新規な創作に関する権利と営業上の信用に関する権利の総称。その具体的内容は次のとおりである。(1)新規な創作に関する権利 (a)著作権,(b)工業所有権(特許権,実用新案権,意匠権,種苗法上の権利,その他(例えば営業秘密))。(2)営業上の信用に関する権利(商標権,商号権,その他(不正競争防止法上の権利))。
古くは不動産が財産の中心であったが,近代に至り債権が重要な地位を占めるようになった。そして大量生産時代に入り,第3の財産として無体財産も重要な地位を占めるに至った。無体財産権は知的財産権(知的所有権)とも呼ばれるように,その対象は人間の知的創作物あるいは営業上の信用といったきわめて観念的なものであるため,権利の範囲等につき必ずしも明確ではなく,その点をめぐる争いも多い。無体財産権は,一応上のように分類できるが,この分類は必ずしも絶対的なものではない。例えば,コンピューター・ソフトウェア(〈プログラム〉の項参照)については,1985年の著作権法改正(1986年施行)により,著作物として保護されることが明らかにされたが,特許法による保護も可能である。また,応用美術については,意匠法で保護されるのか著作権法で保護されるのかは,必ずしも明らかではない。また,タイプ・フェース(タイポグラフィー)のように,その保護の態様が明確でないものもある。民法に規定されている財産権の対象は,変化が少ないため,民法改正のなされることはまれであるのに対し,無体財産権の対象は,社会や技術の発展とともに増加してゆくため,つねに法改正あるいは新規立法の必要がある。1978年に制定された種苗法(98年全面改正)はその好例であり,それまで保護の薄かった植物新品種の育成者にも,特許権類似の保護が与えられることになった(〈品種〉の項参照)。今後も新たな分野についての立法がなされるであろう。またこの財産権についての紛争も国内・国際を問わず,増加することが予想される。
執筆者:中山 信弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
人間の知的創作である著作物、発明、デザインなどの無体物に対する財産権の総称であり、不動産や動産のような有体物に対する民法上の所有権(民法第206条)と区別する権利の概念。知的所有権や知的財産権ともいう。ドイツの法学者コーラーが提唱した無体財産権説Theorie des Immaterialgüterrechtが語源である。
[角田政芳 2021年4月16日]
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…物とは有体物,たとえば動産・不動産をいう(民法85条)。この点で,所有権は無体物の支配権である無体財産権(特許権,意匠権,実用新案権,商標権,著作権など)と異なる。使用,収益,処分は所有権の効力の代表的な現象を指すのであって,所有権者は,このほか,たとえば改良,担保権設定その他,いわば自分の物であるからどんなことにでもそれを使うことができる。…
…
[著作権]
著作権は著作物の支配を目的とする排他的な権利であり,著作物の利用から生ずる経済的な利益の保護を目的とする財産権である。特許権や商標権などと同じく無体財産権ないしは知的所有権の一つである。この著作権を考えるのに,ドイツのように,人格権的な要素を含める立法例もあるが,日本の著作権法は著作権をもって財産権と定め,著作者人格権は別個の独立した権利と定めている(具体的には以下の権利をさす。…
…コンピュータープログラム,データベース,マルチメディア作品のように電子化された情報に関し,法律によって保証された著作権,工業所有権等の権利の総称。知的所有権は知的財産権と同義語であり,無体財産権ともいう。 一般に電子情報は,複製,ネットワーク上の送信やダウンロード,その内容を取り込んだ新たな電子情報の作成等,さまざまな利用がきわめて容易にできる点に特徴がある。…
※「無体財産権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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