並行輸入(読み)ヘイコウユニュウ

デジタル大辞泉 「並行輸入」の意味・読み・例文・類語

へいこう‐ゆにゅう〔ヘイカウユニフ〕【並行輸入】

[名](スル)国内の総代理店輸入している商品を、別の業者第三国にある同じ製造元の代理店から輸入すること。「ブランド品を並行輸入する」

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精選版 日本国語大辞典 「並行輸入」の意味・読み・例文・類語

へいこう‐ゆにゅうヘイカウユニフ【並行輸入】

  1. 〘 名詞 〙 国内の総代理店が独占して輸入していた外国製品を、別の業者が第三国の代理店などから輸入すること。有名商品に多く、安く輸入できる利点がある。昭和四七年(一九七二)許可。

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改訂新版 世界大百科事典 「並行輸入」の意味・わかりやすい解説

並行輸入 (へいこうゆにゅう)

外国商品につき,国内で総代理店制がとられている場合,第三者がそのルート以外から商品を輸入することをさすが,法的に問題となるのは,特許権商標権等の無体財産権知的財産権)が介在した場合である。例えば,アメリカのA社がアメリカと日本で商標権を有し,日本のB社と総代理店契約を締結し,商標の専用使用権を設定している場合に,日本のC社がアメリカで流通しているA社の製品を独自に輸入・販売する行為はA社の商標権またはB社の専用使用権を侵害することになるか否か,という問題である。すなわち,特許権や商標権等の工業所有権は,その国の領域でのみ効力を有しており,たとえアメリカで正当な権利者により製造・販売された商品であっても,日本に輸入されれば日本の工業所有権に抵触する可能性が出てくる。

 この問題については,商標権と特許権とは分けて考えなければならない。商標法は,商標の出所識別および品質保証の機能を通じて商標権者のグッドウイル(顧客吸引力)を保護し,流通秩序を維持し,需要者が購買にあたって選択を誤らないようにするためのものであり,その商標により識別される商品の出所は原則として商品の生産源であり,したがって並行輸入は認められる(パーカー事件。1970年大阪地方裁判所判決。以下多数)。これに対して特許には出所表示という機能はなく,特許を取得した当該国で,みずから独占的に実施したり,実施させたりする権原である。同一人が同一発明につき複数国で特許を取得した場合,それらの特許は互いに無関係に併存し,お互いに影響を受けることはない。A国で特許製品が適法に製造・販売されれば,その当該製品に関する限りは,A国での特許権はすでに使い尽くされた(消耗された)のであり,特許権者は当該製品の取得者に対して特許権を行使しえない。しかし,当該製品がB国に輸入された場合,A国での特許権の消耗はB国での特許権には影響がなく,その輸入は特許侵害となり,並行輸入は認められないと解されていた(ボーリング事件,1969年東京地方裁判所判決)。最近では,特許権についても並行輸入を認める判決が出されるに至っている(BBS事件,1995年東京高等裁判所判決。この事件は1997年最高裁判決で確定している)。今後は,特許権についての並行輸入が増加するものと思われる。この種の事件は,税関での差止めの問題として争われることが多いため(関税定率法21条),1972年の関税局長通達により,商標についての真正商品に関する並行輸入であって,当該商標を適法になして拡布した者と日本の商標権者が同一人または同一人と同視されるような特殊な関係にある場合は商標権を侵害しないものとして扱われている。

 日本では昭和40年代なかばに,ウィスキー等の輸入商品の価格が円の為替レートの上昇にもかかわらず高値安定していた原因として総代理店制の弊害が問題になったが,現在では上記のように商標権のともなう並行輸入が認められている。
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百科事典マイペディア 「並行輸入」の意味・わかりやすい解説

並行輸入【へいこうゆにゅう】

輸入総代理店以外の業者がブランド品などを相手国の流通市場で仕入れ輸入すること。輸入総代理店はブランド品などの輸入品につき,商標使用権者となっている場合が多く,かつては関税定率法により並行輸入は商標権の侵害として,税関に対し輸入禁止請求を申し立てる例が多かった。 1971年の〈スミソニアン合意〉(スミソニアン体制)による円切上げ後,為替レートの実勢をそれら独占輸入商品にも反映させるため,1972年10月より外国権利者(商標権者)と無関係な日本の業者でも,その商品が外国で適法に販売された真正商品であれば,第三国の輸入代理店あるいは輸入業者から日本へ輸入できるようになった。 1985年の〈プラザ合意〉以後の円高により並行輸入は急速に浸透し,百貨店,量販店などの大規模小売店の大半および小規模な輸入品店でも取り扱うようになった。洋酒,加工食品,自動車,ネクタイ,靴などの商品に,この並行輸入品が多い。

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知恵蔵mini 「並行輸入」の解説

並行輸入

正規の契約を結んだ輸入代理店やそのブランドの日本法人以外の業者が、海外の製品を別ルートで輸入すること。個人輸入代行も含まれる。並行輸入の方法としては、海外のブランド品等を購入するといった日本の総代理店契約者等の許諾を得ずに正規代理店ルート以外のルートで輸入することが典型。1970年の「パーカー万年筆事件」(大阪地裁)で初めて「並行輸入は実質的違法性がない」という判断がなされ、72年には大蔵省関税局より各税関長へ、真正品の並行輸入品を取り扱うよう通達が出された。一般に、並行輸入品の方が価格が安く、日本未発売品も販売されるといったメリットがあるが、「並行輸入品」と称して、偽物・コピー商品を扱うショップもネット通販を中心に増えており、問題になっている。

(2014-3-7)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「並行輸入」の意味・わかりやすい解説

並行輸入
へいこうゆにゅう

輸入総代理店契約の対象となっている物品を、代理店を通さずに原産国から直接、または第三国経由で輸入する方式。1972年(昭和47)の制度改正で認められるようになった。代理店側は、アフターサービスが不十分で製品の質を損なうなどの理由で批判しているが、流通マージンが低く抑えられ、商品を安く供給できるため、いまや百貨店など多くの大規模小売店が並行輸入品を扱っている。公正取引委員会は「並行輸入は代理店の独占的価格形成の歯止めになりうる」として拡大を支援している。そのため、並行輸入を阻害する行為は、総代理店契約の対象商品の価格を維持する目的で行われる場合は、独占禁止法違反になるとのガイドラインを示した。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「並行輸入」の意味・わかりやすい解説

並行輸入
へいこうゆにゅう
parallel import

内国商標権者の許諾を得ない第三者による輸入をいう。たとえば,パーカー万年筆についてA社が輸入総代理店である場合,B社が総代理店によるルート以外で輸入すること。日本においては,従来,商標権についての属地主義が厳格に適用され,真正商品の並行輸入は内国商標権者の権利を侵害するとして,認められなかったが,判例 (パーカー事件,大阪地方裁判所判決 1970.2.27.) および税関では,真正商品の並行輸入は内国商標権者の権利を侵害しない,すなわち商標の出所表示機能,品質保証機能を害さないので需要者に誤認を生ぜしめる危険性はないという考え方がとられている。

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流通用語辞典 「並行輸入」の解説

並行輸入

輸入代理店制度をとっているケースで、その輸入総代理店以外の業者が当該商品を輸入すること。わが国では昭和47年(1972)10月から認められたもので、それまでは輸入総代理店が当該商品の商標使用権者になっている場合が多く、並行輸入は原則としてできなかった。

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