日本大百科全書(ニッポニカ) 「エーメ」の意味・わかりやすい解説
エーメ
えーめ
Marcel Aymé
(1902―1967)
フランスの小説家、劇作家。ブルゴーニュ地方のジョニーに蹄鉄(ていてつ)工の子として生まれる。早く母と死別、貧しく孤独な幼少年期を過ごし、兵役ののちパリに出て職を転々。ジャーナリストとして働きながら小説に手をそめ『ブリュルボア』(1925)でデビュー。とくに『緑の牝馬(めうま)』(1933)が好評で、幻想と現実の入り混じった独自のスタイルを確立した。1932年に書いた戯曲『リュシエンヌと肉屋』が48年に上演されたのを機に第二次世界大戦後は劇作も始め、幻視者を主人公にした『クレランバール』(1950)を皮切りに、『他人の首』(1952)、『月の小鳥たち』(1956)、『ルイジアナ』(1961)、『ミノタウロス』(1963)、それに『るつぼ』(1954)などアーサー・ミラー作品の脚色を発表、その作風にいよいよ磨きをかけ、古典的な手堅さのうちにユーモアと風刺を織り込んだ新しいブールバール劇の書き手となった。
[渡辺 淳]