翻訳|Lolita
アメリカの作家V.ナボコフの小説。パリ版1955年,アメリカ版58年出版。中年の詩人ハンバート・ハンバートは12歳のロリータへの愛のとりことなり,未亡人のその母と偽りの結婚をするが,真実を知った母が絶望と怒りのあまり家を飛び出て自動車事故で死ぬと,少女誘拐の罪を恐れながらロリータと国中を逃げ回り,最後にロリータが逃げ出すと彼女を連れ出した男を殺すというストーリー。事実と妄想の境の定かでない,言葉の遊びなども含む,著者を言葉の魔術師と呼ばせることになった小説。少女を犯す背徳の書としてセンセーションを巻き起こし,9歳から14歳ぐらいまでの妖しく美しい少女を指すニンフェットという言葉を生み,少女しか愛することのできない倒錯心理としてロリータ・コンプレクスという言葉を生んだ。またアメリカのモーテル社会を初めて描写した作品ともいわれる。
執筆者:大津 栄一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アメリカの作家ウラジーミル・ナボコフの長編小説。1955年パリで出版され(翌年発禁)、旅行者の間で評判になり、1958年アメリカで出版され、たちまちベストセラーとなる。ハンバート・ハンバートは義理の娘のドローレス・ヘイス(ロリータ)の美しさにひかれ、妻を自殺同然の自動車事故に走らせ、ロリータとの愛の逃避行をアメリカ中に繰り広げる。だがロリータは途中で逃げ出す。ハンバートは彼女を奪ったクィルティを探し出して射殺し、投獄され、そこで自分の愛を回想する。その手記が『ロリータ』で、いわば、現実と空想のないまぜになった、美へのあこがれと倒錯した性と窃視嗜愛(バヤーリズム)の物語。ニンフェット、ロリータ・コンプレックスなどのことばがここから生まれた。
[大津栄一郎]
『大久保康雄訳『ロリータ』(新潮文庫)』
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