ローヌ川(読み)ローヌがわ(英語表記)le Rhône

精選版 日本国語大辞典 「ローヌ川」の意味・読み・例文・類語

ローヌ‐がわ ‥がは【ローヌ川】

(ローヌはRhône) スイス中部からレマン湖を経て、さらにフランス南東部を南流して地中海に注ぐ川。全長八一二キロメートル。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「ローヌ川」の意味・読み・例文・類語

ローヌ‐がわ〔‐がは〕【ローヌ川】

Rhône》スイスのアルプス山中に源を発して西流、レマン湖を経て、フランス南東部を南流して地中海に注ぐ川。長さ812キロ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ローヌ川」の意味・わかりやすい解説

ローヌ[川]
Rhône

スイス南部およびフランス南東部を流れる川。全長812km。スイスのサン・ゴダール山塊ローヌ氷河に発し,マルセイユの西で地中海に注ぐ。流域面積は約10万km2に及ぶが,その大半は山岳地帯で,標高500m以下の低地は全流域面積の4分の1にすぎない。スイスではアルプスの地質構造に従って,東北東~西南西に縦谷をつくり,北側のベルナー山群と南側のペニン山群を分けている。

 ローヌ河谷はバリス(バレ)地方と呼ばれ,広いU字谷からなるために暖かい気流が入り込み,スイスでは最も重要なブドウ酒の産地となっている。また南のペニン山脈に延びる支谷には,マッターホルン山麓の観光地ツェルマットがある。ローヌ川はその後,スイス・フランス国境にあるレマン湖を経てフランスに入る。フランス国内ではジュラ山地をその南端部で横断し,リヨンソーヌ川を併せ,そこからローヌ地溝帯と呼ばれる,ほぼ南北の谷を南下して地中海に向かう。南北に直線的な谷をつくるため,アルプスから吹き下ろす冷たい北風ミストラルの影響を受け,谷底では強風が吹くことが多い。マシフ・サントラル(中央山地)の東側は断層によってローヌ河谷に落ち込んでおり,その急斜面は段々畑となって,コート・デュ・ローヌと呼ばれる赤ブドウ酒を産する。ローヌ河谷では,ソーヌ川との合流点にあたるリヨン周辺が最も開けており,氷期にアルプスから谷の中を押し出してきた氷河の堆積物からなる平野では牧牛や小麦栽培が行われる。ローヌ川の下流部ではローマ時代の遺跡のあるオランジュ,アビニョンあたりから谷が開け,トウモロコシ,ブドウ,オリーブ,ラベンダーなどの畑が広がって地中海的景観となる。また河口の大デルタ(カマルグ)はフランス唯一の稲作地帯となっている。

 ローヌ川は急流や峡谷が多く,水運には不利であるが,古くから地中海と北とを結ぶ重要な交通路となっており,その価値は現在でも変わっていない。フランスは第1次大戦後,ローヌ川の整備を目的としたローヌ国営公社をつくり,水運,水力発電,農業用水確保のための河川整備を行っている。ローヌ川はフランス最大の平均流量ロアール川の1.8倍,セーヌ川の4倍)をもち,地中海性降雨の集中する冬と融雪期に増水する。水力発電量はフランス第1であり,本流にあるセーセル,ジェニシアをはじめ支流イゼール川などに多くの大発電所がつくられている。また中流部,モンテリマールの下流につくられたドンゼール・モンドラゴン運河にはヨーロッパ最大級のボレーヌ発電所があり,その電力を利用したウラン濃縮工場はフランスの原子力産業の中心となっている。リヨンやグルノーブルの繊維,化学工業サンテティエンヌ鉄鋼業,バランスの電気,機械工業など,ローヌ河谷とその周辺で行われる工業は,ローヌ川の豊かなエネルギー資源と,輸送の大動脈としてのローヌ河谷の存在によって形成されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ローヌ川」の意味・わかりやすい解説

ローヌ川
ろーぬがわ
le Rhône

スイス南部とフランス南東部を流れて地中海に注ぐ川。全長812キロメートル。スイス領内290キロメートル中、72キロメートルはレマン(ジュネーブ)湖を通過する。流域面積9万7000平方キロメートルの90%近くがフランス領。ラテン語名ロダヌス川Rhodanus。アルプス山中、フルカ峠に近いローヌ氷河に発し、スイスのバレー(ワリス)州内を南西流、北西流してレマン湖に入る。同湖南西端のジュネーブから流出してフランス領に入り、ジュラ山脈とサボア・アルプスの間を大きく曲流しながらほぼ南西流してリヨンに至る。ここからは、ほぼまっすぐに南流してカマルグ地方の三角州に至り、大小二つのローヌ川に分流してリオン湾に流れ込む。ソーヌ川、イゼール川、ドローム川、デュランス川、ガール川など支流が多く、支流や運河を通じてセーヌ川やライン川とも結ばれ、フランス南東部の河川交通の大回廊を形成している。

 1933年ローヌ公社(CNR(セーエヌエル)=Compagnie Nationale du Rhône)が設立され、上流のジェニシアから下流のアルルに至るまで計21のダムを築造し、発電、灌漑(かんがい)に利用するとともに、運河開削、浚渫(しゅんせつ)、河港整備などの総合開発事業を進めてきた。1960年代に開発が進み、この事業により、それまで急流であったローヌ川は姿を変え、流域の工業化に重要な役割を果たした。流路にはリヨン、ビエンヌ、バランス、モンテリマル、アビニョン、アルルなどの都市があり、それぞれ工業化が著しい。河谷平野はブドウ、果樹、野菜、小麦の栽培地である。

[高橋 正]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ローヌ川」の意味・わかりやすい解説

ローヌ川
ローヌがわ
Rhône

スイス南部およびフランス南東部を流れる川。全長 812km。スイス,バレー州のローヌ氷河に源を発し,ブリーク付近で流量を増し,アルプペニンとベルナーオーバーラントの間をほぼ西流し,マルティニで北西に流路を変えてレマン湖 (ジュネーブ湖) に流入。レマン湖を流出してフランス領に入り,ジュラ山脈に横谷を形成しながら迂回してリヨンにいたる。ここでソーヌ川と合流,マシフサントラル (中央山地) の東縁に沿って南流,途中イゼール川,ドローム川を合せ,アビニョンの下流でデュランス川を合せ,大三角州を形成しながら地中海のリヨン湾に注ぐ。上流域はフランス最大の電源地帯。リヨンから下流の谷は,ソーヌ,モーゼル,ライン各川の谷とともに,地中海地方と北海および大西洋地方を結ぶ連絡路として,歴史的にも重要な役割を果した。急流が多いため水運は従来不振であったが,危険部分の迂回用など運河の建設も進んでおり,さらにダムの建設,水運用閘門の改善なども大規模に行われて,通航の便が増大している。ベルフォール近郊からストラスブールを結ぶローヌ=ライン運河がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のローヌ川の言及

【レマン[湖]】より

モレーンによってせき止められて形成された湖で,その水は濃青色をしており,透明度が高い。ローヌ川が湖の東部から流入して湖を貫流し,西端部から再び流出して,湖岸のジュネーブ市を流れる。ほかに南にドランスDranse川,北にブブエイゼVeveyse川などが流入する。…

※「ローヌ川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android