デジタル大辞泉 「醸造酒」の意味・読み・例文・類語
じょうぞう‐しゅ〔ヂヤウザウ‐〕【醸造酒】
[類語]蒸留酒・混成酒・合成酒・酒・
酒類の製造法による分類名の一種。原料をアルコール発酵させ,これをほぼそのままの状態で飲用するもので,清澄化のためのろ過などを除いては二次加工を行わないものをいう。世界の国々にはおおむねそれぞれ伝統的な醸造酒がある。代表的なものには,日本の清酒,中国の紹興酒(しようこうしゆ),フランスその他のブドウ酒やリンゴ酒,ドイツ,イギリスなどのビールなどがあり,ほかにヤシの樹液でつくる東南アジアのトディ,ウシ,ウマ,ヒツジ,ヤギなどの乳でつくるモンゴル,カフカスその他のクミズやケフィール,コショウ科低木の根を原料とするポリネシアのカバなども知られる。
醸造酒は単発酵酒と複発酵酒に大別される。前者は原料をそのまま発酵させてつくる酒で,酵母のはたらきで容易に発酵する糖分をふくんだブドウや動物の乳などを原料とした果実酒,乳酒,樹液酒などがそれである。これにたいし,穀類などのデンプン質原料を使う場合は,デンプンを一度糖にかえてから発酵させねばならない。このように糖化と発酵の2工程を必要とする酒を複発酵酒という。複発酵酒には2種あり,一つはビールのように,原料のデンプンを麦芽の酵素で糖化して麦汁(ばくじゆう)をつくり,これを発酵させてえられるもので,糖化,発酵の両工程が麦汁の煮沸によって切りはなされているので単行複発酵酒という。いっぽう,清酒や紹興酒などの東洋の伝統的な醸造酒は,カビを穀類に生やしたこうじを糖化剤としており,原料である穀物のデンプンをこうじの酵素で糖化すると同時に酵母で発酵させる。すなわち糖化と発酵が併行的に行われてできるので,このタイプの酒は併行複発酵酒と呼ばれる。醸造酒のアルコール分は,ブドウ酒で12%(容量百分比)前後,ビールで4%前後と,単発酵酒,単行複発酵酒のアルコール分は低いが,発酵中に次々とデンプンから糖分が補給される併行複発酵酒ではアルコール分20%に達するものをつくることができる。
→酒
執筆者:菅間 誠之助
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
発酵法によってつくられる酒の総称。酒類の製造法による分類で、蒸留酒、混成酒に対する用語。醸はもろみ(発酵したアルコール含有物)が膨らんで、ぶつぶつと湧(わ)く意を示すもので、みそ、しょうゆの製造も含め、このような工程を経るものを醸造といっている。清酒、どぶろく、ビール、紹興酒(シャオシンチウ)、マッカリのように穀類を原料とする場合は、麹(こうじ)や麦芽(ばくが)で糖化して発酵させ、そのままあるいは濾過(ろか)清澄したものを飲用する。また、ワインのように糖分を含む果汁を原料とする場合は、そのまま発酵させて酒をつくる。アルコール分は3~20%と蒸留酒に比して低いが、原料によってさまざまな風味を示し、また成分も多様である。
[秋山裕一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 日本の酒税法では,酒は〈アルコール分1度(容量比で1%)以上の飲料〉と定義され,液体に限らず糖類でアルコールなどの分子をくるんだ粉末状のものも酒とみなされるが,みそ,しょうゆのようにアルコールを1%以上含むものであっても嗜好(しこう)飲料として供しえないものは酒から除外されている。
【酒の種類】
酒は,製造法のうえから醸造酒,蒸留酒,混成酒の3種に分類されるが,日本の酒税法では清酒,合成清酒,焼酎,みりん,ビール,果実酒類,ウィスキー類,スピリッツ類,リキュール類,雑酒の10種類に分類される。なお酒税法上の種類名を製品に表示することが義務付けられている。…
※「醸造酒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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