知恵蔵 「九州北部豪雨2017」の解説
九州北部豪雨2017
この豪雨は、対馬海峡付近に停滞した梅雨前線に向かい、大気下層に暖かく湿った空気が流入するとともに上空に寒気が流入して、不安定な大気状態が続く中で発生。積乱雲が次々と発生して帯状に連なる線状降水帯が形成されたことにより、同じ場所に強い雨が継続して降り、記録的な豪雨となった。7月5日から6日にかけて、最大24時間降水量が観測史上最も多かった地点が続出し、福岡県朝倉市朝倉で545.5ミリと記録を大幅に更新したほか、広島県北広島町王泊、島根県浜田市波佐、大分県日田市日田、佐賀県佐賀市川副などでも観測値が過去最高を記録した。
この豪雨により、各地で崖崩れや河川の氾濫(はんらん)が起き、多くの住宅や車が濁流に押し流された。福岡県朝倉市や同東峰村では、多くの住民が孤立した。大分県日田市の花月川に架かるJR久大線の鉄橋が流されたほか、高速道路も複数の場所で斜面が崩れた。消防庁災害対策本部によれば、この梅雨前線に伴う大雨と台風3号による被害は、広島・福岡・大分の3県で死者38人、行方不明者5人に上り、8県で28人が重軽傷を負った。また、住宅被害は、福岡・大分・熊本の3県で全壊276棟、4県で半壊1066棟となったほか、一部破損などの被害が島根・岐阜・新潟・埼玉など広範囲に出た(2017年8月21日現在)。
(原田英美 ライター/2017年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報