翻訳|log
船の速力や航走した距離を計測する装置の総称。測程儀ともいう。航走中の船の速力を測るもっとも簡単な方法は、船首の斜め前方に丸太を投げ込み、船首から船尾まで通過する時間を計ることである。船の長さはわかっているので速力が求められる。この方法はダッチマンズログDutchman's logといわれて古くから使われていたので、丸太の英語訳ログがそのまま船の速力計測器の名称となった。帆船の全盛時代には、扇形の板に紐(ひも)をつけた凧(たこ)のような手用測程儀hand logが用いられるようになった。これを海中に投入し、ログラインとよぶ紐を航走に応じて自由に繰り出してゆけば、扇形板は水の抵抗で同じ位置に止まっているので、一定時間の紐の長さから船速が求められる。時間を計る砂時計には、速力5ノット以下の場合に用いるロンググラスlong glass28秒計と、5ノット以上の場合のショートグラスshort glass14秒計がある。ログラインにつけた結び目knotの数からただちに船速がわかる。船速の単位ノットはこの結び目に由来する。さらに時代が下ると、船の航走によって生じる水流でプロペラを回転させ、回転数が船速に比例することから速力を求める回転翼式ログ、水流の圧力をピトー管で測る動圧式測定機が現れ、近年まで使用されてきた。
最近では電子技術によるより精密なログが主流を占めている。その一つが電磁ログである。これは、導体が磁界を横切って運動するとき、導体に起電力が発生するというファラデーの電磁誘導の法則の応用で、船底から電磁石と電極からなるセンサーを出しておき、船の航走による水流がこの磁界を横切ることによって電極の間に生じる電圧を測定し、速力を求める。
ほかの一つはドップラーログで、船の航走による音波のドップラー効果を利用する。いま周波数ftの音波を船の前方に水平よりθ度の伏角で海底に向けて発射すると、海底から反射されてくる音波の周波数frはドップラー効果を受けるので、次の式が成立する。
fr-ft=(2ftυcosθ)/cv
は船速、cは水中音速、frは測定値で、ft、c、θは既知であるから、この式によってvが求められる。ドップラーログは、ドップラーソナー、ドッキングソナーなどとよばれることもあるが、いずれも同一原理の船の速力を計る装置である。
[飯島幸人]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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