御物(読み)オモノ

デジタル大辞泉 「御物」の意味・読み・例文・類語

お‐もの【御物】

(「御膳」とも書く)
天皇貴人食物、また食事
「(中宮ノ)―の折は必ず向かひさぶらふに」〈・九〉
㋑食べる人を敬って、その食物をいう語。
「―も断ちて十日ばかり籠もりありしかど」〈読・春雨宮木が塚〉
おかずに対する御飯
「次にあはせをみな食ひつれば、―は不用なめりと」〈能因本枕・三一三〉
ぎょぶつ(御物)」に同じ。
御物奉行」の略。

ぎょ‐ぶつ【御物】

天子の所有品。室町時代以降、将軍家什宝じゅうほうに対しても使われたが、現代制度では宮内庁にある御物台帳に記載されているものをさす。ごもつ。ぎょもつ。「正倉院御物

ご‐もつ【御物】

《「ごぶつ」「ごもち」とも》
人を敬って、その所有する物をいう語。特に、皇室や貴人の所蔵品を敬っていう。ぎょぶつ。
武家寺家で、主人そばに仕えて主人のちょうを得た小姓

ぎょ‐もつ【御物】

ぎょぶつ(御物)

ご‐ぶつ【御物】

ごもつ(御物)

ご‐もち【御物】

ごもつ(御物)

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精選版 日本国語大辞典 「御物」の意味・読み・例文・類語

お‐もの【御物】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「お」は接頭語 )
  2. 天皇など身分の高い人の食物、食事。
    1. [初出の実例]「衣(みそ)温にして百姓の寒(こ)ゆことを忘れ、食(オモノ)(うま)くして天の下の飢を忘る」(出典:日本書紀(720)武烈八年三月(図書寮本訓))
  3. 一般に、食べる人を敬って、その食物をいう語。
    1. [初出の実例]「おもの、大御酒、とりどりもてなし給ひて」(出典:御伽草子・福富長者物語(室町末))
  4. 食べる人を敬って、特にその飯(めし)をいう語。ごはん。ただ、飯をていねいにいうこともある。
    1. [初出の実例]「三脚(みつあし)の台、裏ぐろの坏(つき)、〈略〉麦(むぎ)のおもの混ぜたり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
  5. 米をていねいにいう語。
    1. [初出の実例]「并甲斐大和守へ御物十俵合力候て可然之由」(出典:上井覚兼日記‐天正一三年(1585)一〇月二日)
  6. ( 佩 ) 貴人の身につける飾りもの。特に身の飾りとする玉。おびもの。
    1. [初出の実例]「秋の水は未だ遊女の佩を鳴らさず 寒雲は空しく望天の山に満てり〈賀蘭遂〉」(出典:和漢朗詠集(1018頃)下)
  7. 武家時代、貴人の服飾の称。ごもつ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  8. おものぶぎょう(御物奉行)」の略。
    1. [初出の実例]「御参内、〈略〉御出奉行松田丹後守・諏訪甚左衛門、御物春阿」(出典:親俊日記‐天文七年(1538)正月一〇日)
  9. 帝室に属する工芸美術品。ぎょぶつ。

ご‐もつ【御物】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 他人を敬って、その所有の品物をいう語。多く皇室や将軍家などの貴人の所蔵物に対していう。ぎょぶつ。
    1. [初出の実例]「天下給侍老人賜御物」(出典:日本三代実録‐元慶八年(884)二月二三日)
    2. 「御くら大はしにかはりて、御もつともあつけらるる」(出典:御湯殿上日記‐明応六年(1497)九月一四日)
  3. 武家や寺家(じけ)で、主人の側に仕えた小姓。また、主人の寵愛を受けた小姓。
    1. [初出の実例]「ぢんちうにいでててきをふせぎ、御さいごの御ともを申人、ををくは御もつたちなり」(出典:仮名草子・田夫物語(1644‐52頃))
  4. 貴人の家で、衣服などを入れて保存する四角い箱(日葡辞書(1603‐04))。
  5. ごもつぶくろ(御物袋)」の略。

ぎょ‐ぶつ【御物】

  1. 〘 名詞 〙 天子が使用したり、所蔵したりしている品物。君主の所有品。皇室の所蔵品。ぎょもつ。ごもつ。
    1. [初出の実例]「其男は此間参考品として美術協会に出た若冲(じゃくちゅう)の御物(ギョブツ)を大変に嬉しがって」(出典:硝子戸の中(1915)〈夏目漱石〉二七)
    2. [その他の文献]〔史記‐呉王濞伝〕

御物の補助注記

古くは呉音読みで「ごもつ」といったが、現代では普通漢音読みで「ぎょぶつ」という。両者が混同された「ぎょもつ」といういい方もある。


み‐もの【御物・御食】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「み」は接頭語 ) 天皇や貴人の食事。おもの。
    1. [初出の実例]「天皇聞しめして、寝(みねますこと)(みまし)安からず。食(ミモノたてまつらむこと)、味(あちはひ)甘からず」(出典:日本書紀(720)景行四〇年是歳(寛文版訓))

ぎょ‐もつ【御物】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ごもつ」と「ぎょぶつ」を混同した語 ) =ぎょぶつ(御物)

ご‐ぶつ【御物】

  1. 〘 名詞 〙ごもつ(御物)

ご‐もち【御物】

  1. 〘 名詞 〙ごもつ(御物)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「御物」の意味・わかりやすい解説

御物
ぎょぶつ

「ぎょもつ」「ごもつ」ともいう。天子の用いる品を意味する中国古代からの用語。今日では一般に宮内庁または皇室家の所有品をさす。厳密には第二次世界大戦前の御物管理規定(帝室の所蔵品のなかでとくに優れたものを御物に定める法)にのっとるもので、現在、管理は宮内庁によっているが、所蔵は侍従職の私物および国有財産になっているものもある。古くから皇室家に伝わる品々や近年買い上げられたものに至るまで名品が多い。正倉院宝物をはじめ、『法華経義疏(ほけきょうぎしょ)』『聖徳太子画像』『春日権現霊験記(かすがごんげんれいげんき)』(国宝)、狩野永徳(かのうえいとく)筆『唐獅子図屏風(からじしずびょうぶ)』(国宝)などは有名である。なお、室町時代以降、将軍家の什宝(じゅうほう)にもこの呼称を用いた。足利義政(あしかがよしまさ)にちなんだ東山御物(ひがしやまごもつ)、徳川家の柳営御物(りゅうえいごもつ)などがある。

[村重 寧]

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百科事典マイペディア 「御物」の意味・わかりやすい解説

御物【ぎょぶつ】

〈ごもつ〉とも。天皇の所蔵品の意で,宮内庁の御物台帳に登録されているもの。正倉院宝物,法隆寺献納御物(現在東京国立博物館保管)など。東山御物,柳営(りゅうえい)御物は,足利将軍・徳川将軍がその制にならったもの。
→関連項目蒙古襲来絵詞

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「御物」の解説

御物
ぎょぶつ

「ごもつ・ぎょもつ」とも。中国では天子が用いたり所蔵する品をいい,日本では天皇あるいは皇室の所蔵品と室町幕府・江戸幕府の将軍家の所蔵品をいう。御物の語を用いるのは南北朝期以後で,古代において天皇の所蔵品をどのようによんだかは不明。江戸中期以降,足利家蔵品は東山御物,徳川家蔵品は柳営御物とよび,明治期以降には天皇家の御物を帝室御物とよんだ。正倉院の宝物も正倉院御物とよばれたが,第2次大戦後に国有財産に移管されてからは正倉院宝物とよぶ。

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普及版 字通 「御物」の読み・字形・画数・意味

【御物】ぎよぶつ

御用品。

字通「御」の項目を見る

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