ロビンソンクルーソー(その他表記)Robinson Crusoe

翻訳|Robinson Crusoe

デジタル大辞泉 「ロビンソンクルーソー」の意味・読み・例文・類語

ロビンソン‐クルーソー

《原題The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoeデフォー長編小説。1719年刊。難破して無人島に漂着したロビンソンクルーソーが、信仰心と合理的な創意工夫自給自足生活を築いていく物語。写実的な描写うちに当時の社会の理想的人間像を描いた、イギリス小説の先駆的作品

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精選版 日本国語大辞典 「ロビンソンクルーソー」の意味・読み・例文・類語

ロビンソン‐クルーソー

  1. ( 原題[英語] The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe, of York, Mariner ) 長編小説。デフォー作。一七一九年刊。船乗りロビンソン=クルーソーが難破して無人島に漂着し、さまざまな生活の工夫をして島の孤独な歳月に耐え、先住民フライデーを友とし、ついに故国に帰るまでを描く。ロビンソン漂流記

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改訂新版 世界大百科事典 「ロビンソンクルーソー」の意味・わかりやすい解説

ロビンソン・クルーソー
Robinson Crusoe

イギリスの小説家D.デフォーの小説。1719年刊。正式タイトル《ロビンソン・クルーソーの生涯と奇しくも驚くべき冒険The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe》。その写実的手法のゆえに近代イギリス小説の原点と評される。17~18世紀に流行した多くの航海記や,チリ沖のフアン・フェルナンデス諸島に漂着し,5年間孤島生活を送ったというアレクサンダーセルカークなる人物の実話に刺激されて作られた。商人の息子ロビンソンは父の忠告に反して船員となり,さまざまな苦労ののち,無人島に漂着,28年間,最初は1人で,のちには従僕フライデーとともに自給自足の生活を送り,最後には救出されて帰国する。この作品の成功によって,同年続編も出版された。

 この物語は単なる冒険小説ではなく,宗教的寓意があることも重要である。つまり,父に背いて罪を犯した人間が罰せられ,苦しみ,悔い改め,最後に救われるという当時のピューリタンの伝統にそった〈霊的自伝〉でもある。また,限られた物資のなかで生活を築いていくロビンソンの姿は,後世マルクスやウェーバーらの考察するところともなった。たとえばウェーバーは,ロビンソンの現実的・合理的行動様式に〈資本主義の精神〉に照応する目的合理的思考を読みとっている。《ロビンソン・クルーソー》はイギリスだけでなく広く読まれており,この物語をまねた漂流記も多く作られた。ドイツ語には〈ロビンソン・クルーソーもの〉を意味する〈ロビンゾナーデRobinsonade〉という言葉も生まれ,フランス語の俗語〈ロバンソンrobinson〉はロビンソンが用いていたような大型こうもり傘を意味する。日本では早くも幕末にオランダ語訳からの重訳が出版されたが,原文からの翻訳としては井上勤《絶世奇談 魯敏遜(ロビンソン)漂流記》(1883)が初期のものとしては注目に値する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロビンソンクルーソー」の意味・わかりやすい解説

ロビンソン・クルーソー
ろびんそんくるーそー
The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe

イギリスの作家デフォーの長編小説。原題は『ロビンソン・クルーソーの生涯と不思議な驚くべき冒険』。1719年刊。同年に続編が出た。ヨーク生まれのクルーソーは父の忠告を振り切って冒険航海に出る。出航まもなく大嵐(おおあらし)が前途を予告するように彼を襲うが、それにも懲りないでついに難破し、28年にわたって孤島で生活することになるが、人を寄せ付けない自然を、残されたわずかの道具を用いて住みやすいように改造し、家をつくり穀物を栽培してたくましく生き抜く話が中心となっている。これまでのロマンス風の散文物語と異なり、平易な文章を駆使して写実的に描くところに特色があり、苦難に支配されずに着実に生活を築いてゆく当時のイギリス市民の生き方がよく出ていて、イギリス小説成立期の重要作品である。キリスト教寓話(ぐうわ)としての特色も最近では注目されている。

[岡 照雄]

『平井正穂訳『ロビンソン・クルーソー』全2冊(岩波文庫)』『吉田健一訳『ロビンソン漂流記』(新潮文庫)』

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百科事典マイペディア 「ロビンソンクルーソー」の意味・わかりやすい解説

ロビンソン・クルーソー

デフォーの小説。英国最初の小説と言われることも。1719年刊。正式タイトル《ロビンソン・クルーソーの生涯と奇しくも驚くべき冒険The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe》。無人島に漂着した船乗りクルーソーが,船に残された物資をもとに,小麦を植えヤギを飼い,オウムを話し相手に聖書を読みながら,28年間の孤島生活を築きあげていくようすを綿密明快に記述。中産階級の典型的人間像が浮彫にされている。1704年―1709年,フアン・フェルナンデス諸島で生活したA.セルカークがモデルといわれる。
→関連項目井上勤トゥルニエフアン・フェルナンデス[諸島]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロビンソンクルーソー」の意味・わかりやすい解説

ロビンソン・クルーソー
The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe

イギリスの小説家 D.デフォーの小説。 1719年刊。 A.セルカークによる無人島生活の記録や当時の冒険物語にヒントを得て書かれたもので,主人公ロビンソン・クルーソーが,父の説得に耳を傾けず,また最初の航海や難破にも懲りずに出帆して遭難,孤島に漂着し,わずかな道具によって住みやすい環境をつくり上げ,島へ連れて来られた若者フライデーを助けて従者とし,28年にわたって生き抜く物語。単なる冒険物語でなく,非国教徒の倫理と当時勃興した中産階級の自立精神を反映し,非常な人気を博した。初期イギリス小説の代表作。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ロビンソンクルーソー」の解説

ロビンソン=クルーソー
原題 The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe of York

イギリスの小説家デフォーの小説
1719年刊。船乗りの海洋冒険物語で,信仰とのみごとな結合の上に描かれ,社会や文化のあり方を示した作品である。

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世界大百科事典(旧版)内のロビンソンクルーソーの言及

【フアン・フェルナンデス[諸島]】より

…総面積180km2。主島ロビンソン・クルーソー島(マス・ア・ティエラ島)は93km2で人口520(1980)。2番目のアレハンドロ・セルカーク島(マス・アフェラ島)は83km2。…

【イギリス文学】より

…だから小説はあくまで真実を語り道徳を高める役割を果たさねばならない,と主張したのである。イギリス小説の初期の傑作たるJ.バニヤンの《天路歴程》(1678,84)はキリスト教精神の弘布の役割を果たすから,デフォーの《ロビンソン・クルーソー》(1719)は事実の記録(今日でいうノンフィクション・ドキュメンタリー)だからという理由で,当時の市民階級の読者から歓迎されたのである。
[特質]
 イギリスの小説,特に〈ノベル〉には,それを生み出した地域社会に共通する精神構造や風俗に依拠している部分が多い。…

【海洋小説】より

…だから〈人間と海とが,いわば互いに浸透し合っている国――たいがいの人間の生活に海がはいり込んでいるし,人間の方でも,娯楽なり,旅行なり,または生計の道なりによって,海についてある程度,ないしは何から何まで知っている国〉と,コンラッドの小説《青春》(1902)の中でイギリスが描かれるのも当然であろう。 イギリスの近代小説の発生とほぼ同時に,デフォーの《ロビンソン・クルーソー》(1719)という,今日なお海洋小説の世界的傑作と認められている作品が生まれた。この表題になっている主人公のように,どれほどの危険な苦難を経験しても,海に抵抗できぬ魅力を感じる(主として男の)人物が,未知への探究を求めて多くの小説に登場する。…

【デフォー】より

…トーリー主義者として知られたアン女王の死後,彼は表面的な政治的活動はひかえざるをえなくなった。しかし,1719年孤島漂流記《ロビンソン・クルーソー》の発表とともに,小説という新しい活動分野を見いだし,以後5年間にわたって《シングルトン船長》(1720),《モル・フランダーズ》《疫病年の記録(ペスト)》《ジャック大佐》(いずれも1722),《ロクサーナ》(1724)などをやつぎばやに出版した。これらの大半は波乱に富む主人公の一代記を〈事実〉の記録として描いたものであり,その写実的な手法のためにイギリス最初の近代小説とみなされている。…

【トリニダード・トバゴ】より

…1498年5月30日,コロンブスが第3次航海の際トリニダード島を〈発見〉し,アリポ山などの3峰を見てトリニダード(スペイン語で〈三位一体〉の意)と名づけた。また,D.デフォーの《ロビンソン・クルーソー》で知られるトバゴ島の名は,先住民たちが愛好していたタバコがなまったものといわれている。行政区域は,8州とトバゴ特別区に分かれている。…

【旅行記】より

…現在でこそ〈旅行記〉は真実でなければならないと考えるのが常識だが,18世紀ごろまでは事実か創作かの区別はひどくあいまいで,読者も厳密な区別を作者に要求することはなかった。例えば有名な《ロビンソン・クルーソーの生涯と奇しくも驚くべき冒険(ロビンソン・クルーソー)》の初版(1719)の表紙には,〈彼自身によって書かれた〉と記されている。作者デフォーはこれを実録と呼び,読者もそれを信じていたし,これが詐欺であるとか背信行為であると責めることもしなかった。…

※「ロビンソンクルーソー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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