ヒートポンプ(その他表記)heat pump

翻訳|heat pump

デジタル大辞泉 「ヒートポンプ」の意味・読み・例文・類語

ヒート‐ポンプ(heat pump)

水・空気などの低温の物体から熱を吸収し、高温の物体に与える装置冷暖房蒸発装置などに応用。熱ポンプ
[補説]ヒートポンプの内部では、アンモニア二酸化炭素などの冷媒が、減圧されて低温になる状態と加圧されて高温になる状態を繰り返しながら循環している。これを暖房給湯に利用する場合は、低温の冷媒を外気や水などと間接的に接触させて熱を取り込み、さらに冷媒をコンプレッサーで圧縮して高温にしてから、室内の空気や給湯用の水を温める。冷房・冷蔵に利用する場合は逆に、高温の冷媒を外気などと間接的に接触させて熱を放出し、さらに膨張弁で減圧して低温にしてから、室内や冷蔵庫内の空気を冷却する。電力などの動力は主にコンプレッサーを駆動するために消費されるが、その消費量に比べてより大きな熱量を得ることができる。このように冷媒を圧縮して循環させる方式(圧縮式)のほか、水などの冷媒が臭化リチウムなどの吸収剤に蒸発吸収されるときの気化熱を利用する方式(吸収式)もある。

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精選版 日本国語大辞典 「ヒートポンプ」の意味・読み・例文・類語

ヒート‐ポンプ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] heat pump ) 低温部から熱量を吸収し、高温部に運んで放出する装置。冷暖房などに利用される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒートポンプ」の意味・わかりやすい解説

ヒートポンプ
ひーとぽんぷ

空気や水などの低温の物体から吸収した熱を、外から動力を加えることで、高温の物体に与える機械。熱ポンプともいう。通常、熱は、高温側から低温側に伝わるものであるが、ヒートポンプは外部から動力を加えることによって、その逆を実現し、低温側から、高温側に熱を与えることができる。ヒートポンプは熱のポンプであり、これは、水が通常では高い位置から低い位置に流れるところを、外部から動力を加えることによって低い位置から高い位置に流すことができる水のポンプと類似する。

 ヒートポンプは、1800年代にオーストリアのピーター・リッター・フォン・リッティンガーPeter Ritter von Rittinger(1811―1872)によって初めて開発された。ヒートポンプを用いると、低温側は熱を奪われて冷やされ、高温側は熱を得て、加熱されることとなる。低温側を用いれば、冷凍機や冷蔵庫、エアコンの冷房用としての利用が可能であり、高温側を用いれば、エアコンの暖房用や給湯機としての利用が可能となる。ヒートポンプはマイナス100℃の低温域から200℃の高温域まで広範囲な利用を可能とする。

 ヒートポンプは、蒸発器圧縮機凝縮器、膨張弁を主要要素として構成され、機器内を動作流体である冷媒が循環している。低温側の流体である空気や水は、蒸発器で気化することとなる低温・低圧の冷媒に間接的に熱を奪われ、冷却される。熱を奪って気化した冷媒は、電力で駆動される圧縮機へ送られるとともに圧縮され、高温・高圧となる。凝縮器では、この冷媒により高温側の流体である空気や水などが加熱される。ここで冷媒は液化する。その後、膨張弁を通過することにより、低温・低圧となり、ふたたび蒸発器に送られる。この動作を継続することによって機器の連続運転が可能となる。機器全体としてみれば、低温側の流体から熱を奪い、外部から電力を加えることによって高温側の流体を加熱していることとなる。

 給湯機として用いる場合には、エコキュートという名で商品化されている。低温側の大気中の空気の熱を利用して高温側の湯を加熱生成する給湯システムの愛称である。エコキュートは関西電力の登録商標であるが、各電力会社や給湯機メーカーも使用している。このように空気の熱を使うことから再生可能エネルギーを利用した機器ともみなされている。エコキュートは、冷媒として自然冷媒である二酸化炭素を利用している。10MPa(メガパスカル)程度の高圧状態で約100℃の高温になる二酸化炭素の特性を利用して水を沸かす装置で、ヒートポンプユニットと貯湯ユニットで構成されている。ヒートポンプユニットでは、最高90℃ほどの熱湯が生成でき、貯湯ユニットで貯蔵し、従来の電気温水器と同様の方法で蓄える。機器の駆動により消費電力が削減され、発電所などで間接的に排出される二酸化炭素の量を大幅に削減できる大きな利点がある。このため、脱炭素化を可能とする熱利用技術として世界的に注目されている。

[齋藤 潔 2025年8月19日]

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百科事典マイペディア 「ヒートポンプ」の意味・わかりやすい解説

ヒートポンプ

低温の熱を集めて圧縮または吸収し,高温の熱に換えて冷暖房を行うサイクル状のポンプ。冷媒として液化ガス,水などを用いる。ポンプの動力には電気が必要だが,冷暖房の直接の熱源として河川水,地下水,下水,清掃工場や地下鉄の排熱といった未利用エネルギーを使用するため,経済性が高い。 以前から使用されてはいたが,最近になって蓄熱タンクと組み合わせたシステムが開発され,オフィスビルなどに普及し始めた。これはヒートポンプによって夜の間に冷水や温水を作って蓄え,それを使って昼間の冷暖房を行うシステムで,夜間電力を使用するためランニングコストを低く抑えることができる。また,地域熱供給におけるヒートポンプの利用も進められている。
→関連項目COP

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化学辞典 第2版 「ヒートポンプ」の解説

ヒートポンプ
ヒートポンプ
heat pump

外から仕事を与えることにより,熱を低いところから高いところに移動させる装置.原理的には媒体の相変化を利用して吸熱・放熱を行うもので,蒸気圧縮式,吸収式,蒸気噴射式,およびケミカル式がある.蒸気圧縮式は圧縮機凝縮器,膨張弁,蒸発器とそれらを接続する配管から構成される.まず,作動流体は気体の状態で圧縮機により圧縮され,圧力と温度が上昇する.次に,この高圧・高温気体は凝縮器において高温側の周囲に熱を与えて液化する.さらに,高圧液体の作動流体は,膨張弁を通すことにより圧力と温度が低下し,蒸発器で低温側の周囲から熱をもらい蒸発する.これを繰り返すことにより,低温側の周囲から高温側の周囲へ熱を移動させることができる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒートポンプ」の意味・わかりやすい解説

ヒートポンプ
heat pump

熱ポンプ。低温の熱源から熱を吸収し,高温の熱源を加熱する装置で,暖房や溶液の濃縮,乾燥などの目的に用いられる。ポンプで水を低所から高所へ汲上げるように,熱を低温から高温へ輸送することからこの名がつけられた。原理的には冷凍機と同じものであるが,冷凍機が低温熱源から熱を奪うことを目的としているのに対し,ヒートポンプは低温熱源から吸収した熱量で高温熱源を加熱することを目的としており,高温熱源に与えられる熱量は,低温熱源で吸収した熱量とヒートポンプ作動に費やされた動力 (電力) の和となり,同じ電力をヒータに用いて発熱させた場合に比べて,常に大きな熱量を高温熱源に与えることができる。ヒートポンプは,同じ装置を夏は冷房,冬は暖房に用いることができる。

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リフォーム用語集 「ヒートポンプ」の解説

ヒートポンプ

冷凍機の原理を応用して冷媒ガスをコンプレッサーで強制的に気化または液化させることにより熱を放出・吸収させて暖冷房する空調方式。ガスエンジンで動かすガスヒーポンと、コンプレッサーをモーターで動かす電気式があり、家庭用のシステムも普及しつつある。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヒートポンプ」の意味・わかりやすい解説

ヒートポンプ
heat pump

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「ヒートポンプ」の解説

ヒートポンプ【heat pump】

低温の物体から熱を吸収し、高温の物体へその熱を移動させる装置。冷暖房、給湯機などに応用される。燃焼をともなわないため、二酸化炭素の排出削減にもつながる技術。◇「熱ポンプ」ともいう。

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栄養・生化学辞典 「ヒートポンプ」の解説

ヒートポンプ

 熱ポンプともいう.温度の低い側から,高い側へ,熱を移動させる装置.高い側の熱を利用でき,また,低い側は冷却に用いることができる.

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世界大百科事典(旧版)内のヒートポンプの言及

【熱ポンプ】より

…ヒートポンプともいう。外気や地下水,川水,海水,排水その他の低い温度の熱源から高い温度の熱源に熱をくみ上げる装置。…

※「ヒートポンプ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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