正式には「ベトナムに平和を!市民連合」という。1965年(昭和40)4月に発足した、ベトナム戦争反対の市民運動体(解散は74年1月)。代表は作家の小田実(おだまこと)。それまでの平和運動が既成政党によって系列化し、有効性を欠いていたときに、多くの知識人や無党派の市民を結集し、徹夜ティーチイン、『ニューヨーク・タイムズ』紙などへの反戦広告、日米共同デモ、反戦米脱走兵への援助、在日米軍基地内での反戦運動の組織など、ユニークな活動を展開し、その新鮮さと大衆性、一定のラジカルさによって影響力をもち、多くの若者層を結集した。組織は会員制をとらず、自発的な参加を求め、最盛時には全国で300以上のグループが生まれた。また60年代末には、労働者の反戦青年委員会や学生の「全共闘」、新左翼諸党派と、反戦の共同行動を組織し、都心で数万のデモを行ったりした。ベ平連の運動と組織のあり方は、その後の市民運動・住民運動にも影響を与えた。
[吉川勇一]
『小田実著『「ベ平連」・回顧録でない回顧』(1995・第三書館)』▽『R・H・ヘイブンズ著、吉川勇一訳『海の向こうの火事――ベトナム戦争と日本 1965~1995』(1990・筑摩書房)』
正式の名称を〈ベトナムに平和を!市民連合〉という。1960年代後半から70年代にかけて活動したベトナム反戦の市民運動体。代表は作家の小田実,事務局長は66年から解散まで吉川勇一である。1965年2月のアメリカ軍による大規模な北ベトナム爆撃の開始に抗議し,4月24日,小田実,開高健,鶴見俊輔,いいだ・もも,高畠通敏らの呼びかけたデモが,東京の清水谷公園で行われ(参加1500人),〈ベ平連〉が発足した。その後,徹夜ティーチイン(1965年8月14~15日),《ニューヨーク・タイムズ》紙への反戦広告掲載(同年11月16日),〈日米市民会議〉(1966年8月),反戦脱走米兵への援助(最初は1967年11月,米空母イントレピッド号からの4水兵の国外脱出援助),米軍基地内での地下反戦組織の結成,《週刊アンポ》の発行(1969年11月~70年6月),毎月1回の定例反戦デモなど,ユニークな活動をつぎつぎと展開した。組織は会員制をとらず,自発性を重んじ,68-69年には全国に300以上ものベ平連グループができた。69年6月15日にはベ平連など市民団体が中心となり,反戦青年委員会や全共闘,新左翼諸党派などを結集する7万の反戦デモを組織,政府や既成革新勢力に衝撃を与えた。ベ平連の運動と組織は,それ以後のさまざまな市民・住民運動の運動や組織形態に大きな影響を与え,74年1月26日に解散した。
→ベトナム反戦運動
執筆者:吉川 勇一
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…60年代から70年代にかけて,ベトナム戦争をはじめ人権,消費者,環境,エネルギー・資源問題などで社会的亀裂が広がるにつれて,意見広告は産業界ばかりでなく,市民団体も積極的に行うようになってきた。日本のベ平連が《ニューヨーク・タイムズ》に反戦広告を初めて掲載したのは65年である。70年代初頭のアメリカ産業界の広告は環境対策に集中,73‐74年の石油危機の際は,エネルギー・資源問題が中心テーマとなったが,意見広告はその時点の社会的課題を描き出している。…
… この時期の運動の特徴としては,(1)高度成長により都市の大衆社会化がすすむなかで,運動が展開される社会的・経済的基盤が整った,(2)市民的自由の侵害に敏感に反応する自覚的市民が育った,(3)彼らは既成政党・労組のセクト主義・官僚主義・出世主義に批判的な無党派市民で,少数派としての運動に誇りをもっていた,(4)上からの指示や財政援助がない自まえの運動のため,市民自治能力を身につけねばならなかった,(5)民主的諸制度を活用して自由の枠を広げ,横断的な市民の連帯を模索した,などがあげられる。 1965年に発足した反戦市民組織〈ベトナムに平和を!市民連合〉(ベ平連)は,60年安保の経験と蓄積に立って,市民運動を飛躍的に前進させた。日米同時デモ,ティーチインなどの国際連帯や,絶叫型でないふだん着の運動スタイルで,運動に新風を吹き込んだ。…
※「ベ平連」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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