エーメ(その他表記)Marcel Aymé

改訂新版 世界大百科事典 「エーメ」の意味・わかりやすい解説

エーメ
Marcel Aymé
生没年:1902-67

フランスの小説家,劇作家。6人兄弟の末子としてヨンヌ県ジョアニーに生まれる。2歳で母を失い母方祖父母の家に引き取られるが,6歳のとき祖父も死に伯父の所に兄と移る。占領下のドイツで兵役を済ませたのち石工から外交員等を遍歴し新聞記者になったが,小説《ブリュルボア》によって1926年のルノード賞を受け,30年に小説《名のない町》でポピュリスト賞を受けたのをきっかけに作家生活に入った。《ブリュルボア》は,郡長になりながらアルコール中毒で浮浪者となって酒に溺れているブリュルボアを主人公に田舎町の生活を活写したものである。彼は写実的世界に奇抜な着想を持ち込み現実世界の重構造を巧みに示す作品を多く書き,第2次大戦後は《クレランバール》《他人の首》等社会批判の戯曲でも成功している。邦訳書の最初は《人生斜断記Derrière chez Martin》(1939)。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エーメ」の意味・わかりやすい解説

エーメ
えーめ
Marcel Aymé
(1902―1967)

フランスの小説家、劇作家。ブルゴーニュ地方のジョニーに蹄鉄(ていてつ)工の子として生まれる。早く母と死別、貧しく孤独な幼少年期を過ごし、兵役ののちパリに出て職を転々ジャーナリストとして働きながら小説に手をそめ『ブリュルボア』(1925)でデビュー。とくに『緑の牝馬(めうま)』(1933)が好評で、幻想と現実の入り混じった独自のスタイルを確立した。1932年に書いた戯曲『リュシエンヌと肉屋』が48年に上演されたのを機に第二次世界大戦後は劇作も始め、幻視者を主人公にした『クレランバール』(1950)を皮切りに、『他人の首』(1952)、『月の小鳥たち』(1956)、『ルイジアナ』(1961)、『ミノタウロス』(1963)、それに『るつぼ』(1954)などアーサー・ミラー作品の脚色を発表、その作風にいよいよ磨きをかけ、古典的な手堅さのうちにユーモアと風刺を織り込んだ新しいブールバール劇の書き手となった。

[渡辺 淳]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エーメ」の意味・わかりやすい解説

エーメ
Aymé, Marcel

[生]1902.3.29. ジョアニー
[没]1967.10.14. パリ
フランスの小説家,劇作家。若い頃からジャーナリストなど各種の職業に従事。処女作『ブリュールボア』 Brûlebois (1927) を経て,地方生活を皮肉で軽快なタッチで描いた『緑の牝馬』 La Jument verte (33) で一躍名声を得,以後,機知に富む詩情豊かな小説や戯曲を多数発表,中堅作家の一人に数えられた。手法は伝統的,写実主義的である。戯曲『クレランバール』 Clérambard (50) ,『月の小鳥たち』 Les Oiseaux de lune (56) ,小説『壁抜け男』 Le Passe-Muraille (42) ,『ウラノス』 Uranus (48) など。『鬼ごっこ物語』 Les Contes du chat perché (34~58) は児童文学の名作。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「エーメ」の意味・わかりやすい解説

エーメ

フランスの小説家,劇作家。石工など職を転々としながら独学,《緑の牝馬》《壁抜け男》など怪奇とユーモアの混じった独自な作品を発表。児童文学に《おにごっこ物語》,戯曲に,聖者が出現する《クレランバール》,小鳥になってしまう勉強嫌いの予備校生たちの話《月の小鳥達》,死刑を勝ちとり乾杯する検事が登場する《他人の首》等がある。
→関連項目センダック

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android