日本大百科全書(ニッポニカ) 「三保松原」の意味・わかりやすい解説
三保松原
みほのまつばら
静岡市清水区(しみずく)三保(みほ)にある海岸。「三保ノ松原」とも記した。清水港を抱えるように北東に約4キロメートルほど延びている三保半島は分岐砂嘴(さし)とよばれる。有度山(うどやま)の海食崖(がい)から流出した土砂が堆積(たいせき)し内湾側は貝島(かいじま)崎、真崎などが突出したが、現在は埋立てによる工業用地に造成されている。駿河(するが)湾側の外洋に面する海岸は砂礫(されき)浜と砂堤が直線的に延び、その一帯の松林を三保松原とよぶ。大己貴命(おおなむちのみこと)と御穂津(みほつ)姫を祀(まつ)る御穂神社付近の海岸は三保松原の中心で、天女が羽衣をかけたという衣掛けの松が羽衣の松とよばれ観光名所になっている。羽衣の松は羽衣伝説や謡曲としても知られている。御穂神社の糸巻太刀は国の重要文化財に指定され、また、羽衣の裂端(きれはし)と伝える布が陳列されている。富士の眺望にも優れ、国の名勝、県立自然公園に指定されている。2013年(平成25)には三保松原は富士山域と周辺の神社、富士五湖、忍野八海(おしのはっかい)等の構成資産とともに「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」として世界文化遺産リストに登録された。
[北川光雄]