中国酒(読み)ちゅうごくしゅ

精選版 日本国語大辞典 「中国酒」の意味・読み・例文・類語

ちゅうごく‐しゅ【中国酒】

〘名〙 中国産の酒。醸造酒では紹興(しょうこう)酒、蒸留酒では茅台(マオタイ)酒など。

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デジタル大辞泉 「中国酒」の意味・読み・例文・類語

ちゅうごく‐しゅ【中国酒】

中国産の酒。醸造酒では紹興しょうこう酒、蒸留酒では茅台マオタイ酒など。

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改訂新版 世界大百科事典 「中国酒」の意味・わかりやすい解説

中国酒 (ちゅうごくしゅ)

中国でつくられる酒の総称。伝説では,尭(ぎよう),舜(しゆん)も酒を飲み,禹(う)は儀狄(ぎてき)のつくった酒がうますぎるとして禁止したなどの話があるが,もとより酒造の起源は明らかでない。しかし,山東省城子崖など新石器時代後期の竜山文化遺跡からは,磨製石器の農具とともに陶製の酒つぼや酒杯が出土しており,前2400-前2000年ころにはすでに農耕とともに酒造が行われていたことが明らかにされている。現在の中国では,古来の伝統的な酒のほか,西欧起源の酒も多くの種類がつくられている。以下に,それらについての概観を行うが,その前にまず,中国酒のこうじ(麴)について述べることにする。

中国では繁体字の〈麴〉〈麯〉は簡体字化されて,いまは〈曲〉の字が用いられている。原料,製造法によっていろいろの種類があるが,おもなものを挙げると以下のようになる。(1)大麴(だいきく) 古来ひろく用いられてきたこうじで,小麦,大麦,エンドウなどを使う。原料を粉砕し,水を加えて練り固め,7×25×25cmほどの塊にしてこうじ室に入れ,原料,器具などに由来する野生菌を繁殖させたもので,おもな微生物はクモノスカビRhizopus,ケカビMucorである。大麴はこれらの糸状菌が分泌する酵素を利用してアルコール発酵を行わせるが,同時にこうじ中に混在する酵母が,このこうじに強い発酵力を与えている。酒造に際しては原料穀類の25~30%を使用する。(2)小麴(しようきく) 粉砕したうるち米,小麦,米ぬかなどに水を加えて練り固め,直径2~3cmの球状にして,既製の小麴の粉末を塗りつけ,菌を培養するもので,形が小さいためこの名がある。また,原料を練り固める水に,あらかじめ数種あるいは数十種の漢方薬を浸し,その成分を抽出したものを用いるので,薬麴,酒薬とも呼ばれる。培養される微生物の種類は大麴と大同小異だが,漢方薬の成分が有害菌を防ぎ,有用菌の繁殖を助け,生成酒に特有の香気を付与するという。酒造にあたっての使用量は,原料穀類のわずか1~2%に過ぎない。これは,大麴では酵素利用を主眼とするのに対し,小麴では,その中の微生物を酒造原料の穀類に接種することを目的とするからである。(3)紅麴 福建,浙江の地方,および台湾で紅酒の醸造に用いるもので,うるち米にベニコウジカビMonascusを培養する。この菌は成熟すると鮮紅色の色素を分泌し,生成酒に色をつける。(4)麩麴(ふきく) 麩は小麦製粉の副産物であるふすまのことで,ふすまと米ぬか,コーリャンぬかなどの混合物に,純粋培養のクロコウジカビAspergillus niger,シロコウジカビA.kawachii,コウジカビA.oryzaeなどの糖化力の強い菌と酵母を接種,培養したもの。このこうじによって,とくに白酒用の大麴原料である麦や豆が節約できるようになったほか,製麴に要する日時が短縮された。1960年の通風製麴の創案によって,麩麴による白酒製造は能率化し,現在中国の白酒の80%以上がこれを用いてつくられている。ただ,在来の大麴白酒にくらべると,香味ともに単純化のうらみがある。

中国酒の分類は文献によってさまざまであるが,ここでは黒竜江商学院ほか編著の1979年版《中国酒》にしたがって,白酒,黄酒,啤酒,ブドウ酒,果酒,配製酒・薬酒に分けて概観する。ちなみに,中国軽工業省は1953年,63年,79年の3回,全国評酒会議を開いて全国の酒を品評し,現在では〈全国名酒〉に18銘柄,それにつづく〈全国優質酒〉に47銘柄が認定されている。

(1)白酒 中国では穀類を原料とする蒸留酒を白酒という。河北省青竜県の遺跡から金代,大定年間(1161-89)のものと推定される銅製蒸留機が出土していること,敦煌石窟中の西夏時代(1038-1227)の壁画に蒸留の絵があることなどから,11~12世紀ごろから蒸留酒のあったことが確実視されている。中国で最も愛飲される種類の一つで,その工場は全国各地に散在している。原料にコーリャンを用いたコーリャン酒が最も多く,これは白乾児(パイカル)とも呼ばれる。トウモロコシサツマイモも原料として多用されており,近年はタピオカ廃糖蜜を原料とする工場も現れている。白酒の多くはアルコール分50%以上の高濃度酒で,60~65%のものも少なくない。中では茅台酒(マオタイチユウ),汾酒(フエンチユウ)が日本でも有名であるが,これらとともに五糧液(四川省宜賓),剣南春(四川省綿竹),古井貢酒(安徽省亳県),洋河大曲(江蘇省泗陽),董酒(貴州省遵義),瀘州老窖(四川省瀘州)も全国名酒に選ばれている。また,全国優質酒には21銘柄がある。

(2)黄酒 中国では穀類を原料とする醸造酒を総称して黄酒という。ただし,ビールは除外される。華北,東北では主としてキビ米(もちアワ)を用いているが,南部地域ではもち米を主とし,うるち米も少量使われている。糖化剤には大麴,小麴が多く用いられているが,福建・浙江地方の紅酒には紅麴が使われている。紹興酒のように発酵だけでつくられるもののほか,発酵中に高濃度の白酒を添加するもの,仕込み水の代りに白酒を使うものもある。いずれも発酵後は圧搾ろ過し,火入れ殺菌してつぼに詰めて密封し,長期貯蔵によって香味の調熟をはかる。この調熟を陳醸と呼ぶ。いずれも淡黄色から褐色,あるいは紅色を呈するので,無色の白酒に対して黄酒の名がある。黄酒の中では紹興酒と沈缸酒(福建省竜岩)が全国名酒,ほかに11銘柄が全国優質酒になっている。

(3)啤酒 ビールのことである。中国のビール製造は,1903年創立の英独啤酒公司によって開始された。その後,中国資本の工場が15年に北京,20年に山東省烟台に創立されてから相次いで新工場ができ,現在では150余の工場がある。それらのうち,青島(チンタオ)啤酒は全国名酒に認定されている。

(4)ブドウ酒 中国の悠久な酒史からみると,ブドウ酒の出現は必ずしも早いとはいえない。張騫(ちようけん)が西方からブドウを伝えたとき,同時に醸造技術まで伝えられたか否かは不明だが,6世紀の北斉ではつくられていた。唐代には盛んにつくられるようになり,王翰の〈葡萄美酒夜光杯,欲飲琵琶馬上催〉をはじめ,ブドウ酒をよんだ詩は多い。中華人民共和国成立後はヨーロッパからブドウの優良な苗木と最新技術を導入して,品質の改良をはかっている。在来は糖分の多い甘口のものが多かったが,最近は辛口のテーブルワインも大量につくられ,外国輸出も行われている。山東省烟台,北京東郊,河南省民権の甘口の赤ブドウ酒,河北省沙城の辛口の白ブドウ酒は全国名酒に認定されている。

(5)果酒 ブドウ以外の果実類を原料とした果実酒で,種類が多い。おおむね,アルコール分13~14%から20%程度,糖分10%以上の甘口酒である。リンゴ酒,ミカン酒などのほか,ヤマモモレイシサンザシなどの酒の中には全国優質酒に認定されたものも多い。

(6)配製酒・薬酒 配製酒は,上記の白酒などを基酒に用い,これに草,花,果実などの香味を付与し,糖を加え,適当に着色したものである。竹葉青酒(ちくようせいしゆ)と呼ぶのは,白酒にタケの葉のほかに十数種の生薬(しようやく)を浸漬(しんし),その成分を浸出させたのち,糖液を加えたもので,汾酒を基酒に用いた山西省杏花村の竹葉青は全国名酒である。白酒以外にブドウ酒を基酒としたものも多く,その中では烟台の味美思(ベルモット)は全国名酒である。薬酒は,基酒に生薬を加えて成分を浸出させたもので,古来多くのものがつくられており,世界各地に輸出されているものもある。

(7)その他 ここに区分されるものはおもに外国起源の酒で,洋酒としている文献もある。白蘭地(ブランデー),威士忌(ウィスキー),金酒(ジン),俄斯克(ウォッカ),蘭母酒(ラム)などで,これらのうち烟台の金奨白蘭地は歴史も古く,全国名酒に数えられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中国酒」の意味・わかりやすい解説

中国酒
ちゅうごくしゅ

中国産の酒、またはその製法によりつくられた酒。長い文化の歴史をもち、広大な中国には各種の酒が昔の作り方のままで伝えられているものが多い。次のように大別される。(1)黄酒(ホワンチウ) 紹興酒(シャオシンチウ)に代表される醸造酒。黄色ないし褐色を呈する。熟成したものを老酒(ラオチウ)という。(2)白酒(パイチウ) 蒸留酒。無色透明である。(3)葡萄酒(プータオチウ) ワイン。(4)啤酒(ピーチウ) ビール。(5)葯酒(ヤオチウ) 薬酒。

 黄酒は穀類おもに糯米(もちごめ)、糯粟(もちあわ)を原料とし、麹(こうじ)にあたる麯子(きょくし)とで醸造する。浙江(せっこう)省紹興(シャオシン)地方主産の紹興酒が有名である。黄酒の工場は約50あるといわれる。蒸留酒の白酒の工場は350以上あるといわれる。コウリャンを原料とする高粱酒(カオリャンチウ)がもっとも多く、ほかにトウモロコシなどを用いるものもある。麯子には麦や小豆(あずき)の粉をこねてつくる餅麹(へいきく)が使われる。最近では麬麹(ふすまこうじ)が多く使われている。もろみは固形に近い状態で、穴蔵の中で密閉状態で発酵を行う中国独特の手法がとられ、このため特有の強烈な香りがある。茅台酒(マオタイチウ)(貴州省)、汾酒(フェンチウ)(山西省)、大酒(ターチユイチウ)(四川(しせん)省)が代表的で、アルコール分は60%前後と強いが、ストレートで飲む。葡萄酒は2000年に及ぶ歴史があるとされ、北京(ペキン)市や山東省が主産地で、甘口のものが多い。このほか果実酒や蒸留酒に果汁、果皮、花を漬けた露酒(ルーチウ)、漢方薬を浸した葯酒など多様である。

 中国政府が1953年第1回全国評酒会議で選出した八大銘酒は、白酒では山西汾酒(山西省)、貴州茅台酒(貴州省)、濾州(ルウチォウ)老窖特酒(ラオチィアオトーチュイチウ)(四川省)、陝西(せんせい)西鳳酒(シーフォンチウ)(陝西省)、黄酒では紹興酒(浙江省)、ワインでは烟台紅葡萄酒(イエンタイホンプータオチウ)(山東省)、リキュールでは烟台味美思(イエンタイウエイメイスー)(山東省)、ブランデーでは金奨白蘭地(チンチヤンパイランテイー)(山東省)などであった。79年の第3回評酒会議では18銘酒が選ばれた。

[秋山裕一]

『大谷惣助著『中国の酒』(1974・柴田書店)』

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百科事典マイペディア 「中国酒」の意味・わかりやすい解説

中国酒【ちゅうごくしゅ】

中国でいつから酒造が始まったかは明らかでないが,酒杯などの出土品から前2400年―前2000年ごろには行われていたことがわかっている。酒の種類は多いが,大別すると白酒,黄酒,ブドウ酒,果酒,配製酒,薬酒などがある。白酒は穀類を原料とする蒸留酒で,コーリャン酒が最も多い。中でも貴州省産の茅台酒(マオタイチュウ)や山西省産の汾酒(フェンチュウ)が名高い。黄酒は穀類を原料とする醸造酒でビール以外のもの。北部ではキビ米,南部ではもち米を主とし,紹興酒が知られる。ブドウ酒は唐代に盛んに作られ,現在ではヨーロッパから苗木や技術も導入されている。果酒はブドウ以外の果実を原料とした果実酒で,リンゴやミカン,ヤマモモ,レイシ,サンザシなどが使われる。配製酒は基酒に草,花,果実などの香りを加味したもので,白酒にタケの葉その他を浸した竹葉青酒(ちくようせいしゅ)が有名。基酒に生薬を浸した薬酒も数多い。
→関連項目ラオチュウ(老酒)

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飲み物がわかる辞典 「中国酒」の解説

ちゅうごくしゅ【中国酒】


中国産の酒類の総称。醸造酒黄酒(ホワンチュウ)、蒸留酒白酒(パイチュウ)などがある。代表的な黄酒に紹興酒(しょうこうしゅ)、白酒に茅台酒(マオタイしゅ)がある。

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