ロード・ジム(読み)ろーどじむ(その他表記)Lord Jim

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロード・ジム」の意味・わかりやすい解説

ロード・ジム
ろーどじむ
Lord Jim

イギリス作家コンラッド長編小説1900年刊。パトナ号の一等航海士ジムは、ある夜インド洋上で船が衝突したとき、日ごろの信条に反し、船も船客も見捨てて思わずボートに飛び移ってしまう。この不名誉な行為は深い悔恨の種となり、以後彼は人々の前から姿を消し、マライへ行って原地民のために献身する。そのかいあって「ロード・ジム」と尊敬されるまでになるが、たまたまやってきた性悪白人に裏切られ、原地民の長(おさ)のひとり息子を死なせてしまう。ジムはこの償いをすべく、悲しみと怒りでピストルを構える父親の前に進んで胸を出し、撃たれる。人間の内に潜む「破壊的要素」、ロマンチックでありすぎることの罪、裏切りと償い、などを深く掘り下げたコンラッド代表作の一つ。

[高見幸郎]

『蕗沢忠枝訳『ロード・ジム』(新潮文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ロード・ジム」の意味・わかりやすい解説

ロード・ジム
Lord Jim

イギリスの作家J.コンラッドの長編小説。1900年刊。船客を捨てて難破船を逃れた若い航海士ジムは,自分がそのような人間であることを認めることができず,マレーの奥地に隠れ,その土地で最も尊敬される人間になることによって己の過去から逃れようとするが,海賊ブラウンの奸計のために現地人の信頼を裏切る結果になり,潔くみずから死に赴く。自己理想化の美しさとその裏にある自己欺瞞エゴティズムを語り手マーローによってえぐり出させ,人間の内奥を仮借なく追求した,実存的で,テーマ,手法ともにきわめて現代的な小説。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロード・ジム」の意味・わかりやすい解説

ロード・ジム
Lord Jim

イギリスの小説家 J.コンラッドの小説。 1900年『ブラックウッズ・マガジン』に掲載。船客を見捨てて難破船を離れたジムは,ジャングルに入って贖罪に努めるが,不幸な行きがかりでマラヤの首長に殺される。著者の海洋小説の代表作。

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