一筆斎文調(読み)いっぴつさいぶんちょう

改訂新版 世界大百科事典 「一筆斎文調」の意味・わかりやすい解説

一筆斎文調 (いっぴつさいぶんちょう)

浮世絵師生没年不詳。姓は守,江戸亀井町に住した。石川幸元を師として絵を学び,明和安永年間(1764-81)を中心に活躍した。勝川春章とともに役者絵に似顔絵表現を取り入れるべく努め,鳥居派の類型的作風から脱した。歌舞伎役者の半身像を扇面形の枠内に収めた春章との合作《絵本舞台扇》(1770)は,その記念的成果である。また美人画にもすぐれ,版画の揃物《三十六花撰》や肉筆画《笠森お仙茶屋図》(出光美術館蔵)などの傑作が知られる。門下に岸文笑(狂歌師頭光(つぶりひかる)),玉川舟調文康が出た。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一筆斎文調」の意味・わかりやすい解説

一筆斎文調
いっぴつさいぶんちょう

没年不詳。江戸時代の浮世絵師。家系、俗称など不明。石川幸元に学ぶ。錦絵(にしきえ)の草創期に鈴木春信(はるのぶ)とともに活躍、ことに役者絵に写実味を加えて新風を開いた。役者似顔絵の流行は、明和(めいわ)年間(1764~1772)から安永(あんえい)年間(1772~1781)の初めにかけて多作された文調の細判役者絵に始まるといって過言ではない。錦絵のほか、本の挿絵や肉筆画にも筆を染めている。勝川春章との合作になる人気役者の肖像絵本『絵本舞台扇』(1770刊)は、役者絵の革新を告げる記念碑的作例として知られる。門人に岸文笑、岸文康、玉川舟調がいる。

小林 忠]


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百科事典マイペディア 「一筆斎文調」の意味・わかりやすい解説

一筆斎文調【いっぴつさいぶんちょう】

江戸中期の浮世絵師。守文調とも。写実的表現による役者絵にひいで,鈴木春信風の美人画も描いた。勝川春章との合作《絵本舞台扇》(1770年)が代表作

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一筆斎文調」の意味・わかりやすい解説

一筆斎文調
いっぴつさいぶんちょう

江戸時代中期の浮世絵師。明和~安永期 (1764~81) 頃活躍。初め狩野派の石川幸元に師事したといわれる。勝川春章とともに役者絵,美人画の分野で活躍した。鈴木春信の影響も受ける。没年は寛政3 (91) ~4年頃と推定される。主要作品は『山下京之助のうしろ面』 (69,東京国立博物館) ,春章との合作『絵本舞台扇』 (70) 。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「一筆斎文調」の解説

一筆斎文調 いっぴつさい-ぶんちょう

?-? 江戸時代中期の浮世絵師。
はじめ狩野(かのう)派を石川幸元にまなび,のち浮世絵に転じて,明和-安永(1764-81)のころ江戸で活躍した。その役者絵は勝川春章との合作「絵本舞台扇」で評判となった。美人画は鈴木春信の画風にちかいが,より写実的。磯田湖竜斎との合作もある。弟子に頭光(つむりの-ひかる)らがいる。姓は守。

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