久隔帖(読み)きゅうかくじょう

精選版 日本国語大辞典 「久隔帖」の意味・読み・例文・類語

きゅうかくじょうキウカクデフ【久隔帖】

  1. 伝教大師最澄自筆の手紙一通を一幅に仕立てたもの。手紙は、弘仁四年(八一三)一一月二五日に当時空海もとにいた弟子泰範(たいはん)宛に出されたものだが空海に示したと考えられている。「久隔帖」の名は、冒頭の「久隔清音」からとって名づけられたもの。国宝。伝教大師筆尺牘(せきとく)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「久隔帖」の意味・わかりやすい解説

久隔帖
きゅうかくじょう

書跡。伝教大師最澄(さいちょう)の手紙。国宝。奈良国立博物館蔵。書き出しの「久隔清音……」(久しく清音を隔て……)から最初の2字をとってこの名でよばれる。京都・高雄山寺(神護寺(じんごじ))の空海(くうかい)のもとで修行している最澄の弟子泰範(たいはん)にあてたもの。「弘仁(こうにん)四年(813)十一月二十五日」の年記により、最澄47歳の執筆と知る。文面は、空海より贈られた詩に唱和するにあたり、空海の詩のなかに不明な語句がみられるので、その大意を聞いて知らせてほしい、とある。また、「法華梵(ほっけぼん)本」(梵字法華経)を手に入れたので、持参のうえ御覧に入れたいと書き添えている。手紙の謹厳なる書きぶりからみて、空海の目に触れることを意識しながらしたためた一通であろう。平安前期の仏教界を指導した最澄と空海の2人が、親しい交友関係にあったことを物語る手紙である。端正にして自然なその筆致は、中国の書聖王羲之(おうぎし)の書に範を求めたものであり、三筆(さんぴつ)(空海・嵯峨(さが)天皇・橘逸勢(たちばなのはやなり))の書に並ぶ名筆である。

[久保木彰一]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「久隔帖」の解説

久隔帖
きゅうかくじょう

最澄(さいちょう)の書いた現存唯一の書簡。「久隔清音」の句で始まることからこの名がある。最澄が,高雄山寺(現,京都市神護寺)の空海のもとにいた門弟の泰範(たいはん)にあてたもので,813年(弘仁4)11月25日の日付がある。内容は,空海が40歳を賀してみずから作った詩が示されたことに対し,その中の「法身礼図」などの大意を問いただすとともに,最澄が和詩を贈るために必要な「釈理趣経」などの借覧を泰範を通じて空海に依頼したもの。その書は清浄にして純雅,気品が高く,王羲之(おうぎし)の「集字聖教序」を学んだことがうかがえ,宗祖にふさわしく澄徹(ちょうてつ)した美しさをもつ。奈良国立博物館保管。縦29.4cm,横55.2cm。国宝。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「久隔帖」の意味・わかりやすい解説

久隔帖
きゅうかくじょう

最澄が空海のもとにいた弟子の泰範にあてた自筆書状。泰範を通じて空海に返信をしたため,あわせてその著書の借覧を請うた行書の書簡。弘仁4 (813) 年 11月 25日の日付がある。紙本。冒頭に「久隔清音」とあることから久隔帖と呼ばれる。国宝。王羲之正行を学んでしかも清浄の気が漂う名跡。奈良国立博物館蔵。

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