レックリングハウゼン病(読み)レックリングハウゼンびょう(英語表記)Recklinghausen disease

  • (子どもの病気)
  • (皮膚の病気)
  • Von Recklinghausen&apos
  • s disease
  • レックリングハウゼンびょう〔ビヤウ〕
  • レックリングハウゼン病 Recklinghausen's Disease
  • レックリングハウゼン病 Recklinghausen’s disease

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

フォン・レックリングハウゼン病,あるいは多発性神経線維腫症ともいう。中枢神経系または末梢神経系の多発性腫瘍皮膚色素沈着 (カフェオレ斑) ,精神神経症状,異常その他の奇形を伴う系統的な疾患母斑症に包含される。不完全優性遺伝とされているが,突然変異で発生する例もある。神経の腫瘍は,神経鞘から発生する神経線維腫で,大きさは粟粒大から鶏卵大に及ぶ。腫瘍が大きくなったり,痛みを生じたり,悪性化を認めた場合には,外科的に切除する。 F.フォン・レックリングハウゼンはドイツの病理学者 (1833~1910) 。

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家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 人口1万人あたり3~4人に出現する、頻度の高い優性遺伝性の病気です。患者さんがまったく健康な人と結婚しても、子どもの約半数に遺伝します。両親にまったく異常がなくても、突然変異によってこの病気になることもあります。
 乳幼児期にはミルクコーヒー色をした色素斑(しきそはん)だけですが、ふつうは小さな点状の色素斑と鶏卵大の色素斑が入りまじって現われます。乳児期から鶏卵大の色素斑が6~7個以上みられるときはこの病気を疑います。
 10歳代後半に、指先大の、押すと皮膚にもぐり込むような柔らかい皮膚腫瘍(ひふしゅよう)が多数できてきます。これが神経線維腫(しんけいせんいしゅ)で、この病気を神経線維腫症(しんけいせんいしゅしょう)と呼ぶこともあります。年を重ねるにしたがってその数は増え、ときには無数になります。大きさも形もさまざまで、扁平(へんぺい)で大きく柔らかい腫瘍が台形状に隆起したり、リンゴ、メロン、ときにはスイカほどの大きさの腫瘍が垂れ下がることもあります。出現部位は皮膚に限らず、そのために四肢(しし)や脊柱(せきちゅう)が変形することもあります。
 体内の重要臓器のすぐそばに腫瘍ができると、その圧迫による変形や機能障害が現われます。
 中枢神経(ちゅうすうしんけい)の近くや内部に現われることもあります。ときに悪性化して神経線維肉腫(しんけいせんいにくしゅ)になることがありますが、この場合は生命にかかわります。
[治療]
 皮膚の色素斑に対してはとくに治療をしません。美容上の目的があれば、カバーマークで隠したり、レーザー治療を試みます。
 神経線維腫に対しては、出現部位と大きさ、圧迫症状の有無などによっては切除の必要もあります。また、定期的に入院し、皮膚の神経線維腫を一度にたくさん切除することもあります。

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世界大百科事典 第2版の解説

末梢神経および皮膚に神経繊維腫が多発する疾患であり,皮膚に色素斑なども伴う。1882年,ドイツの病理学者レックリングハウゼンFriedrich D. von Recklinghausen(1833‐1910)がはじめて記載した。常染色体性優性遺伝を示すが,遺伝関係の認められないものもある。思春期ころに症状が著しくなり,さまざまな大きさの数多くの腫瘤が皮膚に出現し,圧痛を示すものもある。皮膚にみられる色素斑はミルクコーヒー斑café au lait spotと呼ばれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

常染色体性優性の代表的な遺伝病で、神経線維腫(しゅ)症1型ともよばれる。一種の腫瘍(しゅよう)抑制遺伝子に異常がある。皮膚の色素性病変と多発性の神経線維腫を主徴とする母斑症で、1882年ドイツの病理学者レックリングハウゼンFriedrich Daniel von Recklinghausen(1833―1910)が初めて記載した疾患である。人口1万当り3、4人の頻度でみられるが、両親とも保因者でなくても突然変異でおこることもある。乳児期に主として胴や手足に淡褐色の色素斑が多数現れ、学童期以後には指先ぐらいの軟らかい皮膚腫瘍がみられ、すこしずつ増加してときには1000個以上になることもある。また、大きな塊となって垂れ下がることもある。末梢(まっしょう)神経に神経線維腫ができると、硬い塊となって痛みがおこり、悪性化することもある。特定疾患(難病)に指定されている。[川村太郎・土田哲也]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

 レックリングハウゼン病は母斑症のひとつで、優性遺伝(ゆうせいいでん)形式を示す先天性疾患です。日本における発生頻度は約3000人に1人と考えられています。17番染色体上の遺伝子異常で起こることが証明されています。

 生まれた時から皮膚にミルクコーヒー様のあざ(カフェオレ斑)が6個以上みられれば、この病気の可能性が高いとされています。また、思春期ごろから皮膚に大小の軟らかい腫瘍(神経線維腫(しんけいせんいしゅ))が少しずつできてきます。個人により、その大きさや数はさまざまです。皮膚以外では眼や骨の異常などを認めることがありますが、やはり個人差があります。

 皮膚の神経線維腫は、美容的あるいは機能的な目的で手術を行うことがあります。レックリングハウゼン病と診断された場合は、眼や骨の異常も含めて起こりうるさまざまな症状に対処していくため、定期的に医師の診察を受け、経過を観察してもらうことが必要です。

どんな病気か

 従来、神経線維腫(しんけいせんいしゅしょう)と呼ばれていたものが遺伝子診断の発達により1型と2型に分けられて、レックリングハウゼン病は1型を指すようになりました。遺伝子の異常に違いがあり、1型は皮膚症状が強く出るタイプで、2型は脳腫瘍(のうしゅよう)などが強く出るタイプと考えてよいようです。

 レックリングハウゼン病は遺伝病で常染色体優性(じょうせんしょくたいゆうせん)遺伝ですが、両親にこの症状がない場合もあります。

 日本での患者数は人口10万人に30~40人とされ、単一の遺伝病としては頻度が高い部類に入ります。

 出生直後は茶褐色の平らな斑(カフェオレ斑)が複数個以上みられるだけです。とくに6個以上あると、この疾患の可能性が考えられます。児童期~思春期前後から、程度の差はあれ、体のさまざまな部位に数㎜~数十㎝にわたる大小さまざまな軟らかな皮下腫瘤(ひかしゅりゅう)神経線維腫)が現れてきます(図72)。数が次々と無数に増える場合と、ゆっくり増える場合とがあります。場合によっては巨大化し、皮膚面からぶらさがるように大きくなることもあります。時に皮下腫瘍が悪性化する場合もあり、その例では致命的になります。

 内臓の変化はさまざまで、脊椎(せきつい)側弯(そくわん)、眼の変化、脳腫瘍、脊椎神経の神経線維腫、知能障害、呼吸器の病変、循環器の病変、消化管の病変などがあります。ただしこの変化も程度がさまざまで、すべての症状があるわけではありません。とくに脳腫瘍は1型では少なく、2型では聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)を中心としたものが多くみられます。2型の場合は皮膚の症状は1型に比べ少ないようです。

検査と診断

 生後に気づいた茶褐色の平らなあざが多い場合は、注意深く経過をみます。次第に皮下腫瘤が現れてくるので診断は容易です。内臓病変などの検査は画像診断(X線、CT、MRIなど)によることが多くなります。

治療の方法

 基本的に遺伝的疾患なので、対症療法になります。神経線維腫の増加が抗アレルギー薬の内服を続けると抑制されるという報告もありますが、まだ一般的ではありません。

 皮膚の病変は主に神経線維腫(しんけいせんいしゅ)の見た目の問題を考え、気になるところを切除していきます。しかし数があまりに多いため、一度に200個以上の腫瘤(しゅりゅう)を切除しても、あまり見た目が変わらない場合もあります。ただ急激に腫瘤が大きくなる場合は悪性化の可能性があるため、病理組織診断を兼ねて早めに切除したほうがよいでしょう。

 内臓の病変に対してはそれぞれの変化、症状に応じて対処が必要になります。

病気に気づいたらどうする

 生まれつきの茶褐色斑が数個以上ある場合は、早めに専門医に相談してください。この場合、皮膚の変化が強いと皮膚科や形成外科を、神経病変が強いと脳神経外科や神経内科を受診するケースが多いと思います。いずれの科を受診しても、長い経過をみながら各病状の変化に対し適宜対応することになります。また遺伝相談が必要な場合もあり、まずは担当医と相談してください。

安田 浩


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