日本大百科全書(ニッポニカ) 「三春張子」の意味・わかりやすい解説
三春張子
みはるはりこ
福島県郡山(こおりやま)市西田町高柴(たかしば)(旧三春藩領)でつくられる郷土玩具(がんぐ)。三春人形の名で古くから知られている。江戸初期に、当時の三春藩主秋田倩季(よしすえ)が、農閑期藩内の副業奨励のため、参勤交代下番の際、江戸から人形師を連れて帰国。高柴にでこ(人形)屋敷を与え、人形製作の技法を農民に習得させたのが始まりという。江戸中期以後最盛期を迎え、人形の種類も数千を数え、全国にその名声を知られた。三春城下の縁日、祭日などに売られたほか、販路は江戸、京都、北陸、九州路にまでわたり、京都の御所人形、嵯峨(さが)人形と並ぶ地位を占めるほどになった。歌舞伎(かぶき)や浮世絵風俗物が多く、江戸綿絵(にしきえ)や絵入り狂言本、あるいは京都の伏見(ふしみ)人形、仙台の堤(つつみ)人形、さらに衣装人形などの影響と思われるものも少なくない。
明治期に入ると、廃藩で藩主の援助も絶え、しだいに衰退したが、第二次世界大戦後、民芸ブームの波にのって、高柴および三春町で製作が盛んになった。高柴には往年の木型約2000個が残されていて、その一部は福島県文化財に指定されている。現在つくられている人形では、天神、春駒(はるごま)、達磨(だるま)、子連れ、子曳(び)き、猩々(しょうじょう)舞い、座り美人、象乗り童児、三番叟(さんばそう)、牛乗り天神、飴(あめ)売り、恵比須大黒(えびすだいこく)、腹出し、踊り女などがある。人形以外では、傑作といわれる張子の虎をはじめ、狐(きつね)、毘沙門(びしゃもん)、弁天などの張子の面、玉兎(たまうさぎ)、俵牛(たわらうし)などがある。
[斎藤良輔]