翻訳|opinion poll
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
社会的に重要な時事的問題について,広範な人々の意見をある時点で量的に測定すること。世論という概念が政治過程と深く結びついているので,世論調査でとりあげられる問題は政治や行政にかかわるトピックスが多い。しかし,最近では一般的な社会問題や生活様式などもしばしば調査のテーマとしてとりあげられている。世論調査の結果は,ある問題をめぐって動態的に形成されていく一時点における人々の意見分布状況を示している。したがって,世論の動向を理解したり,変化を予測したりするためには,調査を何度か重ねて行い,結果の推移を分析することが必要である。
世論調査はふつう,調査員が指定された相手に面接し,調査票に基づいて質問をし,回答を記入する〈個別面接法〉によって行われる。ときには,調査票を相手に手渡して回答を記入しておいてもらい,後でそれを回収する〈留置法〉や,郵便で調査票を送り回答を送り返してもらう〈郵送法〉などが用いられることもあるが,回答の信頼性は低くなりやすい。
世論調査の技術は,アメリカにおいて,とくに大統領選挙の予想と結びつきながら発達してきた。他のトピックと違って,選挙の場合には投票結果が数字で示されるため,調査データの正誤がはっきりと判明してしまう。そこで,少しでも正確な予測ができるよう,調査技術を改善するための努力が払われるわけである。この点でギャラップGeorge H.Gallupの功績は大きい。1935年に〈アメリカ世論調査所American Institute of Public Opinion〉を創設したギャラップは,翌36年の大統領選挙の際にわずか2000人を調査しただけでローズベルトFranklin D.Rooseveltの当選を予想し,それまで選挙予想の世界に君臨し,このときも200万余の有権者からアンケートをとってランドンAlfred M.Landonの当選を予想していたリテラリー・ダイジェスト社Literary Digestの予想を破った。ギャラップはこのとき,全体の縮図となるような構成をもった標本(サンプル)を調べれば,たとえ数は少なくても正確な予測ができるという考えに立って,性,年齢,職業,地域などの指標に関して有権者全体の分布と等しい割合になるように,2000人のサンプルを選んだのである。これは〈割当法quota system〉とよばれる方法であるが,数をたくさん調べればそれだけ全体を予測するのに有利だという従来の考え方を,事実によって否定するものであった。しかし,トルーマンが当選した48年の大統領選挙では,ギャラップはデューイの当選を予想して失敗した。その原因を検討した結果,サンプリングの方法として割当法は十全のものではなく,むしろなんらの作為も加えずに,ただ確率法則だけに依存してサンプルを選ぶ〈ランダム・サンプリング(無作為抽出法)〉が適切であることがわかった。ランダム・サンプリングの具体的手続は多様であるが,原理的にはくじ引きと同じく,すべての個人が選ばれるチャンスを平等にもつという条件のもとでサンプリングが行われる。この方法は,抽出されたサンプルが,結果的に全体のよい縮図になることが,理論的にも実際的にも証明されているので,現在どこの国でも信頼できる世論調査機関では,ランダム・サンプリングが採用されている。
アメリカでギャラップと並んで活発に世論調査を行っている機関としては,エルモ・ローパーElmo Roperやルイス・ハリスLewis Harrisの主宰するものがある。また,イギリスではORC(Opinion Research Center),NOP(National Opinion Polls),フランスではIFOP(Institut français d'Opinion publiques),SOFRES(Société français d'Etude par Sondage),ドイツではアレンスバハInstitut für Demoskopie Allensbach,EMNID-Institutなどが著名である。
日本で本格的な世論調査が行われるようになったのは第2次大戦後のことで,1945年10月に毎日新聞社が実施した全国調査が最初である。その後49年には〈国立世論調査所〉(1954廃止),民間調査機関などが設立されて,数多くの世論調査が行われてきた。現在,比較的頻繁に政治・社会問題に関して世論調査を行っている機関としては,内閣府広報室,《朝日》《毎日》《読売》などの各新聞社,NHK放送世論調査所,輿論科学協会などがある。
選挙予想が当たらなかったり,同種の調査の結果が調査機関の間でくい違っていたりすることがあり,そのたびに世論調査の信頼性に対して疑念が表明される。これは,原則的には所定の手続にしたがって調査が行われる限り,その結果は計算可能な一定の誤差の範囲内で,高い的中率を確保することができるはずであるが,現実には,サンプルの抽出が完全にランダムでなかったり,質問文があいまいな部分を含んでいたり,かたよった内容のものであったり,調査員の訓練が不十分であったりするために,調査結果にゆがみの生じるためと考えられる。また,調査結果が公表されることによって,世論形成過程自体が影響をうける場合がある。たとえば,多数の人々がある意見に賛成であるという調査結果が発表されることで,明確な意見をもっていなかった人々がその意見に同調を示すとか,選挙予想で当落線上と書かれた候補者に同情票が集まるといった現象がそれである。このため,投票日前の一定期間内は選挙予想の発表を控えようという動きもときおりみられる。
執筆者:竹内 郁郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「世論調査」のページをご覧ください。
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…しかし,これを契機に,その後最も広く用いられるランダム・サンプリング(無作為抽出)という標本抽出調査法を開発した。彼は〈世論調査〉を企業化し,それを〈民意〉の模造品として各レベルの政策立案・決定過程に,現実に考慮される比重はともかく,不可欠のものとして組み込ませることに成功した。反面,調査〈数量〉の物神化をも加速したといってもよい。…
※「世論調査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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