日本大百科全書(ニッポニカ) 「三条宗近」の意味・わかりやすい解説
三条宗近
さんじょうむねちか
生没年不詳。平安時代の刀鍛冶(かじ)。永延(えいえん)(987~989)ごろの人という。京の三条に住したので三条小鍛冶(こかじ)の呼称があり、伏見の稲荷(いなり)明神の相槌(あいづち)を得て名剣を鍛えたとの伝説は、能『小鍛冶』によりよく知られる。小鍛冶とは鉄資材から鉄製品をつくるものをいい、大鍛冶(砂鉄などから鉄資材をつくるもの)と区別した呼称である。現存する有銘作品はきわめて少なく、「宗近」銘と「三条」銘とがあり、前者は若狭(わかさ)酒井家に伝来する現御物(ぎょぶつ)の太刀(たち)、後者は天下五剣の一つで名物の三日月宗近によって代表される。
宗近の系統を三条派と呼称するが、この派には兼永(かねなが)、国永(くになが)、有成(ありなり)、吉家(よしいえ)、近村(ちかむら)などの弟子がいて、兼永、国永は五条に移住したという。また有成は河内(かわち)国(大阪府)に移ったとも伝えられる。
[小笠原信夫]