1922年生まれ。父は政治家で作家の
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哲学者、思想家。東京生まれ。祖父は政治家の後藤新平(ごとうしんぺい)、父は政治家で作家の鶴見祐輔(ゆうすけ)(1885―1973)、社会学者の鶴見和子(かずこ)(1918―2006)は姉。第二次世界大戦中の1942年(昭和17)、ハーバード大学在学中に移民法違反の容疑でFBIに逮捕されたが、留置中に卒業論文「ウィリアム・ジェイムズのプラグマティズム」を書き上げ、同年、同大学哲学科を卒業、捕虜交換船で帰国する。その後、海軍嘱託となるが、病気のため内地に送還され、敗戦を迎えた。1946年(昭和21)、都留重人(つるしげと)、丸山真男(まるやままさお)らと雑誌『思想の科学』を創刊。創刊当初は、積極的に欧米思想、とりわけプラグマティズムと論理実証主義を紹介し、実質的にその編集を主導した。1949年京都大学助教授、1954年東京工業大学助教授となるが、1960年日米安全保障条約決議に反対して辞職。1961年から1970年まで同志社大学教授を務め、以後、評論活動を中心に活躍する。アメリカの生活と思想に根ざしたリベラリズムの立場から戦後日本を代表するオピニオン・リーダーの一人となるが、その思想の核に据えられたものは戦争の記憶であった。『共同研究転向』(1959~1962)に代表される知識人批判には「知識人はいかにして戦争に加担してしまったか」という反省が基本的動機としてあり、またこれと対(つい)をなす、かるた、らくがき、映画、ラジオ、漫画、大衆小説、流行歌、漫才などの限界芸術・大衆文化への注目は「人びとはいかにして戦争を阻止しうるか」という問題意識に動機づけられていた。とりわけ後者の視点は、「人びと」の日常生活やハビトゥス(生活感覚)にまで「下降」しつつ、民衆意識や大衆文化の研究に大きな成果を生んだ。と同時に、人々の集まり(サークル)の意義にも注目した。研究対象として「サークル」に注目するだけでなく、研究組織においても共同研究を重視し、「記号の会」、「転向研究会」、「家の会」、「現代風俗研究会」などの重要なメンバーとなった。この手法は市民運動にも生かされ、1960年の「声なき声の会」、1965年の「ベトナムに平和を!市民連合(ベ平連)」を生み出すことになる。いわゆる「戦後知識人」といわれる人々のなかで、「ふつうの人びと」の生活と意識をもっとも重視した思想家であり、彼らのなかから数多くの書き手を発掘した。この意味で鶴見は、知識人と「人びと」を媒介する知識人であった。
[原田 達 2016年9月16日]
『『鶴見俊輔著作集』全5巻(1975~1976・筑摩書房)』▽『『鶴見俊輔集』全12巻(1991~1992・筑摩書房)』▽『『鶴見俊輔座談』全10巻(1996・晶文社)』▽『『鶴見俊輔集 続』全5巻(2000~2001・筑摩書房)』▽『L・オルソン著、黒川創・北沢恒彦・中尾ハジメ訳『アンビヴァレント・モダーンズ――江藤淳・竹内好・吉本隆明・鶴見俊輔』(1997・新宿書房)』▽『原田達著『鶴見俊輔と希望の社会学』(2001・世界思想社)』
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…さらに,マルクス主義の実践を青年期に特有の正義感や急進的理想主義のあらわれとみて,転向とは〈大人になること〉,すなわち成熟もしくは通俗化の結果であるとする見解もある。 このように転向は,さまざまな次元の問題をはらんでおり,研究する側の関心に応じた形で転向像が形成されているのが実情であるが,こうしたなかで,鶴見俊輔をはじめとする思想の科学研究会の編著《転向》は,転向をその契機に着目して〈権力の強制によっておこる思想の変化〉と定義することで,その概念の一般化を図り,共産主義者にとどまらず,戦時体制に協力した自由主義者や社会主義者,終戦時の軍人,戦後の学生運動の人々にいたる広範な事例に転向の概念を適用して検討を試みた。この結果,昭和の知識人たちの思想の変化の諸相が明らかにされるとともに,転向は思想史研究上の方法的概念にまで高められた。…
※「鶴見俊輔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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