九尾狐(読み)きゅうびのきつね(英語表記)jiǔ wěi hú

精選版 日本国語大辞典 「九尾狐」の意味・読み・例文・類語

きゅうび‐の‐きつねキウビ‥【九尾狐】

  1. 〘 名詞 〙 尾の九つある狐。中国および日本で、古くは、平和な世に出るめでたい獣としたが、後には、多くの年を経た妖狐とされた。金毛九尾の狐。
    1. [初出の実例]「祥瑞〈略〉九尾狐 神獣也。其形赤色、或曰白色、音如嬰児」(出典延喜式(927)二一)
    2. [その他の文献]〔宋書‐符瑞志〕

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改訂新版 世界大百科事典 「九尾狐」の意味・わかりやすい解説

九尾狐 (きゅうびこ)
jiǔ wěi hú

中国の伝説にみえる尻尾が九つに分かれた狐。天下が太平になると出現する祥瑞の一つとされた。《古本竹書紀年》に夏(か)の伯杼子が東征して〈狐の九尾なる〉を得たといい,《山海経》海外東経には青丘国にいる狐は九尾だとあるように,東方の霊獣と考えられたらしい。《白虎通》は,九尾は子孫がふえることを象徴するといい,また《呉越春秋》には,禹(う)は九尾狐を見て塗山氏の娘をめとったとあるように,祥瑞の観念の背後には,婚姻と子孫の多産などの生命力に関する信仰があったものと考えられる。後漢時代の画像石では,当時流行した女神,西王母(せいおうぼ)の図像の周囲にしばしば九尾狐が描かれ,また甘粛省武威出土の銘旌めいせい)では太陽の中に九尾狐が見える。後世,狐の妖性が強調された結果であろうか,宋・元の講談の中では,殷の紂王(ちゆうおう)の妖妃,妲己(だつき)は,〈九尾金毛の狐〉が化けたものだとされている。
玉藻前(たまものまえ
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