改訂新版 世界大百科事典 「一般法学」の意味・わかりやすい解説
一般法学 (いっぱんほうがく)
法ないし法学の各分野を孤立化して扱わず,全部門に共通の概念を主として帰納的な方法によって取り出そうとする法の一般理論を指す。ドイツ法学は,イギリス,フランスの法学と異なり,近世から幾何学的方法を導入して,一般的・抽象的な法概念を構築し,その結果,民法の総則,刑法の総論の体系をつくり出してきた。国家学にみる一般国家学も同じ傾向をもっている。そのドイツにおいて19世紀の70年代から20世紀初頭にかけて登場した一般法学は,その傾向をいっそう進めたものであり,そのため総則の総論とも性格づけられている。しかし,一般法学は,従来,法の一般性をつくってきた自然法そのものに潜む形而上学を払拭しようとした法実証主義者たちによって唱えられた。A.メルケル,K.ビンディング,K.ベルクボーム,E.ビーアリングらがその代表的な学者であるが,総じて法と関連の深い道徳,経済,国家などについて社会学的,歴史的,心理学的な考察を加えている。
執筆者:上山 安敏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報