日本大百科全書(ニッポニカ) 「リビエール」の意味・わかりやすい解説
リビエール
りびえーる
Jacques Rivière
(1886―1925)
フランスの批評家。ボルドー生まれ。1910年『NRF(エヌエルエフ)』編集部に入社、19年以降、死去するまで同誌編集長として、文学・芸術の新動向紹介、作家発掘に鋭い感覚を示した。『エチュード』(1912)、『モラリスムと文学』(1912)、『新エチュード』(1947)に収められた評論は、ジッド、クローデル、プルーストら傾倒する作家の作品理解と同時に、自分の生き方を見つめようとする真摯(しんし)な姿勢に貫かれている。とくに同世代の文学的形成を語りながら、第一次世界大戦直前期における新しい可能性をはらむ小説の分析『冒険小説論』(1913。『新エチュード』に収録)は、文芸思潮史的に重要な意味をもつ。また義兄アラン・フルニエとの往復書簡は20世紀初頭の文学的青春の証言として興味深い。クローデルとの往復書簡は幼時以来のカトリック信仰とジッド的な生の享受の間に揺れ動く誠実な魂の苦悩を伝えている。ほかに小説『エーメ』(1922)などがある。
[清水 徹]
『渡辺一民訳『世界批評体系5 冒険小説論』(1974・筑摩書房)』