殷の紂(ちゆう)王の妃。生没年不詳。有蘇(ゆうそ)氏の出身。紂王は彼女を寵愛したために殷王朝を滅ぼしたとされる。紂王が〈婦人〉の言葉に聴き従って政治をあやまっているという非難はすでに《書経》に見え,《国語》には,夏の妹喜(ばつき),周の褒姒(ほうじ)とならんで,亡国の美人として妲己の名が見える。彼女の毒婦ぶりは後世,物語として発展するが,その代表が明の小説《封神演義》である。それによれば,有蘇氏の女(むすめ)にのりうつった九尾狐(きゆうびこ)が紂人の妃に入れられて寵愛を集め,彼女の言葉によって,紂王は炮烙(ほうらく)の刑などで善良な多くの臣下たちを殺す。やがて反乱を起こした周の武王が殷の都に攻めこんだ際,姜子牙(きようしが)によって妲己は斬首された。
執筆者:小南 一郎
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…後漢時代の画像石では,当時流行した女神,西王母(せいおうぼ)の図像の周囲にしばしば九尾狐が描かれ,また甘粛省武威出土の銘旌(めいせい)では太陽の中に九尾狐が見える。後世,狐の妖性が強調された結果であろうか,宋・元の講談の中では,殷の紂王(ちゆうおう)の妖妃,妲己(だつき)は,〈九尾金毛の狐〉が化けたものだとされている。玉藻前(たまものまえ)【小南 一郎】。…
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