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歴史と階級意識 れきしとかいきゅういしきGeschichte und Klassenbewußtsein

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

歴史と階級意識
れきしとかいきゅういしき
Geschichte und Klassenbewußtsein

ハンガリーのマルクス主義哲学者 G.ルカーチが 1923年に発表した書物。当時マルクス主義は硬直した素朴唯物論と教条主義に堕落しており,ルカーチはその弊害を「物像化」概念に注目しつつマルクスをヘーゲル的に読直すことにより克服しようとした。商品という形で物が生産される資本主義社会においては,本来,人間と人間の関係である社会関係が物と物との関係として立現れ,それが自立した制御できない力となって人間に対立し,意識を規定する。だが商品生産をみずからがになっているプロレタリアートは,みずからの社会的存在を自覚することによってこの搾取と欺瞞の構造に終止符を打ち,団結と革命的実践により歴史の新次元を開くことができるとする。この書物は西洋マルクス主義における疎外論と人間学への関心を開く端緒となっただけでなく,実存主義や近代合理主義批判に対しても多大の影響を与えた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

歴史と階級意識
れきしとかいきゅういしき
Geschichte und Klassenbewusstsein

ハンガリーの哲学者ゲオルク・ルカーチの代表作。本書は、1923年の公刊以来、さまざまに論評されてきた。いわく、主体・客体同一説的弁証法、疎外論を思わせる物象化論、弁証法的唯物論に反対する史的唯物論主義、ロマン主義的な全体性論、等々。本書の主題は、第一次世界大戦後、西欧の運命について絶望的な雰囲気が流れるなかで、歴史の全体性をいかにとらえるかという高らかなものであった。そのためには、現代社会において物象化されているプロレタリアートの立場にたつことである。商品形態の登場によって、歴史は主体と客体に分離せしめられた。プロレタリアートは客体の位置にあり、だからこそ、分離された主体と客体とをふたたび同一にもたらす役割を担いうるのだというのである。プロレタリアートの意識的実践を強調する本書は、1924年、コミンテルンによって観念論的逸脱と批判された。にもかかわらず、本書は西欧マルクス主義の古典として、1920年代以降の思想に大きな影響を与えてきた。[清水多吉]
『城塚登他訳『歴史と階級意識』(1968・白水社) ▽林誠宏・吉田浩司編注『歴史と階級意識』(1980・昭和堂)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

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