中村福助(読み)なかむらふくすけ

改訂新版 世界大百科事典 「中村福助」の意味・わかりやすい解説

中村福助 (なかむらふくすけ)

歌舞伎俳優。(1)初世 4世中村芝翫の前名。2世中村富十郎の門弟中村富四郎の子が,中村玉太郎,政之助を経て,4世中村歌右衛門の養子となり,1839年(天保10)に福助改名。60年(万延1)まで名のった。(2)2世(?-1867(慶応3)) 初世の弟が,1861年(文久1)から67年(慶応3)まで名のった。容姿がよく,和事を最も得意とした。

 こののち,1868年に東西で同時に3世福助を襲名したため,中村歌右衛門または中村芝翫の前名としての〈成駒屋系〉の福助と,中村梅玉の前名としての〈高砂屋系〉の福助とができた。

(1)3世(1846-88・弘化3-明治21) 2世の門弟。のち4世芝翫の養子となり福助を名のって若衆方で評判だったが,1872年に離縁となって中村寿蔵と改名した。(2)4世 5世中村歌右衛門の前名。(3)5世(1900-33・明治33-昭和8) 5世歌右衛門の長男(養子)。本名中村慶次。1916年に2世中村児太郎から福助を襲名し,美貌の若女方と期待され,〈慶ちゃん〉と親しまれたが,早世した。(4)6世 6世中村歌右衛門の前名。(5)7世 7世中村芝翫の前名。(6)8世(1946(昭和21)- ) 6世歌右衛門の養子が1967年に福助を襲名。92年4世中村梅玉を襲名。(7)9世(1960(昭和35)- ) 7世中村芝翫の長男。1967年に5世中村児太郎を襲名。92年(平成4)中村福助を襲名。

(1)3世 2世中村梅玉の前名。(2)4世 3世中村梅玉の前名。(3)5世(1910-69・明治43-昭和44) 3世梅玉の長男。1935年3世中村政治郎から福助を襲名した。4世以外は立役もしくは敵役を得意とした。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中村福助」の意味・わかりやすい解説

中村福助
なかむらふくすけ

歌舞伎(かぶき)俳優。東京の成駒(なりこま)屋系と大阪の高砂(たかさご)屋系の2系列ある。

(1)成駒屋系 〔初世〕4世中村芝翫(しかん)の前名。〔2世〕(1839―67)4世芝翫の弟。立役(たちやく)と女方(おんながた)を兼ねた。〔3世〕(1846―88)4世芝翫の養子。1868年(明治1)3世福助を継ぐが、のち離縁されて中村寿蔵、十蔵、寿太郎と改名し、田舎(いなか)回りの俳優になる。〔4世〕5世中村歌右衛門(うたえもん)の前名。〔5世〕(1900―33)5世歌右衛門の長男(養子)。本名中村慶次。1916年(大正5)5世福助を襲名。美貌(びぼう)の女方で立役もできたが早世した。〔6世〕6世歌右衛門の前名。〔7世〕7世芝翫の前名。〔8世〕(1946― )6世歌右衛門の甥(おい)、のちに養子。1967年(昭和42)加賀屋福之助から8世を襲名。92年(平成4)4世中村梅玉を襲名した。〔9世〕(1960― )7世芝翫の長男。1992年(平成4)、5世中村児太郎から9世を襲名。若女方(わかおんながた)として活躍している。

(2)高砂屋系 初世、2世は(1)に同じ。〔3世〕2世中村梅玉(ばいぎょく)の前名。〔4世〕3世梅玉の前名。〔5世〕(1910―69)3世梅玉の養子。1935年(昭和10)5世を襲名。

服部幸雄


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新撰 芸能人物事典 明治~平成 「中村福助」の解説

中村 福助(5代目)
ナカムラ フクスケ


職業
歌舞伎俳優

本名
中村 慶次

別名
初名=中村 児太郎(2代目)(ナカムラ コタロウ),俳号=梅莟,啾雨

屋号
成駒屋

生年月日
明治33年 5月10日

出生地
東京

経歴
東京の成駒屋中村福助の5代目(高砂屋福助は別人)。明治37年2代目中村児太郎を名乗り「仮名書太平記」で初舞台。大正5年「娘道成寺」の白拍子で5代目福助を襲名。美貌と気品をそなえ、若女形を得意とした。

没年月日
昭和8年 8月11日 (1933年)

家族
養父=中村 歌右衛門(5代目),弟=中村 歌右衛門(6代目),息子=中村 芝翫(7代目)


中村 福助(5代目)
ナカムラ フクスケ


職業
歌舞伎俳優

本名
笹木 徳太郎

別名
初名=中村 政治郎(3代目)

屋号
高砂屋

生年月日
明治43年 8月1日

出生地
大阪府 大阪市南区東清水町

経歴
大阪の高砂屋中村福助の5代目(成駒屋福助は別人)。大正5年3代目中村政治郎を名乗り中座で初舞台。昭和10年「石田局」奴矢田平役で5代目福助を襲名。11〜14年第一次東宝劇団に加わる。26年から中村吉右衛門一座に所属した。

没年月日
昭和44年 1月1日 (1969年)

家族
父=中村 梅玉(3代目)


中村 福助(3代目)
ナカムラ フクスケ


職業
歌舞伎俳優

別名
初名=中村 政之助,前名=中村 政治郎,後名=中村 寿蔵(ナカムラ ジュゾウ),中村 寿太郎

屋号
成駒屋

生年月日
弘化3年

出生地
大坂(大阪府)

経歴
2代目中村福助の門弟、のち4代目芝翫の養子となり、明治元年3代目中村福助(成駒屋系)を襲名。「富貴自在魁曾我」「三代記」などに出演し評判を得た。5年離縁となって中村寿蔵と改名、11年には中村寿太郎となり春木座で「門松宝双六」に出演。その後、顔に大火傷を負い田舎回りの俳優となった。敵役から女形まで演じる芸達者であった。

没年月日
明治21年 5月5日 (1888年)

出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報

20世紀日本人名事典 「中村福助」の解説

中村 福助(5代目)
ナカムラ フクスケ

大正・昭和期の歌舞伎俳優



生年
明治43(1910)年8月1日

没年
昭和44(1969)年1月1日

出生地
大阪府大阪市南区東清水町

本名
笹木 徳太郎

別名
初名=中村 政治郎(3代目)

屋号
高砂屋

経歴
大阪の高砂屋中村福助の5代目(成駒屋福助は別人)。大正5年3代目中村政治郎を名のり中座で初舞台。昭和10年「石田局」奴矢田平役で5代目福助を襲名。11〜14年第一次東宝劇団に加わる。26年から中村吉右衛門一座に所属した。


中村 福助(5代目)
ナカムラ フクスケ

明治〜昭和期の歌舞伎俳優



生年
明治33(1900)年5月10日

没年
昭和8(1933)年8月11日

出生地
東京

本名
中村 慶次

別名
初名=中村 児太郎(2代目)(ナカムラ コタロウ),俳号=梅莟,啾雨

屋号
成駒屋

経歴
東京の成駒屋中村福助の5代目(高砂屋福助は別人)。明治37年2代目中村児太郎を名のり「仮名書太平記」で初舞台。大正5年「娘道成寺」の白拍子で5代目福助を襲名。美貌で気品をそなえ、若女方を得意とした。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「中村福助」の解説

中村福助(成駒屋・9代) なかむら-ふくすけ

1960- 昭和後期-平成時代の歌舞伎役者。
昭和35年10月29日生まれ。7代中村芝翫(しかん)の長男。3代中村橋之助の兄。昭和42年5代中村児太郎を名のり「野崎村」で初舞台。58年伝統歌舞伎保存会会員。平成4年9代中村福助を襲名。17年「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」の墨染(すみぞめ)役,「嫗山姥(こもちやまんば)」の八重桐(やえぎり)役で芸術院賞。7代中村歌右衛門の襲名(26年3月)が決まる。東京都出身。本名は中村栄一。

中村福助(成駒屋・5代) なかむら-ふくすけ

1900-1933 明治-昭和時代前期の歌舞伎役者。
明治33年5月10日生まれ。5代中村歌右衛門の養子。2代中村児太郎(こたろう)を名のり,明治37年初舞台。大正5年東京歌舞伎座で5代を襲名。美貌(びぼう)の若女方をつとめた。舞踊にもすぐれ,羽衣会を主宰。昭和8年8月11日死去。34歳。東京出身。本名は中村慶次。俳名は梅莟,啾雨。屋号は成駒屋。

中村福助(高砂屋・5代) なかむら-ふくすけ

1910-1969 大正-昭和時代の歌舞伎役者。
明治43年7月21日生まれ。2代中村梅玉の子。3代中村梅玉の養子となる。大正5年大阪中座で初舞台。昭和10年3代中村政次(治)郎から5代福助を襲名。第1次東宝劇団,関西歌舞伎をへて,26年初代中村吉右衛門一座に属する。時代物の敵役(かたきやく)を得意とした。昭和44年1月1日死去。58歳。大阪出身。本名は笹木元晴。屋号は高砂屋。

中村福助(成駒屋・3代) なかむら-ふくすけ

1846-1888 幕末-明治時代の歌舞伎役者。
弘化(こうか)3年生まれ。2代中村福助の門弟。のち4代中村芝翫(しかん)の養子となったが離縁,13代中村勘三郎に入門。慶応4年3代福助を襲名。和実,敵役(かたきやく),女方を得意とした。明治21年5月5日死去。43歳。大坂出身。初名は中村政之助。前名は中村政次郎(2代)。後名は中村寿蔵。屋号は成駒屋。

中村福助(成駒屋・2代) なかむら-ふくすけ

1839-1867 幕末の歌舞伎役者。
天保(てんぽう)10年生まれ。初代中村福助の弟。文久元年2代福助を襲名。容姿がよく,和事を得意とした。慶応3年8月6日死去。29歳。前名は中村政次(二)郎。俳名は芝童,獅童。屋号は成駒屋。慶応4年江戸と大坂で同時に3代中村福助を襲名したため,江戸の成駒屋系と大坂の高砂屋系の福助ができた。

中村福助(成駒屋・4代) なかむら-ふくすけ

中村歌右衛門(なかむら-うたえもん)(5代)

中村福助(高砂屋・3代) なかむら-ふくすけ

中村梅玉(なかむら-ばいぎょく)(2代)

中村福助(高砂屋・4代) なかむら-ふくすけ

中村梅玉(なかむら-ばいぎょく)(3代)

中村福助(成駒屋・初代) なかむら-ふくすけ

中村芝翫(なかむら-しかん)(4代)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中村福助」の意味・わかりやすい解説

中村福助(5世,成駒屋)
なかむらふくすけ[ごせい・なりこまや]

[生]1900.5.10.
[没]1933.8.11.
歌舞伎俳優。屋号は成駒屋。本名中村慶次。5世中村歌右衛門の養子。2世児太郎を経て,1916年 5世を襲名。容貌に恵まれ,気品のある真女方として将来を嘱望されたが 33歳で夭折した。

中村福助(2世)
なかむらふくすけ[にせい]

[生]?
[没]慶応3(1867)
歌舞伎俳優。4世中村芝翫の弟。屋号新駒屋。文久1 (1861) 年に襲名。なお,2世の没後東京と関西に福助の名ができ,前者を成駒屋系,後者を高砂屋福助として区別する。

中村福助(3世,成駒屋)
なかむらふくすけ[さんせい・なりこまや]

[生]弘化3(1846)
[没]1892.5.5.
歌舞伎俳優。屋号は成駒屋。2世福助の門弟,のちに 4世中村芝翫の養子2世中村政治郎が明治1(1868)年に襲名。

中村福助(5世,高砂屋)
なかむらふくすけ[ごせい・たかさごや]

[生]1910.8.1.
[没]1969.1.1.
歌舞伎俳優。屋号は高砂屋。本名笹木徳太郎。3世中村梅玉の長男。1935年襲名。敵役に味があった。

中村福助(9世)
なかむらふくすけ[きゅうせい]

[生]1960.10.29. 東京
歌舞伎俳優。屋号は成駒屋。本名中村栄一。7世中村芝翫の長男。 1992年中村児太郎より襲名。若手女方の1人。

中村福助(1世)
なかむらふくすけ[いっせい]

「中村芝翫(4世)」のページをご覧ください。


中村福助(3世,高砂屋)
なかむらふくすけ[さんせい・たかさごや]

「中村梅玉(2世)」のページをご覧ください。


中村福助(4世,成駒屋)
なかむらふくすけ[よんせい・なりこまや]

「中村歌右衛門(5世)」のページをご覧ください。


中村福助(4世,高砂屋)
なかむらふくすけ[よんせい・たかさごや]

「中村梅玉(3世)」のページをご覧ください。


中村福助(6世)
なかむらふくすけ[ろくせい]

「中村歌右衛門(6世)」のページをご覧ください。


中村福助(7世)
なかむらふくすけ[ななせい]

「中村芝翫(7世)」のページをご覧ください。


中村福助(8世)
なかむらふくすけ[はっせい]

「中村梅玉(4世)」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

367日誕生日大事典 「中村福助」の解説

中村 福助(5代目・成駒屋) (なかむら ふくすけ)

生年月日:1900年5月10日
明治時代-昭和時代の歌舞伎役者
1933年没

中村 福助(5代目) (なかむら ふくすけ)

生年月日:1910年7月21日
大正時代;昭和時代の歌舞伎俳優
1969年没

中村 福助(9代目) (なかむら ふくすけ)

生年月日:1960年10月29日
昭和時代;平成時代の歌舞伎俳優(女方)

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の中村福助の言及

【中村梅玉】より

…1848年(嘉永1)初舞台。何人かの師についたが,68年(明治1)興行師三栄の仲介で3世中村福助(高砂屋系)を襲名,以後人気技量ともに進み,明治30年代には関西の中心的存在となった。1907年梅玉を襲名。…

【中村福助】より

…歌舞伎俳優。(1)初世 4世中村芝翫の前名。2世中村富十郎の門弟中村富四郎の子が,中村玉太郎,政之助を経て,4世中村歌右衛門の養子となり,1839年(天保10)に福助と改名。60年(万延1)まで名のった。(2)2世(?‐1867(慶応3)) 初世の弟が,1861年(文久1)から67年(慶応3)まで名のった。容姿がよく,和事を最も得意とした。 こののち,1868年に東西で同時に3世福助を襲名したため,中村歌右衛門または中村芝翫の前名としての〈成駒屋系〉の福助と,中村梅玉の前名としての〈高砂屋系〉の福助とができた。…

【中村歌右衛門】より

…俳名魁玉。4世中村福助から5世芝翫となり,1911年歌右衛門をつぐ。明治後期から昭和初期にかけての代表的な女方。…

【日本舞踊】より

…しかし理想が高すぎ,規模があまりに壮大だったため実現せずに終わった。しかし大正に入ると,逍遥のまいた種は新舞踊運動となって展開,藤蔭静枝(藤蔭静樹)の〈藤蔭会(とういんかい)〉,五条珠実(1899‐1987)の〈珠実会〉,花柳寿美の〈曙会〉など女流舞踊家による新舞踊の会が発足,また2世市川猿之助,5世中村福助の〈羽衣会〉,2世花柳寿輔の〈花柳舞踊研究会〉なども新しい動きをみせた。
[種類と流派]
 歌舞伎舞踊は大きく〈儀式舞踊〉〈劇舞踊〉〈風俗舞踊〉の3種に類別できるが,また題材別に見ると,〈祝儀物〉〈三番叟物〉〈道成寺物〉〈石橋物(獅子物)〉〈浅間物(あさまもの)〉〈狂乱物〉〈変化物〉〈松羽目物〉等になる。…

※「中村福助」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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