万作踊(読み)マンサクオドリ

デジタル大辞泉 「万作踊」の意味・読み・例文・類語

まんさく‐おどり〔‐をどり〕【万作踊(り)】

関東一円に分布する民俗芸能願人坊主がんにんぼうずなどの芸能を取り入れて、江戸後期に発生手踊り・段物茶番芝居などからなる。飴屋あめや踊り。中山踊り。小念仏

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精選版 日本国語大辞典 「万作踊」の意味・読み・例文・類語

まんさく‐おどり‥をどり【万作踊】

  1. 〘 名詞 〙 関東一円に分布する民俗芸能。願人坊主などの芸能を取り入れて、江戸後期に発生。手踊り・段物・茶番・芝居などからなる。飴屋(あめや)踊り。中山踊り。小念仏
    1. [初出の実例]「今度其筋にて取調られし府下諸芸人の現員は、申楽、男百七十一人、〈略〉万作踊、男二十七人、女八人」(出典:東京日日新聞‐明治二〇年(1887)五月一五日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「万作踊」の意味・わかりやすい解説

万作踊
まんさくおどり

東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城(南部)などに伝承する農村娯楽芸能。名称は豊年満作から出たもので、普通は万作と表記されている。予祝と収穫の両方の祭事にかかわって春秋の祭りに神社に奉納されるが、また縁日には寺のお堂で演じられる。地域によって名称は一定でなく、東京や埼玉では万作踊とよぶ所が多いが、神奈川では伝播(でんぱ)者から飴屋(あめや)踊、千葉では伝播地から中山節、茨城では転用目的から小(こ)念仏とよぶ例が多い。そのほか歌詞や囃詞(はやしことば)からソウダイ節、オイトコ節、ノホホン節、楽器から四つ竹踊、主たる演目から高砂(たかさご)踊、粉屋踊、白松(しらまつ)踊、木更津(きさらづ)節、下妻(しもつま)節、広大寺節などともよぶ。手踊りが主流だが、所作(しょさ)入り手踊り、段物(万作芝居)、茶番狂言、地芝居などと種類も演目も多様である。段物は本行(ほんぎょう)どおりに演ぜずにパロディー化している点、俄(にわか)に似ている。万作踊は粗野で野太いのが特徴で、江戸住吉踊、江戸願人(がんにん)の芸系に属し、幕末に流行し、現存。かっぽれも同系の芸である。

[西角井正大]

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改訂新版 世界大百科事典 「万作踊」の意味・わかりやすい解説

万作踊 (まんさくおどり)

民俗芸能。埼玉県を中心に関東地方の祭礼などに踊られる踊り。一種の地狂言で〈万作芝居〉とか〈飴屋踊〉とも呼ばれる。江戸時代末期に,江戸周辺農村部の若者が,当時流行の俗謡につれて歌舞伎もどきの踊りをくふうし,みずから演じたもので,曲目には芝居物に《白桝粉屋》《笠松峠》《広大寺和尚》,手踊物に《新川》《下妻そうだい》《伊勢音頭》など多数がある。三味線,鉦(かね),拍子木などで囃しながら,ぼて鬘(かつら)に白粉を塗り長じゅばんなど派手な衣装の青年が演じるのを特色とする。万作は,豊年満作からの名称らしく,飴屋踊の名は大道の飴売の芸をまねたという伝えによる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「万作踊」の意味・わかりやすい解説

万作踊
まんさくおどり

民俗芸能の一つ。江戸時代末期から明治期にかけて関東地方に流行した手踊芝居。鎮守の祭礼,豊年祝いなどに神社の拝殿や境内,農家を舞台にして,土地の芸達者の青年たちが演じたものが多く,旅芸人を呼ぶことはまれであった。手踊,茶番狂言,芝居から成るが,地域によって万作芝居,のほほん踊,小念仏,おいとこ節などとも呼ばれている。もと大道の飴屋が伝えたところから飴屋踊ともいわれる。

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世界大百科事典(旧版)内の万作踊の言及

【豊年踊】より

…収穫感謝の踊りは氏神の秋祭などに行われ,風流(ふりゆう)系のものが多い。関東地方には豊年満作を意味する万作踊があり,鹿児島県川辺郡川辺町勝目上山田の〈上山田太鼓踊〉や宮崎県小林市細野一区の〈輪太鼓踊〉は収穫感謝の豊年踊である。鹿児島県の薩南諸島や沖縄諸島にも,八月踊と称する収穫感謝の踊りがある。…

※「万作踊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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