デジタル大辞泉 「ウイスキー」の意味・読み・例文・類語
ウイスキー(whisky/whiskey)
[補説]語源はアイルランド語で、命の水の意。
[類語]酒・
蒸留酒の一種。オオムギ麦芽で穀類のデンプンを糖化、発酵させてもろみをつくり、蒸留して得られたスピリッツをホワイトオークの樽(たる)で熟成させ、その風味を特徴とする蒸留酒である。発芽させたオオムギ麦芽だけを原料とし、単式蒸留釜(がま)で蒸留したものをモルトウイスキー、発芽させた穀類のほか、未発芽の穀類(トウモロコシなど)を原料とし、連続蒸留機で蒸留したものをグレンウイスキーとよび、日本の酒税法ではともに原酒とし、両者の混合したもの、法定限度以内のアルコール、香味料や色素などを使用したものもウイスキーである。酒税については、日本では1989年(平成1)に級別制度が廃止され、従量税となった。
[秋山裕一]
ウイスキーということばは、ケルト語で「生命の水」という意のウシュク・ベーハーuisge beathaの変化したusquebaughからきており、このウスケボーからウイスキーになったといわれる。アイルランドとアメリカのウイスキーにはwhiskeyとeを入れて書く習いになっている。
蒸留という技術は、紀元前3世紀ごろ古代ギリシアのアリストテレスにより記述されており、アラビア人は錬金術の手段としてこれを実用化し、「アランビック」といった。これが世界の蒸留技術の起源と考えられている。東南アジア、中国や日本でも蒸留機のことをランビキといったり、蒸留酒のことをアラック、阿剌吉(あらき)と長い間よんできた。ヨーロッパでも蒸留機のことをアランビックといっている。しかし、蒸留酒のつくられたのは10世紀以後のことで、主として南ヨーロッパを中心に発達し、その土地に多い農産物を原料としていた。ラテン語でアクア・ビタaqua vitae、フランス語でオー・ド・ビーeau-de-vieとよばれ、いずれも「生命の水」の意をもつ。ウイスキーもケルト語の「生命の水」の意からきているが、ケルト人がどういう経路で蒸留技術を得たかは不明である。
ウイスキーの起源は明らかでないが、1170年ヘンリー2世のアイルランド遠征時には、すでにアイルランドで蒸留酒がつくられていたとされている。15世紀からはスコットランドでも記録が現れるが、現在のスコッチウイスキーの製造技術が確立したのは19世紀なかばである。18世紀前半の麦芽税、後半の相次ぐ増税、さらには小容量の釜の禁止などによって、小規模生産者は山中に隠れて麦芽だけを原料としてウスケボーをつくり、これがのちに樽熟成と結び付いてモルトウイスキーに発展した。モルトウイスキーでは麦芽乾燥時にピート(泥炭)でスモーキーフレーバー(燻煙(くんえん)香)をつけるが、これも乾燥に泥炭を使用した密造時代の名残(なごり)といえる。モルトウイスキーは単式蒸留機でアルコール濃度も低く蒸留され、樽熟成による風味の向上も著しかった。1826年ロバート・シュタイン、続いてコフィーによって連続式蒸留機(パテントスチル)が発明され(1831年特許)、これによって穀類を原料としたグレンウイスキーがつくられ始めた。グレンウイスキーはアルコール濃度を高く蒸留するので、非常に性質が落ち着いている。19世紀のなかば、ヨーロッパのブドウがフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)の虫害によって、ワイン、コニャックの生産が大打撃を受けたことや、性質の強いモルトウイスキーを温和なグレンウイスキーと混合することにより大量生産を可能として、さらに万人が受け入れやすい風味とすることにより、スコッチは世界的となった。1877年には、ウイスキー会社が集まって英国蒸留者協会(DCL)が発足し、政府と協力しつつ、次々と製造業者を吸収し、スコッチの五大ウイスキーメーカー(ホワイト・ラベル、ジョニー・ウォーカー、ブラック・アンド・ホワイト、ホワイト・ホース、ジョン・ヘイグ)がこれに参加して、当時ウイスキー取引の60%を抑えるまでに大きくなった。最近は、スコッチウイスキー会社の経営権の移転や資本参加など変動が大きい。一方、在来のモルトウイスキーの愛好者はこれを本物のウイスキーとし、1909年王室委員会で、今日のウイスキーの定義が決定されるまで、「ウイスキーとはなんぞや」の大論争が行われた。そして、イギリスでは、穀類を麦芽などで糖化し、発酵もろみをスコットランドで蒸留し、樫樽(かしたる)に3年以上貯蔵したものがスコッチウイスキーであるということで決着した。
ウイスキーはイギリスのほか各国で大量に生産されており、アイルランドではアイリッシュウイスキー、カナダではカナディアンウイスキーとして独得の発展をしている。アメリカではケンタッキー州バーボン郡でトウモロコシを主原料としたバーボンウイスキーが生まれ、今日、アメリカンウイスキーの代表的存在となっている。
日本では明治になってアルコールが輸入され、模造の清酒(後の合成清酒)やウイスキーなどがつくられたが、本格的なウイスキーは1924年(大正13)、寿屋(ことぶきや)山崎工場(現サントリー山崎蒸留所)において初めて製造された。建設当時の技師長竹鶴政孝(たけつるまさたか)は大阪高等工業学校(現大阪大学)醸造科を卒業後、大阪の摂津酒造の技師となったが、1918年スコットランドのグラスゴー大学に留学し、日本人として初めてウイスキーの製造法を学んだ。帰国後、寿屋の創始者鳥井信治郎(とりいしんじろう)のもとで、1923年山崎工場の建設に携わった。1929年(昭和4)サントリーウイスキー白札(しろふだ)が日本最初のウイスキーとして発売された。竹鶴はのちに独立して1931年北海道余市(よいち)に今日のニッカウヰスキー会社を創設した。また、神奈川県藤沢市にトミーウイスキーがあった。日本のウイスキーはスコッチウイスキーを師として発展したが、日本人の嗜好(しこう)にあわせ、また日本の原料事情を加味した製造研究がなされ、改良が加えられている。第二次世界大戦後は原料事情からウイスキー原酒との調合に、糖密(とうみつ)からとったニュートラルスピリッツが使用されていたが、1964年(昭和39)ごろからグレンウイスキーの製造も開始され、原酒の混和率も高まり、品質も向上し、ジャパニーズウイスキーとして、スモーキーフレーバーの軽い、水割りに向くようなライトなタイプとして成長している。1989年(平成1)の酒税法改正によりウイスキーの関税が引下げになり、輸入ウイスキーの価格は低下したが、高アルコール酒類の消費が世界的に減退しており、日本での消費も減少している。
[秋山裕一]
モルトウイスキーの製法は、オオムギを発芽させ、乾燥時にピートを燃やし、燻煙香をつける。乾燥麦芽は粉砕し、約4倍量の熱水を加えて、60~65℃に保ち、デンプンを糖化させ、25℃以下まで冷却して、酵母を加えて発酵させる。アルコール分7%内外のもろみが得られる。これをポットスチルで蒸留するが、初留釜と再留釜と2回の蒸留が行われ、中留区分のアルコール分65%内外の部分が、ホワイトオークの貯蔵樽に移され、3年以上の熟成を待つ。樽はシェリーやバーボンウイスキーの空き樽が使用されている。樽材から香味に関与する微量成分が浸出して、着色され、ウイスキー成分と反応し、風味が向上する。この風味のバランスをとり製品とする。ブレンド用のグレンウイスキーは、おもにトウモロコシを麦芽で糖化し、発酵させて、連続式蒸留機で蒸留されて(アルコール分93~94%)つくられる。
[秋山裕一]
原料別または産地別に分類される。
(1)原料別分類 麦芽のみを使用するものをモルトウイスキー、麦芽以外にトウモロコシやライムギを用いるものをグレンウイスキーという。また、モルトウイスキーとグレンウイスキーを混合したものをブレンデッドウイスキーという。
(2)産地別分類 スコッチウイスキー(イギリス)、アイリッシュウイスキー(アイルランド)、アメリカンウイスキー(アメリカ)、カナディアンウイスキー(カナダ)、ジャパニーズウイスキー(日本)などに分かれ、それぞれに独得の香味をもつ。
スコッチウイスキーは、穀類のもろみを蒸留したもので、麦芽で糖化し、酵母で発酵し、スコットランドで蒸留し、樽に3年以上貯蔵したものである。おびただしい数の銘柄があるが、日本ではジョニー・ウォーカー、ホワイト・ラベル、ホワイト・ホース、ジョン・ヘイグ、ブラック・アンド・ホワイトやキング・オブ・キングス、オールド・パーなどが古くから著名である。そのほか、ライトなタイプとしては、カティー・サーク、J&Bなど、純モルトウイスキーとしてはザ・グレンリベットなどが輸入されている。ラベルにたとえば12 years oldと記されている場合は、調合したウイスキーのうち、もっとも貯蔵年数の短いものの年数を示している。蒸留所の所在地によって、ハイランド(パース以北の高地帯、主産地)、ローランド(エジンバラ、グラスゴーなどローランド地方)、アイレー(アイレー島)、キャンベルタウンの四つに分けられる。
アイリッシュ(ストレート)ウイスキーはウイスキーの原型といわれ、特色は麦芽の乾燥にピートを用いないので煙臭がない。原料は麦芽、未発芽オオムギ、トウモロコシ、ライムギ、エンバクなどを混用し、大型のポットスチル式で蒸留を3回行う。オオムギ特有の香りがあり、味は軽い。近年はグレンウイスキーとブレンドされたブレンデッドウイスキーが多い。おもな銘柄にジョン・パワー、ジョン・ジェムソン、オールド・ブッシュミルズ、タラモア・デュウがある。
アメリカンウイスキーは多くの種類があるが、ほとんど強烈な性格のストレート・バーボンウイスキーとソフトなタイプのブレンデッドウイスキーである。ストレート・バーボンウイスキーは、原料に51%以上のトウモロコシを使用すること、貯蔵用樽は内面を焼いた新樽を用いることが規定されている。またサワー・マッシュという乳酸菌を用いる特有の発酵法をとるところもあり、バーボンの「こく」の一部はこの独特の発酵法によるとされている。ジャック・ダニエル、オールド・クローなどが有名である。
カナディアンウイスキーは、カナダでたくさんとれるムギやトウモロコシを使うもので、原料、製法ともにアメリカンウイスキーに似るが、蒸留法や熟成法の違いで世界のウイスキー中もっともライトなのが特色である。主要銘柄はカナディアン・クラブ、シーグラム、シェンレー、マックギネスなどである。
ジャパニーズウイスキーは基本的にはスコッチタイプであるが、日本人の嗜好を入れてスモーキーの香りを控え、さらに水割りの飲用が多いので、味、色調を主体につくられている。価格は原酒の混和率やアルコール度数など品質の差から格差がつけられている。成分的にはアルコール分が43%、40%、37~39%と三様に大別される。揮発成分では風味に関与する高級アルコール分(いわゆるフーゼル油分)は原酒に多く、したがって高価なものほど香味成分の含量が多い傾向であるが、蒸留法によっても微妙にその組成が異なり、タイプの特色を形づくっている。
[秋山裕一]
ウイスキーには特有の風味があるから、それを楽しみながら飲む。そのためには、そのままストレートで、ウイスキーグラス(30~60ミリリットル容)にウイスキーを入れ、傍らに冷たい水を置き、交互に飲むのがよい。「水割り」はウイスキーを2~5倍量の冷水で割ったものである。オンザロックはオールド・ファッション・グラス(120~180ミリリットル容)に氷片を入れて、この上からウイスキーを注ぐ。「シングル」または「ダブル」というのは、ジガー(計量カップ)に1杯(30ミリリットル)とか2杯のことをいい、ダブルのアルコール量が清酒の180ミリリットル(1合)、ビール大瓶1本に相当する。ハイボールhighballは、一般に蒸留酒またはアペリチフ、シェリーをソーダで割った飲み物をいうが、ウイスキーもハイボールにしてよく飲まれる。ウイスキーをベースにしたカクテルもいろいろあるが、マンハッタンは有名で、ウイスキーとベルモットを2対1の割合で混ぜ、ビターズ、氷片を加え、チェリー1個を飾り、レモンの香りをつけて供する。
[秋山裕一]
『梅棹忠夫・開高健監修『ウイスキー博物館』(1979・講談社)』▽『大塚謙一編『醸造学』(1981・養賢堂)』▽『ダイヤモンド社編・刊『ザ・スコッチウイスキー』(1982)』▽『杉森久英著『美酒一代』(1983・毎日新聞社)』▽『土屋守著『モルトウィスキー大全』(1995・小学館)』
オオムギ麦芽,あるいはこれに種々の穀類(オオムギ,コムギ,ライムギ,エンバク,トウモロコシ)を加えたものを原料とした蒸留酒。アルコール分40%内外。起源は明らかでないが,紀元前すでにアイルランドではケルト人が穀類の酒を蒸留していたとも伝えられる。しかし,今日のウィスキーの原型ともいうべきものが成立したのは12世紀ころのことであった。ウィスキーは〈生命の水〉を意味するゲール語のウシュクボーuisgebaugh,ウシュクベーハuisgebeathaから転じたものという。1171年イングランドのヘンリー2世がアイルランドを征服したさい,ウィスキーはスコットランドに伝えられた。15世紀にはハイランドでの製造が確立し,スコッチウィスキーはアイルランドのアイリッシュウィスキーと共存することとなった。アメリカでは,ヨーロッパ人の移住とともにウィスキー製造が伝えられ,18世紀の終りにはウィスキー製造は重要な産業となった。日本は現在,世界でも有数のウィスキー生産ならびに消費国となったが,本格的製造が始まったのは1920年代である。ウィスキーは原料によって,モルトウィスキーとグレーンウィスキーにわけられる。またスコッチ,アイリッシュ,アメリカン,カナディアンの4タイプに大別され,それぞれ原料や製造法によって独特の品質をもっている。ウィスキーの綴りにはwhiskyとwhiskeyとがあり,スコッチ,カナディアン,日本ではwhiskyを,アイリッシュとアメリカンはwhiskeyを用いている。
モルトウィスキーは麦芽のみを原料とするもので,スコッチがこれを代表する。スコッチのモルトウィスキーはオオムギ麦芽を用いて造るもので,普通は二条種オオムギの優良品種を約1週間かけて発芽させる。発芽といっても芽は穀粒の中で2/3ほどのもので,発根は外部に露出する。これをキルンで乾燥するが,その際,熱源としてコークスを用いるが,麦芽の1~2%に相当するピート(泥炭)をいぶす。この操作によって,スコッチ特有の薫臭がつくのだが,これはウィスキー製造業者が政府の増税策に対して行った抵抗運動の所産であった。すなわち,18世紀末イギリス国内のウィスキーの需要が急激に増大すると,政府は蒸留機の免許税を一挙に15倍にも引き上げた。この増税に怒った業者たちはハイランドの山中に隠れ,以後数十年間密造密売をこととしていたが,その間彼らは燃料の不足を補うためピートを用いた。そのため麦芽に煙香がしみこむことになり,それがスコッチウィスキーの特徴になったのである。こうしてできたモルト(乾燥麦芽)は脱根してから,粗く粉砕して糖化槽に入れ,温水を加えて45~60℃に保つと,約4時間でデンプンは麦芽糖に,タンパク質はアミノ酸に分解して糖化が終わる。この糖化液を80℃近くに加熱し,ろ過して固形分を除き,25~30℃に冷却して発酵タンクに送り,ウィスキー酵母を加えて発酵させる。発酵は約30時間で終わり,アルコール分6~8%の発酵液になる。これをポットスチルという単式蒸留機に送って蒸留する。まず大部分のアルコール分を回収して粗留液をとり,これを別のポットスチルで再留する。再留は時間経過によって初留,中留,後留に区分し,中留分だけをとり,初留,後留分は次の粗留液に加える。この中留分(アルコール分65%内外)がモルトウィスキーとなる部分で,ホワイトオークの樽に詰めて3年以上貯蔵する。初めは無色で香味も粗いが,貯蔵中しだいに着色し,香味もまるくふくよかになる。これを熟成といい,そのメカニズムはまだ不明の点も多いが,ウィスキー成分の部分的な変化,アルコールと水との会合の進行などとともに,とくに樽材の成分であるリグニンの溶出,分解が重要なものと考えられている。樽の大きさは500l入りくらい,シェリー酒の古樽が最適とされている。
19世紀半ばころまでのスコッチは,こうしたモルトウィスキーの,いわば生一本で,きわめて癖の強い地酒であり,かならずしも広く飲まれてはいなかった。それが現在のような声価を得るようになったのは,パテントスチルと呼ばれる連続式蒸留機によってグレーンウィスキーが量産されるようになった結果である。パテントスチルは,1831年ダブリンのコフィーAeneas Coffeyによって発明されたが,この蒸留機の出現によって,発芽してないオオムギ,ライムギ,エンバク,トウモロコシなどの穀類が,麦芽と混ぜることでそのまま原料として使えるようになった。こうして得られるアルコール分約94%の留液を加水して樽熟成すると香味の軽いものになる。これがグレーンウィスキーで,現在では加水してアルコール分60%程度にして,3年以上の熟成を行う決りになっている。
グレーンウィスキーが量産されるようになると,これをモルトウィスキーと調合,つまりブレンドして,ブレンデッドウィスキーを造るブレンダーという業者が誕生した。ブレンダーはそれぞれ秘密の処方をもち,数十種にも及ぶウィスキーをブレンドして製品とする。ブレンデッドウィスキーは,モルトだけのウィスキーにくらべて,軽く飲みやすいものになり,1860年ころからスコッチの主流を占めるようになった。
スコットランドには120余の蒸留所があり,そのうち14がグレーンウィスキーを造っている。これらの蒸留所はハイランド,ローランド,アイラ,キャンベルタウンの4地区にあり,とくにハイランドのスペー川流域には有名な蒸留所が多い。現在2500にも及ぶ銘柄のスコッチウィスキーが造られており,その大部分がブレンデッドウィスキーである。蒸留所の中で最大規模のDCL(ディスティラーズ社Distillers Co.Ltd.)は,77年グレーンウィスキーの量産をめざして当時の有力業者6社が結成した組織で,その後つぎつぎに業者を吸収し,ビッグファイブと呼ばれたヘイグHaig,デュアーDewar,ブキャナンBuchanan,ウォーカーWalker,ホワイトホースWhite Horseの5社も傘下にある。
ブレンデッドウィスキーにはスタンダード物とプレミアム物がある。いずれもモルトの配合率は30~40%とされているが,プレミアム物は熟成年数の多いモルトの配合率を高くしたものである。日本で人気のある銘柄を挙げると,スタンダード物ではホワイトホース,カティーサーク,ジョニーウォーカー赤,J&B,バランタイン,プレミアム物ではジョニーウォーカー黒,オールドパー,シーバスリーガル,ディンプル,ローガンなど。モルトウィスキーだけの製品はシングルモルト,ピュアーモルトなどと表示され,日本で知られているものにグレンフィディック,スプリングバンク,ブリタニア,グレンリベット,モートラックなどがある。
アイルランドで生産される。ウィスキーの原型ともいうべきもので,12世紀にすでに造られていた。16世紀に盛んになり,1000以上の蒸留所があったが,その後は酒税に耐えきれず,100以下に減少し,1921年にはスコッチの伸長,アメリカの禁酒法などの影響で衰微して,最近では4蒸留所のみとなった。アイリッシュの特徴は麦芽の乾燥にピートを用いないので煙香がなく,また発芽していないオオムギ,エンバクを麦芽で糖化,発酵させることにある。蒸留も独特の大きな釜を用いる。第1回の蒸留で平均50%アルコール液をとり,これを再留するので,得られる中留区分はアルコール分が70~75%でスコッチより高い。樽熟成は3年以上で,以前は12年物が普通であり,ブレンドは行わなかった。
19世紀以降に製造が始まり,かつてはオンタリオだけで200以上の蒸留所があった。今日ではシーグラムとハイラムウォーカーの二大企業を含めて27の蒸留所となっている。
カナディアンウィスキーは,主原料としてコーン(トウモロコシ),ライムギを用い,オオムギ麦芽で糖化,発酵し連続式蒸留を行い,2種類の原酒を造る。一つはアメリカンウィスキーに似た香味の強いものでフレーバリングと呼ばれ,もう一方はより軽いものでベースといわれる。この両者をブレンドし,ホワイトオークの樽で3年以上熟成させることになっており,普通は6年以上のものを使っている。
カナディアンウィスキーの特徴は味がライトで香りもデリケートである。銘柄としてはシーグラム,カナディアンクラブなどが日本では知られている。
アメリカのウィスキー生産は,18世紀末すでに西部を中心に蒸留所5000を数えるほどの盛況であったが,独立戦争後課税問題から紛争が起こり,蒸留者たちは追及の手をのがれて辺地に移った。その一部がケンタッキーのバーボン郡で造りはじめたものから,アメリカのウィスキーを代表するバーボンウィスキーは発祥している。現在バーボンは9州で生産され,銘柄は2000以上になるが,これは法律によって,コーンを原料の51%以上使ったものをバーボンウィスキーとしているためである。その中で本場物ともいうべきは,もちろんケンタッキー産である。バーボン以外では,ライムギ,コムギ,オオムギ麦芽,ライムギ麦芽をそれぞれ原料の51%以上用いたものを,ライウィスキー,ホイートウィスキー,モルトウィスキー,ライモルトウィスキーと呼ぶ。バーボン以下,いずれも蒸留液のアルコール度の規格と,新しいホワイトオークの樽の内面を焦がしたものに詰めて,2年間貯蔵熟成することが条件となっている。以上のほかに,バーボンと同じくコーンを主原料とするコーンウィスキーがあるが,これはコーンを80%以上使い,貯蔵用の樽には焦がさないものか,焦がしたものの古樽を用いることになっている。また,テネシー州産のテネシーウィスキーは,法的にはバーボン扱いであるが,商習慣上はバーボンと区別されている。蒸留後サトウカエデの炭でろ過するもので,独特の芳純さをもつ高級品とされる。なお,上記の各種で2年以上の熟成を行ったものは,ストレートバーボン,ストレートライのようにストレートウィスキーと呼ばれ,これに中性アルコールなどを配合したものをブレンデッドウィスキーと称している。
日本にウィスキーが輸入されたのは明治初年で,明治末期には模造品が製造されていた。第1次世界大戦後,竹鶴政孝はスコットランドに留学し,スコッチの製法を習得して帰国し,寿屋(現,サントリー)の鳥井信治郎に迎えられた。京都郊外の山崎に工場を建設し,1924年から蒸留を始め,29年に国産ウィスキー第1号が誕生した。竹鶴は34年に独立し,ニッカウヰスキーを40年に発売した。第2次大戦後,ウィスキー製造会社が続出したが,現在ではサントリー,ニッカウヰスキー,三楽オーシヤン,キリン・シーグラムの4社で大部分のシェアを占める(ほかに免許場数は30くらいある)。
日本のウィスキーはスコッチタイプで,酒税法上,モルト原酒の混和率とアルコール分によって特級,一級,二級の区分がある。原酒の混和率は特級が30%以上,一級は27~20%,二級は17~10%となっている。ほとんどがブレンデッドウィスキーで,アルコール分は特級43%以上,一級43~40%,二級40%未満である。
ウィスキーの生産量,消費量は,ともに世界中でアメリカが最も多い。生産されるアメリカンウィスキーはそのほとんどが国内で消費されており,1976年では44万kl強であった。同じ年度にスコッチ22万kl強,カナディアン20万kl弱を輸入している。スコッチの生産量は81年ではモルトウィスキーが16.7万kl,グレーンウィスキーが21.4万klであった。日本では81年度に33万kl余を生産しており(一部輸入バルクも含まれている),ほかに輸入瓶詰品もあるので,世界でも有数のウィスキー消費国である。
ウィスキーの飲み方は,ストレートで飲み,次いでチェーサー(追い水)を飲むのが基本であるが,アメリカ的なオンザロック,水割り,炭酸割りが普及している。カクテルにもマンハッタンをはじめウィスキーをベースにしたものがある。
執筆者:大塚 謙一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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… 日本の酒税法では,酒は〈アルコール分1度(容量比で1%)以上の飲料〉と定義され,液体に限らず糖類でアルコールなどの分子をくるんだ粉末状のものも酒とみなされるが,みそ,しょうゆのようにアルコールを1%以上含むものであっても嗜好(しこう)飲料として供しえないものは酒から除外されている。
【酒の種類】
酒は,製造法のうえから醸造酒,蒸留酒,混成酒の3種に分類されるが,日本の酒税法では清酒,合成清酒,焼酎,みりん,ビール,果実酒類,ウィスキー類,スピリッツ類,リキュール類,雑酒の10種類に分類される。なお酒税法上の種類名を製品に表示することが義務付けられている。…
…酒造法(1953公布)で決められている酒類(アルコール分を1%以上含む飲料および溶かした場合アルコール1%以上となる粉末)を製造する産業。 1995年度の酒類の出荷量(課税移出量)をみると,清酒130万kl,焼酎(しようちゆう)68万kl,ビール698万kl,ウィスキーおよびブランデー18万kl,果実酒類17万kl,その他合成清酒,みりん,リキュールなどで,総出荷量は1000万klとなっている。 現在の産業構造の特徴としては,ビール,ウィスキーといった明治以降に日本で本格的に製造されるようになった洋酒類は,少数の大企業によって近代的な大工場で生産・販売がなされ,寡占化が進んでいるが,清酒,焼酎(とくに乙類)など江戸期以前からある酒類については,大企業もあるが多くは多数の小企業によって製造されていることである。…
…(7)その他 ここに区分されるものはおもに外国起源の酒で,洋酒としている文献もある。白蘭地(ブランデー),威士忌(ウィスキー),金酒(ジン),俄斯克(ウォッカ),蘭母酒(ラム)などで,これらのうち烟台の金奨白蘭地は歴史も古く,全国名酒に数えられている。【鈴木 明治】。…
※「ウイスキー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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