中国風のめん類,めん料理の日本での呼称。めんとは,日本のうどん,朝鮮半島の冷麵や,イタリアのパスタ類のように小麦粉を原料としてつくる細長い線状の食品を指すことが多い。中国の粉食を大別すると,米粉を原料にした餌と小麦粉を原料とする餅がある。餌の歴史は古く周代に見られるが,餅はそれより新しく,めんが製法とともに見られるのは6世紀の《斉民要術》が最初である。めんが細長いものであることを示すのは唐代になってからで,子どもが生まれたときに長寿を祈ってめんを食べる習慣が出てきてからである。中国のめんは製造時にアルカリを加えることで他のめん類と異なる。アルカリを加えると小麦粉は瞬間的に淡黄色に変わり,特有の香りを出し,肌はなめらかになって引きを増す。アルカリは中国では西北地方産の碱という天然ソーダを用いるが,日本では炭酸カリウム,リン酸ナトリウム,炭酸ナトリウムなどの混合水溶液(梘水(かんすい))を使用している。
めんの種類には次のものがある。(1)拉麵(ラーメン) 拉は引きのばす意で,中国めんの代名詞のようにいわれる。日本の手延べそうめんに似る。(2)切麵 刃物を用いてつくるめん。掛麵は乾麵のことで竿に掛けて乾かすことからきている。(3)裙帯麵 きしめんに似たもの。寛麵条,鳳尾麵条ともいう。(4)銀糸麵・竜鬚麵 南方に多く,そうめんのように細いめん。(5)翡翠麵 ホウレンソウの汁を加えて作った緑色のめんで四川省の名物。(6)伊府麵(広東蛋麵) 卵と水または卵だけでこねためん。めんは卵を加えると弾性を増し,ゆで汁の溜りが少なくなる。広東の伊という家でつくられたといわれる。
以上のほか楡樹麵,鰻麵などがある。調理法による種別には汁の多い湯麵,いためそばの炒麵,揚げそばの炸麵,中国には少ないが冷やしそばの涼麵,肉やネギ,シイタケ,みそを油でいためたものをかけて食べる炒醬麵,炸醬麵などがある。中国でそばをめんにして食べる習慣はほとんどないが,山西省では一般化しており,春雨のように押出式製めんが多い。
執筆者:田中 静一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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