中国で,王者の徳によって太平の世が実現されたことを知らせる,めでたいしるし。日月がいちだんと輝きを増したり,鼎(かなえ)の出現や鳳凰,騏驎(きりん),連理の木などの珍しい動植物の出現により示されると考えられた。年号にも祥瑞の出現にちなむものが多い。《白虎通》封禅篇や《論衡》是応篇などにさまざまの祥瑞が列挙され,正史にも《宋書》符瑞志や《南斉書》祥瑞志など,祥瑞について記述する篇が設けられることがある。祥瑞は王者の徳によってもたらされるだけでなく,皇帝となるべき天命がくだったしるしであるとも考えられて〈符命〉とよばれた。王莽(おうもう)の漢王朝奪にさきだち,井戸のなかから発見された白石に〈安漢公莽に告げて皇帝と為す〉と朱書されていたのが符命の最初であるという。以後,後漢の光武帝なども政権樹立の正統性を主張するために盛んに符命を利用し,〈図讖(としん)〉や〈讖記〉とよばれる予言記の流行に拍車をかけた。
→讖緯(しんい)説
執筆者:吉川 忠夫
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中国、景徳鎮窯(けいとくちんよう)で明(みん)代末期の崇禎(すうてい)年間(1628~1644)、日本からの注文によって焼造された異色な染付磁器。緻密(ちみつ)な白磁胎に鮮やかな青藍(せいらん)色の染付で文様を表した上質な焼物で、作品の底に「五良大甫呉祥瑞造(ごろうたいほごしょんずいぞう)」という染付銘があるところから、日本では一般に祥瑞と称している。遺品の多くは日本のわび茶の道具で占められ、水指、反鉢(そりばち)の大作から、茶碗(ちゃわん)、香合(こうごう)、茶器、茶巾(ちゃきん)筒などの茶具、徳利、酒呑(ぐいのみ)、台鉢、手鉢、輪花鉢、向付(むこうづけ)、皿などの懐石道具があるほか、まれに香炉、燭台(しょくだい)、書鎮などの文房具もある。
いずれも造形からみて明らかに日本の茶人のための特製品であり、形は注文に応じながら、絵付の文様はほとんどすべて中国原図に従って、中国意匠を盛っているところに、奇をねらう茶人の着想があったようである。この文様の一部に緑・赤などの上絵彩を施したものは色絵祥瑞ともいう。また銘文の「五良大甫呉祥瑞」とは呉家の家の五男の長子という意味であり、呉姓を名のる景徳鎮陶工の作であると推測される。兵庫県芦屋(あしや)市の滴翠(てきすい)美術館には、明最末期の作とされる崇禎8年(1635)銘の染付茶巾筒が蔵されている。
[矢部良明]
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