ルカーチ(読み)るかーち(英語表記)György Lukács

デジタル大辞泉 「ルカーチ」の意味・読み・例文・類語

ルカーチ(Lukács György)

[1885~1971]ハンガリー哲学者文学史家。ドイツで哲学・美学を学んだのち帰国。1918~1919年のハンガリー革命に参加し、革命失敗後、亡命。第二次大戦後再帰国。マルクス主義の立場からの文芸評論が多い。著「歴史と階級意識」「若きヘーゲル」「理性の破壊」など。

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精選版 日本国語大辞典 「ルカーチ」の意味・読み・例文・類語

ルカーチ

(Lukács György ━ジェルジュ) ハンガリーの文学史家、美学者、哲学者。ドイツに留学しヘーゲル哲学に親しむ。一九一八年のハンガリー革命に参加後、ソ連に亡命し、第二次世界大戦後帰国。マルクス主義の立場に立って文学史・思想史・美学を研究した。著「歴史と階級意識」「若きヘーゲル」「理性の破壊」など。(一八八五‐一九七一

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルカーチ」の意味・わかりやすい解説

ルカーチ
るかーち
György Lukács
(1885―1971)

ハンガリーのマルクス主義哲学者、文学史家。ブダペストの名家の生まれ。ブダペスト大学で文学博士号をとり、ベルリン大学でジンメルに、ハイデルベルク大学でM・ウェーバーに師事した。のち思想的転機を経て、1918年に共産党入党し、ベラ・クンを中心とするハンガリー・ソビエト共和国樹立に際しては、文化教育相を務めた。地下運動の問題でクンと対立し、彼は『歴史と階級意識』(1923)で自己の立場を明らかにしたが、「偏向」とみなされ、党の中央を追われた。

 しかし、ヒトラー登場後、モスクワに亡命し、自己批判を重ねて科学学士院の哲学研究所で美学、文学史を研究。1944年ハンガリーに帰国し、大著『若きヘーゲル』(1948)、『理性の破壊』(1952)を著した。1956年の動乱にはペトウィ団の指導者として反ソ派の立場をとり、一時はナジ政権の文化相を務めたが、ルーマニアに追放された。1957年許されてブダペストに帰り、以後美学研究に専念した。

 彼の哲学は、ソビエト系のマルクス主義とは著しく異なっている。第一に、自然弁証法を認めず、社会的実践を通じての主観・客観の合一という立場をとること。第二に、経済決定論に対して前衛の理想的先駆性を重視し、プロレタリアートの自己認識において、疎外からの回復を図るという構想をもつこと。第三に、反映論の立場をとらず、思惟(しい)の働きを含むものとしての、生成する実在がプロレタリアートの運動を媒介として、全体性としての真理を実現すると考える点である。しかし、第二次世界大戦後はソビエト系の考え方への接近を示してもいる。著書にはほかに『ドイツ文学小史』(1945~1947)、『実存主義かマルクス主義か』(1948)などがある。

[加藤尚武 2015年11月17日]

『小場瀬卓三他訳『ドイツ文学小史』(1951・岩波書店)』『城塚登他訳『実存主義かマルクス主義か』(1953・岩波書店)』『ジョルジ・ルカッチ著、良知力・池田貞夫他訳『美と弁証法』(1970・法政大学出版局)』『国松孝二・川村二郎他訳『ルカーチ著作集』全13巻(1986~1987・白水社)』『パーキンソン著、青木順三・針谷寛訳『ルカーチ』(1983・未来社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ルカーチ」の意味・わかりやすい解説

ルカーチ
Lukács György
生没年:1885-1971

ハンガリーの哲学者,美学者。いわゆる〈西欧的マルクス主義〉の代表者。ブダペストの銀行家の家に生まれ,はじめ故国で演劇運動に携わったが,ドイツではジンメル,ウェーバーに学び,エッセー集《魂と形式Die Seele und die Formen》(1911),ジャンルの変化の歴史哲学的考察《小説の理論Die Theorie des Romans》(1915)で頭角を現し,E.ラスクと並ぶ新進思想家として注目される。ハンガリー革命に当たってブダペストに帰り,革新的知識人のリーダーとして文化革新運動に挺身,1918年にはハンガリー共産党に入党して,クン・ベーラ政権の教育文化相となるが,挫折後ウィーン,ベルリン等に亡命。この間,批判的マルクス主義の記念碑的名著といわれる《歴史と階級意識Geschichte und Klassenbewusstsein》(1923)を著す。これはマルクスの疎外論の動機を再発見するとともに,マルクス主義を西欧哲学の中心概念によって基礎づける画期的なものであったが,党の正統派からは修正主義として非難を浴びた。33年のナチス政権獲得後はモスクワに亡命,科学アカデミー哲学研究所に属して文学史,美学等の研究に従事,市民的リアリズム,前衛芸術の位置づけに関しゼーガース,ブロッホ,ブレヒトらといわゆる〈表現主義論争〉をおこす。戦後ハンガリーに帰ってブダペスト大学教授となり,実存主義との論争や,ヘーゲル哲学の形成への経済学の影響を指摘した《若きヘーゲルDer junge Hegel》(1948),ナチスを準備した近代の西欧哲学の非合理主義を批判した《理性の崩壊Die Zerstörung der Vernunft》(1954)等により,東側の代表的思想家の地位を確立する。しかしたび重なる自己批判にかかわらず,ハンガリー事件等のたびに党側からは非難を受け,晩年は美学,存在論等の著述に没頭した。
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百科事典マイペディア 「ルカーチ」の意味・わかりやすい解説

ルカーチ

ハンガリーの哲学者,美学者。若くしてドイツに留学,ジンメル,M.ウェーバーらに学んだ。1918年ハンガリー革命では教育人民委員となったが,革命失敗後ウィーンからモスクワへ亡命。1945年帰国して,ブダペスト大学教授。1956年のハンガリー事件ではナジ政権の教育人民委員となったが,政権崩壊後は著作に専念した。現代における批判的マルクス主義の代表的理論家。主著《小説の理論》(1915年),《歴史と階級意識》(1923年),《理性の崩壊》(1954年)など。
→関連項目疎外針生一郎マルクス主義マンハイム

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルカーチ」の意味・わかりやすい解説

ルカーチ
Lukács György

[生]1885.4.13. ブダペスト
[没]1971.6.4. ブダペスト
ハンガリーの哲学者,文芸理論家。ブダペスト,ベルリン,ハイデルベルクの各大学で美学,歴史を学ぶ。 1918年ハンガリー共産党員となり,革命運動に加わったが,失敗してウィーンに逃れ,さらにベルリン,モスクワなどに滞在,マルクス=エンゲルス=レーニン研究所所員となる。第2次世界大戦後ハンガリーに戻り,ブダペスト大学教授。ヨーロッパの文学に関する広範な知識と深い美学的素養を有するマルクス主義文芸理論の代表的存在。主著『小説の理論』 Die Theorie des Romans (1920) ,『歴史と階級意識』 Geschichte und Klassenbewusstsein (23) ,『実存主義かマルクス主義か』 Existentialisme ou Marxisme? (48) ,『理性の破壊』 Die Zerstörung der Vernunft (54) 。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ルカーチ」の解説

ルカーチ
György Lukács

1885~1971

ハンガリーの哲学者。ドイツに学び,帰国後共産党に入党,1919年にハンガリー・ソヴィエト共和国の教育文化相となる。ハンガリー革命崩壊後ウィーンに亡命,『歴史と階級意識』などを著すが,党主流からは批判される。33年ソ連に亡命。第二次世界大戦後帰国し,ブダペシュト大学教授となる。『若きヘーゲル』や『理性の崩壊』などを著してマルクス主義哲学者として活躍し,56年のハンガリー事件に際してはナジ政府に参加。思想的にも政治的にも党の教条主義的主流からは批判を受け続けた。

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世界大百科事典(旧版)内のルカーチの言及

【社会思想】より

社会科学【城塚 登】。。…

【ドイツ文学】より

…【神品 芳夫】。。…

【表現主義】より

十二音音楽無調音楽【佐野 光司】。。…

【物象化】より

疎外【広松 渉】。。…

【弁証法】より

…【広松 渉】。。…

【弁証法的唯物論】より

弁証法マルクス主義【広松 渉】。。…

【マルクス主義】より

…【森 時彦】。。…

【ミメーシス】より

…【山田 登】。。…

【歴史小説】より

…【小池 滋】。。…

※「ルカーチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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