基本法則「一騎打ちの法則」と「集中効果の法則」がありマーケティング戦略にも応用されます。
市場を戦場とみなし、「弱者の戦略」と「強者の戦略」に分けて考えることができます。
弱者の戦略とは差別化の戦略で強者が目を向けないニッチ市場や細分化した市場において独自のブランドを築く戦略です。
一方、強者の戦略とは弱者の差別化を即座に踏襲する戦略で大きな経営資源を投入して、市場を支配してしまう戦略です。

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世界大百科事典(旧版)内のランチェスターの法則の言及

【オペレーションズリサーチ】より

…この集団は生理学者,数理物理学者,天体物理学者,数学者,陸軍士官,測量技師からなり,きわめて学際的な顔ぶれであった。またイギリスのランチェスターFredrick W.Lanchester(1868‐1946)は戦闘に関して有名なランチェスターの法則を導いた。すなわち,兵力x(t),y(t)の両軍が交戦している際,その兵数の変化は微分方程式dy/dxEx/yで表し,その解として二乗法則すなわちy02y2E(x02x2)をえた。…

※「ランチェスターの法則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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