日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガイダンス」の意味・わかりやすい解説
ガイダンス
がいだんす
guidance
学校教育のなかで展開される学業指導(オリエンテーションを含む)、進路指導、余暇指導、個人的適応指導、それに保健指導(安全と性の指導を含む)などの教育活動をいう。
[坂本昇一]
アメリカにおける初期のガイダンス
アメリカ合衆国において20世紀初めに展開されたガイダンス運動、精神衛生運動、教育測定運動などが、現代のガイダンスの柱石といえる。このような社会運動に共通するものは、人間の主体性と個別性の尊重である。これが、学校教育の画一化、非人間化の傾向への対抗として、学校教育のなかに導入されていった。アメリカの初期のガイダンスの主要な理念のタイプをあげると次のようになる。社会改革的理念、キリスト教的理念、社会進化論、そして、科学主義的理念である。
[坂本昇一]
日本におけるガイダンス
日本におけるガイダンスは、第二次世界大戦後、アメリカ教育使節団の報告書のなかで強調され、学校教育のなかに意図的、計画的に導入された。アメリカの民間情報教育局(CIE)の指導のもとでガイダンスの研究が始められ、1948年(昭和23)に『指導』が公刊され、教員の再教育のための講習会でもガイダンスの講義がなされた。これが、日本的なガイダンスの流れとなって「生徒指導」として確立していく。それゆえ、生徒指導の理念や方法は、ガイダンスの影響を大きく受けているといえよう。
[坂本昇一]
目的と機能
ガイダンスとは、個人的幸福および社会的有用性を目ざして、個人が自らの努力によって、可能性を発見し発達させることができるように助力する過程であると定義される。すなわち、ガイダンスは、個人の社会的適応だけでなく、社会のよりよい改革をも目ざすものである。そして、ガイダンスの機能として、適応機能、分配機能、順応機能の三つが考えられている。適応機能は、児童生徒が学校の学習内容や校則などに適応するような働きかけであり、分配機能は、学校の選択コース、選択教科、そして進路などに児童生徒が適切に分配される働きである。さらに、順応機能は、学校の教育内容や校則などを児童生徒や保護者、地域社会の人々の要求や実態に合致させる働きである。これらガイダンスの三つの機能を学校教育のすべての領域・内容のなかに作用させるということが課題になっている。
[坂本昇一]
『坂本昇一著『ガイダンスの哲学的前提に関する研究』(1977・風間書房)』▽『坂本昇一著『「やる気」の生徒指導』(1985・小学館創造選書)』▽『坂本昇一著『生徒指導の機能と方法』(1990・文教書院)』▽『坂本昇一著『生き方の生徒指導』(1991・学習研究社)』▽『小谷英文編著『ガイダンスとカウンセリング――指導から自己実現への共同作業へ』(1993・北樹出版)』▽『坂本昇一著『「子どもの心」を癒し育てる』(1998・小学館)』▽『坂本昇一著『生徒指導が機能する教科・体験・総合的学習』(1999・文教書院)』▽『高橋哲夫他編『生徒指導の研究――生徒指導・教育相談・進路指導、学級・ホームルーム経営』新訂2版(2000・教育出版)』